知らない人だけが損をする「コスパが悪すぎる服」に共通している特徴

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2025年03月12日 13:00  日刊SPA!

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―[メンズファッションバイヤーMB]―
 メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第522回をよろしくお願いします。

◆「コスパのいい服/コスパの悪い服」の違いはなに?

 突然ですが、服って高いと思いませんか……?

「布と糸でなんでこんな値段になるんだよ」
「どうせタダみたいな金額で作って暴利で売ってるんだろ」
「コスパ考えたらユニクロが一番でしょ」

 皆さん、いろいろ思うところあるでしょうが、実は服って高いのが当たり前です。

 生地の原料である「綿花」は確かにたかが知れてる値段かもしれませんが、そこから糸に紡績し、糸から生地を作り、生地を加工し、加工した生地を縫製し、さらにはデザインする人、パターンを作る人、さらに販売する人、物流や輸出入のシッピングコストなどなど。あらゆる人や会社が関わっているため「人件費」によって大きく値段がかかってくるのです。

 服作りの現場を知るとあらゆる人が関わってる総合芸術なのでどうしても安くしにくいとわかります。布と糸は安くても人の労働力は安くできないのです。

 しかし! それでも消費者としては「なるべくコスパがいい服を知りたい!」「コスパが悪い服や不当に利益が乗ってる服は買いたくない!」とも思うでしょう。

 そこで、今回は「コスパの悪い服」をお教えしましょう。もちろん原価やコスパがすべてではありませんが、原価も気になる一つの要素のはず。頭の中に入れておいてください。

◆★ZOZOなどECモールで販売されている服

 前置きをしておきますがZOZOがダメだと言ってるわけではありません。ZOZOの中でもいい服はたくさんあるし、ZOZOでしか手に入らない良品も多数あります。しかしながら原価という意味で言えばZOZOは不利と言えば不利なのです。

 仕組みは簡単、ZOZOに出店しているブランドは手数料として売上の35%を支払う必要があるからです。つまりホントは我々は同じ商品を35%引きで買える……ってことですよね?

 なぜならZOZOに35%のフィーを払っても出店ブランド側は利益が出ている構造なわけですから(広告宣伝目的で利益度外視してでもZOZOで展開しておく必要があるブランドもありますのでこの限りではありませんが)、仮にブランド直売の形であれば35%安く提供できるという理屈になります。

 実際、D2C(ブランドが直接ユーザーに販売する仕組み)形式で展開しているブランドはこうしたECモールを介したブランドと比べると原価が優れており、格安に感じます。ZOZOなど中間に入る小売業やモールビジネスがあると当然、その分の利益が上乗せされるため原価的には不利になります。

◆規模や影響力に優れたECがフィーをとるのは当然

「じゃあ、ブランドの公式オンラインサイトなら35%引きの値段で売られてるってこと?」

 そう思うかも知れませんが、残念ながら違います。日本は定価の観念が非常に強く「どこでも同じ値段で売られていること」がビジネスの絶対条件。また、当然のことながらブランド公式サイトで35%引きで売ってたらZOZO側からクレームくるでしょう。

 こうした販売チャネル毎に価格を変えるということは一般的ではありません。なのでブランド公式で買うと、ブランド側からすれば大きな利ざやが出るのでラッキーというくらいですね。

 もちろん「だからZOZOで買うべきではない」という話ではありません。知名度がない 弱小ブランドなどは35%を広告費だと考えてZOZOに進出する例も少なくありません。いきなりブランドのサイトを立ち上げても誰も来ませんからね。規模や影響力に優れたZOZOが35%のフィーをとるのは至極当然のこと。ただし、”原価厨”な人は気になるかもしれませんね。

◆★セレクトショップで売られている商品

 これもZOZOとまったく同じことです。セレクトショップとは複数のブランドを仕入れて販売する形式のことですが、当然ブランド直売ではないのでセレクトショップである小売側の利益を確保する必要があります。

 実はほとんどの日本ブランドがセレクトショップ側の利益を40%に設定しています(なので上述のZOZOは実は良心的でさえあるのですが)。つまりセレクトショップがもしこの世に存在しなかったら、服の値段はまったく同じものでも40%OFFで購入可能という理屈になります。

 オンラインストアがない時代、ブランドが地方のお客さんにアプローチする仕組みがセレクトショップでした。東京のブランドが地方進出するにあたってはかなりのリスクが課せられていました。

 知らない土地でどこに出店していいのかもわからない、その地域の消費傾向もわからない、そんな中で多大なコストをかけて店舗を作るなんて怖くて仕方ない……。そこで地元で人気のあるセレクトショップに商品を卸すことが有効だったのですね。

◆地方ではセレクトショップが淘汰されている

 しかし、今はオンラインが存在しており、世界中どこのお客さんにでもアプローチできます。セレクトショップに卸す必要がなくなり、その結果、D2C形式/ブランド直売することで価格競争力を上げたスタンドアローンなブランドが近年は出てきたのです。

 もちろんセレクトショップも世界観作りや提案力などで人気を博しているお店も多く、そうしたお店には40%の利益乗せがあったとしてもお客さんは誰も気にしないでしょう。

 しかしながら、お客さんが嫌がるようなウザい接客をしてきたり、金魚のフンみたいに後ろからついてまわるような販売員しかいないセレクトショップは「無駄な利益を貪る」だけの存在になりかねません。

 まさに現在、地方ではセレクトショップが淘汰されている事態となっているのです。原価のことだけを考えたらブランドオフィシャルだけあればいいわけですから。

◆★インフルエンサーブランド

 一見、よさそうなインフルエンサーブランドですが、原価に優れたところとそうでないところで二極化しています。原価に優れたところは自社でコントロールしてブランドを運営しているところ。実はこうした取り組みを行なってるインフルエンサーは案外少ないのです。

 自社でブランドを運営するためにはそれなりのノウハウが必要で、またアパレル業界に相当詳しい必要もあります。どこの生地を使ってどこで縫製してどんなふうに物流に乗せて……など普通はわかりませんからね。

 しかしながら、多くのインフルエンサーはアパレル出身ではなく、素人です。素人だからこそ「商品レビュー」などお客さん目線のコンテンツ配信が出来るわけですが製造にあたってはこれがデメリットになります。

◆超有名インフルエンサーも「本人フィーは1%」

 インフルエンサー自身でブランド運営できるほどの業界知見はないので、多くがバックに違うブランドが隠れているのです。インフルエンサーは宣伝をするだけで製造もデザインもすべて別のブランドが請け負っている。

 ひどい場合だとブランドどころか通販サイトの運営やコンテンツもすべて他社が請け負っていて、インフルエンサーはモデル写真を撮影するだけ。それだけで売上の%フィーが発生するようになっていたりします。

 こうなってくるとまったくお得ではありません。なにしろそれって「インフルエンサーがいなくても成り立つ」のですから。本末転倒著しいです。これ意外にも多く存在していて、「あ、あのインフルエンサーブランドってあそこのブランドがやってたのね」なんて話はたまに聞きます。

 アパレル出身のインフルエンサーだとこんな無駄なことはしないでしょうが、そうでないと「普通はこういう仕組みなのかな」と本人も騙されているケースも。超有名なインフルエンサーで売上も莫大なビジネスなのに「本人のフィーは1%だけ」なんて恐ろしいケースも耳にしたことがあります……。大人は怖い……。

◆★ラグジュアリーブランド、インポートブランド

 これは既知のことでしょうが、ラグジュアリーブランドは「ブランディング」に多額のコストを払います。世界観作りのため店舗内外装はもちろん、ショッピングバッグから制服、VIPを招いたパーティやパリミラノのランウェイショー開催など。

 東京コレクションであっても1ブランドあたりおよそ数千万程度のコストがかかるのでランウェイショーなどは華やかに見えますが、そのコストは当然消費者が払っているわけです。原価として考えるとかなり不利です。

 しかしながら、もちろんこれらは無駄ではありません。世界観が明確だからこそ満足度も高くファンも生まれる。ビジネスとして成り立っている以上悪いことはまったくありません。

◆現地で買うと日本価格の30%OFF程度で手に入る

 ただし、原価ということにこだわる、コスパということにこだわる人からすると気にはなるでしょうね。

 また、インポートブランドは内外価格差があります。たとえば、ヨーロッパのブランドなど現地で買うと日本価格の30%OFF程度で手に入ることも多いです。タックスリファウンド(免税制度)を使えば、さらに安く手に入れられるでしょう。

 これはシッピングフィーだったり、日本代理店の利益が入っていたり、また戦略的に展開国によって価格設定を変えていたりとさまざまな要因がありますが……いずれにしても原価という意味で捉えると現地ではない国で買う分割高になっているのは否めません。

 以上、今回は「原価」に着目してお届けしました。原価厨の方はぜひ頭に入れておいてください。

―[メンズファッションバイヤーMB]―

【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Xアカウント:@MBKnowerMag)

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