【MLB】佐々木朗希は1年間フルで戦えるか? 五十嵐亮太が考察するドジャースの「起用プラン」

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2025年03月15日 07:20  webスポルティーバ

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五十嵐亮太が語るMLB開幕戦の見どころ(後編)

前編:「投手・大谷翔平はどう進化しているのか?」はこちら>>

 3月18日に開催するドジャース対カブスのMLB開幕戦。前編に続き、後編ではドジャースの山本由伸、佐々木朗希、カブスの今永昇太、鈴木誠也の現状と今季への期待について、五十嵐亮太氏に語ってもらった。

【不安要素はすでにクリア】

── 前編では大谷翔平選手について伺いましたが、後編ではドジャース、そしてカブスの日本人選手について伺います。開幕戦はドジャース・山本由伸、カブス・今永昇太両投手が先発、翌日の第2戦はドジャース・佐々木朗希投手の先発も決定しています。まずは山本投手について、お聞かせください。

五十嵐 山本はね、本当に順調にきていると思いますよ。本人のなかでも、「何か大きなことを変えよう」というよりは、すでにベースがしっかりしているので、「そのベースの中でどう微調整しようか」という感じですね。具体的には「ちょっとスプリットの落ちが悪いかな」とか、「思ったところにコントロールができていないな」とか、「ちょっと開きが早かったよね」とか、本当に細かいところを微調整している感じ。もう修正する部分がほぼほぼない状態。すでに仕上がっている。そんな印象を受けましたね。

── 去年の結果を踏まえた2年目の変化とか、意識的に変えたこととか、あまり見受けられなかったですか?

五十嵐 渡米1年目の昨年はいろいろ試行錯誤していたけど、シーズン最終盤のワールドシリーズでもいいピッチングをしているので、その点の不安はもうないはず。ボールやマウンドにも慣れて、キャンプ地であるアリゾナの乾燥具合も把握していました。そのあたりも理解している分、思いどおりの調整ができていました。あとはキャッチャーとのコミュニケーションをしっかり取りながら配球を考えていく。すでにそのレベルに達していますよ。

── やっぱり去年と比べると、不安要素がかなりクリアされている。

五十嵐 その点は完全にクリアしていますね。彼の場合、最大の懸念事項はケガだけですよね。身体への負担を減らしながら、しっかりとリカバリーしていくこと。去年、シーズン途中に離脱しているだけに、コンディションについては細心の注意が必要になりますね。

【体力面の懸念とドジャースの起用方針】

── 一方の佐々木朗希投手はどんな状態でしたか?

五十嵐 佐々木朗希に関しては、日程の都合もあって、実際に試合で投げているところは見られなかったんです。ただ、現地の報道陣に聞くと、「なかなかスピードが上がってこなかった」という話もありました。だから、「もしかしたら、どこかが痛いんじゃないか?」というウワサも流れていましたね。

── 「ピッチングフォームの見直しをしている」という報道もありました。

五十嵐 本人、そしてピッチングコーチとも話をしたけど、やはりピッチングフォームの見直しをしていました。解析の結果、「スピードボールを投げる上でロスがある」ということで、下半身と上半身の連動とか、タイミングの取り方とかを意識していました。ドジャースのキャンプ地には、ブルペンのほかに『ラボ』と呼ばれる動作解析の研究所があるんですけど、佐々木はそこで投げていたこともありました。そこで自分のフォームを見直したり、コーチやアナリストの指摘を受けて、フォームの修正をしていたようです。

── 開幕2戦目の先発が決まったということは、フォーム修正がうまくいったと考えていいということでしょうか?

五十嵐 キャッチボールの段階ではまだボールのばらつきはありましたね。だけど、しっかり投げているときはものすごいボールでしたし、落差のあるフォークボールも投げていました。それを見ていて、「これくらい投げられていれば大丈夫なのかな」とは思いましたね。そして、オープン戦前にブルペンに入ったときに周りの評価が一気に上がった。さらに、オープン戦初戦でいきなりで98マイル、99マイルを投げていた。ドジャースが提案した佐々木に対してのアプローチがすごくよかったんでしょうね。

── オープン戦での登板を見て、佐々木投手について気になった点はありますか?

五十嵐 配球パターンが気になりましたね。去年まではスライダーとフォークの割合がほぼ同じだったんです。でも、オープン戦の初登板では、ほぼストレートとフォークだけでした。まだまだここから調整していくのかもしれないけど、今年は「ストレートとフォークを基本線に抑えていく」というスタンスになるのかなと思いますね。ノーヒット・ノーランを達成した頃の基本スタンスでいって、それで相手に何か対応されたら、どこかのタイミングでスライダーも織り交ぜていく。そんなスタンスで、まずはやっていくのだと思いますね。

── 日本では十分な登板間隔を空けてマウンドに上がっていました。体力面の不安が喧伝されていますが、ドジャースではどのような起用となりそうでしょうか?

五十嵐 ドジャース側も「どこまでいけるのか」とか、「だいたい何イニングぐらいだね」っていうのは想定していると思うんですよね。当然、「状態を見ながら」の起用となるでしょう。ただ、最初のオープン戦で98マイル、99マイルを平均で投げてきたとなると、やっぱり身体へのストレスっていうのもなくはないと思うんです。とはいえ、1月の下旬に契約をしたばかりなのに、3月の開幕2戦目の先発を決めたということは、彼のコンディションよりも、「日本のファンのために」ということをドジャースは優先したんだと思うんです。

── そうなると、ドジャースとしては、もちろん細心の注意は払うけれど、多少無理させることも辞さないというスタンスなんですかね?

五十嵐 開幕2戦目の先発をいつ告げられたのかはわからないけど、そこまで甘やかすというのか、特別待遇をするという感じじゃないのかもしれないですね。球団としては「ある程度しっかりやってもらいますよ。そのうえでしっかり調整してくださいね」という感じなのかな......。疲れが溜まったら、ある程度の間隔は空けるけど、ロッテの頃のような感じにはならないのかもしれないですね。

【今永昇太の最大の武器は敏感力】

── 一方、カブスの今永昇太投手はいかがでしょうか?

五十嵐 去年の今永は、高めのフォーシームがすごくよかったし、低めのチェンジアップ、落ちる球の組み合わせがバツグンによかった。でも、本人に話を聞いてみると、「去年はそれでうまくいったけれども、オープン戦で投げた時に、ストレートに対する相手打者の反応が変わっていた」って言うんです。で、「去年と同じような配球だったらもう通用しないと思います。変えなきゃいけない」ってハッキリ言っていたんです。彼の武器は相手打者の狙いや雰囲気をきちんと察知できる「敏感さ」なんだなと改めて感じました。

── 決して、現状維持で満足せずに、さらなるアップデートを図ろうとしているんですね。

五十嵐 だから、投げるボールは大きくは変わらないけれども、新たなピッチングスタイルを模索しているんでしょうね。去年はスライダーの割合がそんなに多くなかったけど、たぶん今年はスライダーの割合は多くなるはず。ストレートを生かすために、他の球種を使って、どうやって見せていくかというところが大事になっていくでしょうね。だから、去年と同じようなピッチングにはならないし、去年とは違う新しい今永が見られると思います。

── カブス・鈴木誠也選手の印象はいかがでしたか?

五十嵐 本人としてはDHではなく、きちんと守備にもついて、「守りながら打ちたい」と考えていると思うんです。でも、カイル・タッカーが加入したことで、鈴木はDHで起用される可能性が高いと思いますね。レッドソックスの吉田正尚もそうだけど、DHとなるとやっぱり長打が求められますよね。その影響もあるのか、今年はスイングの軌道をちょっと変えるという、去年とは違うアプローチをやっていましたね。本人は「状態、意識はよくなってきている」と言っていたので、「今年は長打が増えるのかな」という気がします。開幕カードでは彼のスイング、打球に注目したいですね。

── 駆け足で日本人選手について振り返りましたが、本番も近づき、ますます楽しみになってきましたね。

五十嵐 メジャーリーグの開幕戦を日本で見ることができるのは本当に幸せだし、本当にすごいこと。僕も解説させてもらうけど、日本にいながらにしてアメリカを感じることができるこの機会を心から楽しみたいと思います。


五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道生まれ。千葉・敬愛学園から97年ドラフト2位でヤクルトに入団。プロ2年目の99年にリリーフとして頭角を現し、一軍に定着。04年はクローザーとして37セーブを挙げ、最優秀救援投手賞のタイトルを獲得。09年オフにメジャー挑戦を表明し、メッツと契約。12年はブルージェイズ、ヤンキースでプレーし、13年にソフトバンクと契約し日本球界復帰。18年オフに戦力外となるも、ヤクルトと契約。19年は45試合に登板したが、20年10月に現役引退を表明。現在は解説者として活躍している。

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  • 佐々木?メジャーに行きたいから日本でサボってただけでしょ。中4日でバンバン投げさせても大丈夫だろ。故障したらそれまでの選手
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