
家族として迎え入れて一緒に暮らしている人も多い「猫」。なかには、責任を持って最後まで飼うことを諦め、捨ててしまう不届き者もいます。大切な命を守るために、保護活動をする人たちも確かに存在し、そういった活動のおかげで捨てられた猫は温かい家庭に引き取られることもあるのです。
【漫画】ププと名づけてくれた少年が忘れられず…「ただそこにいただけで」全編を読む
漫画家の吉本ユータヌキさんが手がけた『まるねこププと』は、捨てられた子猫と1人の少年の出会いを描いた作品です。同作のはじまりとなるエピソード『ただそこにいただけで』が吉本さんのX(旧Twitter)に投稿されると、多くの人の心を掴んで1.4万もの「いいね」を獲得しています。
雨の日、ダンボールの中に捨てられていた子猫たち。通りすがりの親子にほとんどが引き取られるも、まんまるとした1匹の子猫だけ「この子はいいや」と拾われませんでした。その後、1人の少年が通りかかって子猫に気づくと、「きみもひとりぼっちなんだね」という言葉を残し、その場を去ってしまいます。
翌日、塀の穴から鼻と口を出す犬に「ひとりになっちゃったんだな」と声をかけられ、エサを分けてもらう子猫。また、先日の少年が再び子猫の前に現れ、「ププ」と書かれた名札をダンボールに貼りつけました。次の日なると、少年はププの似顔絵をプレゼントするのでした。しかし少年はププを家に連れて帰ることができないでいます。理由は少年の両親が離婚してしまい、とても猫を飼う余裕がなかったからです。そして、この日を境に少年はププのもとに来ることはありませんでした。
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そんなある日、ププに転機が訪れます。ある女の子が段ボールの中で過ごすププを見て「うちくる?」と声をかけてくれたのです。女の子の家族は皆優しく、ププに温かい家や新しい名前を与えてくれました。しかし「ひとりではなくなった」ププは「きみもひとりぼっちなんだね」と語りかけてくれた少年のことが忘れられず、咄嗟に女の子の家を飛び出します。
少年とププの出会いとなるエピソードに、読者からは「涙が止まらない…」「素晴らしい話」など感動の声が。そこで作者である吉本さんに、同作を描いたきっかけについて話を伺いました。
―『まるねこププと』を描いたきっかけを教えてください。
15年ほど前、公園で野良猫を拾い飼ったことがあるんです。公園で目から血を流してボロボロになっていて、その時持っていたお菓子を出してみたらすごく喜んで食べて、当時住んでいたマンションの下まで付いてきたんです。最初はマンションの裏に段ボールを置いて、その中にエサを入れてあげたりしてたんですけど(今はよくないとわかるんですが、当時知らなくて)、大雨が降った日に妻(当時彼女)が家で保護して、それを機に飼うことにしました。
飼ってすぐ病院に行ってみると、病気を患っていて余命半年と言われてしまい、僕も妻も覚悟しながら飼っていました。でも少しずつ回復していき、結果的に7年半も生きてくれました。
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その子と過ごした7年半を今思い返すと、家の中で一緒にゴロゴロして、一緒にご飯食べて寝て、それだけだったのにすごく思い出深くて。一緒に過ごしてくれた7年半に感謝しかないと思い、この漫画を描いてみました。
―Xに投稿された『ただそこにいただけで』を描いたうえで、特に注目してほしいポイントがあれば、ぜひ教えてください。
言葉少なく描いたところです。実際、動物と人間は話せないけど、気持ちを交わすことはできると思っています。だからこそ、もう一度男の子に会いたいって気持ちはププの中にもあるだろうと、そうあって欲しいという願望でしかないんですけど。なので、ププと少年の気持ちをいろいろ想像しながら読んでもらえたらと思います。
―個人的に「ププ」の愛くるしい見た目がお気に入りなのですが、どうのような経緯でププというキャラクターが誕生したのでしょうか?
昔から丸っこいキャラクターを描くのが好きで、以前何の気なしに落書きしてる時に生まれたのがププでした。当時は名前もなく、漫画にするつもりもなかったんですけど、昔飼っていた猫っぽい色味にしたことで、愛着が湧いたんです。後に猫の漫画を描きたいと思い、それなら「あの子の物語にしよう」ということで、ププが動き出すことになりました。
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―読者にメッセージをお願いします。
この記事を読んでププに出会ってくれて、ありがとうございます!『ただそこにいただけで』は少し心がきゅっとなる話ですが、その後のププの日常はすごくやんわりとした空気の漫画なので、日々の生活の疲れが溜まったときにでも、ププを読んでもらえると嬉しいです。
(海川 まこと/漫画収集家)