【プレミアリーグ】三笘薫のマンチェスター・シティ戦 アタッカーとして存在感を発揮した3シーン

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2025年03月16日 11:21  webスポルティーバ

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 プレミアリーグ第29節、マンチェスター・シティ対ブライトン。5位対6位の対戦である。両者の勝ち点差はわずかに1。47対46と競った関係にある。チャンピオンズリーグ(CL)出場圏内である4位チェルシーの勝ち点は49。ブライトンにとっては1ゲーム差だ。しかし、後続も僅差で迫る。残り10試合はクラブ史上初となるCL出場権を懸けた戦いとなる。

 それはブライトンの左ウイング三笘薫にとっても同様だ。CLに出場してなんぼ。それが一流か否かの境界線と言っても過言ではない。

 昨季(2023−24シーズン)はCLの舞台に立ちながら、今季はヨーロッパリーグ(EL)での戦いを余儀なくされたレアル・ソシエダの右ウイングは、いまごろそのことを痛切に感じているに違いない。

 その久保建英も2日前、ELでマンチェスターを訪れている。マンチェスター・シティのホーム、シティ・グラウンドとは市街地を挟んで反対側に位置するオールド・トラッフォードで、決勝トーナメント1回戦を戦った。結果は合計スコア2−5で敗退した。

 だが久保は、2戦を通してマンチェスター・ユナイテッドを少なからず慌てさせた。ドリブルで見せ場を作り、対峙するサイドバック相手に勝負を挑む姿は、ブライトンの左ウイングより旺盛に映った。

 三笘は直近の10試合ほど、対峙するSBをきれいに抜ききることができていない。当初は勝負に出たものの抜けずに終わっていたのだが、そのうち勝負そのものを避けるようになった。ドリブルでトライしなくなっていった。レアル・ソシエダの右ウイングとは対照的な絵を描き始めた。サッカー少年のようなイケイケ感を残す久保に対して、賢明にも大人のプレーを演じている。よく言えばそうなる。

 ポジショニングも気がつけば内寄りになった。と同時に、ゴールが立て続けに生まれた。チェルシー戦では今季のベストゴール候補にも挙げられそうなスーパーゴールを決めている。アタッカーとしての評価を高めることになった。ウインガーとしての問題はその影に隠れる格好になった。

【いきなり見せたウイングプレー】

 だが、得点はそう簡単に決まるものではない。センターフォワードでさえ2試合に1点決めれば超一流だ。ウインガーがカップ戦を含めて3試合連続ゴールを奪うことは奇跡に近かった。

 案の定、その後、得点なしはカップ戦を含めると3試合続く。となれば必然的に、ウインガーとしての出来映えに注目は移る。欧州の採点サイトを眺めれば、前戦フラム戦の三笘の評価は前線4人のなかだけでなく、先発した11人のなかで最も悪かった。ゴールを挙げられないだけでなく、ウインガーとしても見せ場を作れず、貢献度は低いと判断されたようだ。

 ところが三笘はマンチェスター・シティ戦の開始3分、いきなり見せ場を作る。左SBアダム・ウェブスター(元U-19イングランド代表)のパスを、ハーフウェイを10メートルほど過ぎた左のライン際で受けた三笘は、迷いなく勝負を挑んだ。間髪入れず、対峙する相手の右SBリコ・ルイス(イングランド代表)に対し、大外のレーンを使いスピード勝負に出た。

 2タッチ目で後ろ足となる右足の内側でボールを10メートルほど押し、動き出しのタイミングが送れたリコ・ルイスに走り勝つ。3タッチ目でさらに前進し、相手の右CBアブドゥコディル・フサノフ(ウズベキスタン代表)がカバーに入る直前、自身の4タッチ目をマイナスの折り返しとした。ゴール前に飛び込んだジョアン・ペドロ(ブラジル代表)にはわずかに合わず、惜しくゴールはならなかったが、目の覚めるようなウイングプレーであることに間違いはなかった。

 ここ10試合、対峙するマーカーを縦に抜けなかった大きな理由として挙げられるのが、相手の逆を取る動きだ。前後にズラすことができない。ボールを運ぶ後ろ足(右足)の操作も暴れがちで、腰高な印象も抱かせた。

 一方、この前半3分のシーンで一番の武器になっていたのはスピードだ。加速力でリコ・ルイスの追随を許さなかった。これは久保にはない魅力だ。三笘のほうがアスリート性は高い。ピッチの真ん中をぶっちぎるようにゴールを奪ったチェルシー戦、サウサンプトン戦のような"ゴールに迫る勢い"では三笘は勝る。

【的確なハーフボレーの一撃も】

 この日、最も惜しかったシーンは、その3分後に訪れた。右SBジャック・ヒンシェルウッド(U−19イングランド代表)のアーリークロスがファーサイドから走り込んだ三笘の前に到達する。マーカーのリコ・ルイスと交錯しながら押し込んだ三笘のシュートをGKシュテファン・オルテガ(ドイツ代表)が両手で押さえたのか、ファンブルしたのか。その微妙な瞬間を三笘は再び突き、身体ごと執念でゴールに押し込んだ。

 今度は三笘のゴール前に突っ込むアタッカーとしての魅力が発揮された瞬間だった。ところが主審はVARとの協議の結果、わりとあっさりノーゴールの判定を下す。三笘は肩をすくめ両手を広げるに留めたが、「もっと抗議してもいいんじゃないか?」と言いたくなる微妙なジャッジだった。

 2番目に惜しかったシーンは後半18分、カルロス・バレバ(カメルーン代表)の対角線クロスに左足を振り抜いた瞬間だ。巻くように送られてきた浮き球に対しファーサイドから走り込んだ三笘は、ハーフボレーでパチンと的確にそのインサイドで合わせると、ボールは弾かれるようにニアポスト方向へ向かった。GKオルテガが身を挺してこれを防いだが、これもアタッカーとしての存在感を高める一撃だった。

 ただし、ウインガーとしての魅力は開始3分に披露した縦突破1回に終わった。相手の右ウイング、サビーニョにプレスバックを仕掛けるなど、守備への貢献はあったものの、ドリブル&フェイントで見せ場を作る機会はなかった。採点するならば6.5か。

 試合は2−2。内容的にも拮抗した互角の好勝負だった。そうしたなかでマンオブザマッチ級の働きをしたのが、マンチェスター・シティのジェレミー・ドク。ベルギー代表の左ウイングである。三笘とは最も離れた対角の関係にある選手だが、同じ左ウイングとしてつい比較したくなった。

 ブライトンの右SBヒンシェルウッドや右CBヤンポール・ファン・ヘッケ(オランダ代表)相手に、これでもかというほど1対1を仕掛け、高い勝率を収めた。得点を決めることはできなかったが、それでも8.5は出したくなる出色の出来映えだった。

 ウイングが相手守備陣をズタズタに切り裂く姿は、スタンドに近い場所で起きるプレーなので観衆を沸かせる。スタジアムのムードはこれにより煽られる。三笘が目指すべきスタイルが、いま時流にあるウイング兼ストライカーだとすれば、バランス的に見たときウイングプレーに不満が残る。点が取れない日はウイングプレーで魅せる??となれば超一流だ。

 この日の結果、マンチェスター・シティ、ブライトンともに勝ち点1を積み上げたが、勝ち点44で9位だったニューカッスルがウエストハムに勝利し、勝ち点を47に伸ばし、ブライトンは同勝ち点ながら7位に後退した。残り9試合でどこまで順位を上げることができるか。見ものである。

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