
センバツ大会注目選手〜野手編
3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会(センバツ)。今春で低反発バットが導入されて2年目を迎える。高校野球界に漂う「投高打低」ムードを覆す可能性を秘めた、10人の有望野手をピックアップした。
赤埴幸輝(天理3年/遊撃手/181センチ・71キロ/右投左打)
ドラフト上位候補になり得る遊撃手。細身ながら強さとしなやかさが共存した身のこなしで、遠目にもシルエットが際立つ。高い運動能力に任せるのではなく、基本に忠実に丁寧なゴロさばきができるのも魅力。力感なく、メリハリの利いた足運びや、目線をぶらさずに送球できる点も遊撃手としてポイントが高い。打撃面も非力に見えて、自分の間合いに呼び込んで強くコンタクトできる。昨秋は公式戦8試合で打率.484をマーク。フィジカル強化と比例して、打撃力も伸びるタイプだろう。ひと冬越えた今春、スカウト陣の目を惹くプレーができればドラフト1位候補に浮上する可能性すらある。
阿部葉太(横浜3年/中堅手/179センチ・84キロ/右投左打)
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現時点で「侍ジャパンU−18代表入りは堅い」と断言できる外野手。中堅からの低い軌道で伸びてくるスローイングは圧巻で、シートノックから目が離せない。すでに大学生のような筋肉質の体躯を誇り、ロスの少ない打撃フォームから力強い打球を放つ。盗塁可能な足も兼ね備え、同校の外野手では淺間大基(日本ハム)以来のアスリート型の逸材だ。2年生の5月から先輩を差し置いて主将に就任したというリーダーシップ、勝負どころで実力を発揮できる役者ぶりも大きな武器。昨秋の明治神宮大会で優勝を飾ったチームを今春もリードオフマンとして牽引する。
蝦名翔人(青森山田3年/二塁手/183センチ・84キロ/右投右打)
大器のムードが充満する大型内野手。青森山田シニアに在籍した中学時代は侍ジャパンU−15代表に選出。青森山田では2年夏の甲子園でチームはベスト4と躍進したものの、蝦名は打率.200止まり。ただ、バットに乗せて運ぶスイングで左翼フェンス直撃打を放つなど、印象深い活躍も見せた。内野守備は柔らかいタッチのグラブさばきが光り、2年春までは遊撃でプレーしている。現時点で高校通算8本塁打と、持っている潜在能力からすると物足りない。チーム内には強打のリードオフマン・佐藤洸史郎ら甲子園経験者も多く、上位進出も狙える陣容。きっかけをつかみ、聖地の主役に躍り出たい。
山田希翔(智辯和歌山3年/遊撃手/183センチ・75キロ/右投右打)
そろそろ脱皮に期待したい大型遊撃手。チーム内には俊足強打の藤田一波らタレントがひしめくが、将来性ならこの選手が白眉だろう。スラリと伸びたユニフォーム姿からは、攻守にただ者ではないムードが漂う。とくに遊撃守備は身のこなしが柔らかく、伸びしろも十分にある。昨秋は公式戦5試合で3失策と安定感を欠いただけに、センバツでは精度の高い守備でチームを引き締めたいところ。一方で今冬にフィジカル強化に励み、体重が大幅に増加。プレーに力強さが加わってくるのか、要注目だ。
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川邉謙信(市和歌山3年/捕手/175センチ・82キロ/右投右打)
紀州の強肩捕手。遠投105メートルのスローイングは地肩に頼るのではなく、低い捕球姿勢から下半身を使って投げる合理性がある。二塁に向かって低く、伸びていく軌道はプロを意識できるレベルだ。低めの変化球に対して、ミットを落とすことなく捕球できるさりげない技術も。昨秋は守備面の負担を軽減するため打順は6番だったが、ツボにはまればサク越えの爆発力も秘める。肩の力が抜ければ、甲子園での大爆発も期待できそう。同校では松川虎生(ロッテ)以来のドラフト指名を狙える捕手だ。
小堀弘晴(健大高崎3年/捕手/177センチ・81キロ/右投右打)
攻守にハイレベルな司令塔。ドラフト候補だった箱山遥人(トヨタ自動車入社)の後釜として、プレッシャーがかかる昨秋には石垣元気、下重賢慎らタイプの異なる投手陣をリードして関東大会準優勝に導いた。弓を引くような弾力性のあるアクションから、低く鋭いスローイングを放つ。打撃も力強くコンタクトでき、昨秋は公式戦9試合で15安打、打率.484を記録している。まだ大舞台での経験が少ないだけに、勝負どころでの配球など細かな部分でレベルアップしてセンバツ連覇に近づきたい。
小林拓斗(敦賀気比3年/捕手/165センチ・86キロ/右投右打)
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もっと注目されていい強肩強打の扇の要。身長165センチと上背はないものの、攻守に抜群の存在感がある。フットワークを巧みに使い、全身を連動させたスローイングは二塁に向かって伸びていく。ホームベース付近に転がったバントへのチャージも素早い。下級生主体の投手陣を引っ張り、北信越大会優勝へと導いた。インパクトで力を込められる打撃も魅力で、昨秋の明治神宮大会では左翼スタンドへと放り込んだ。甲子園でも結果を残し続けることで、「小兵の星」になれるはずだ。
見村昊成(東洋大姫路3年/右翼手/176センチ・81キロ/右投左打)
飛び抜けた一芸があるわけではないが、走攻守に高水準の実力派外野手。昨秋は3番・右翼として公式戦15試合で12打点をマーク。投球のラインにバットを入れ、球足の速いライナーを放つ。50メートル走6秒1の俊足も、抜け目のない走塁に活用する。中堅の伏見翔一(2年)も守備範囲が広く、右中間に打球が落ちるイメージがわかないほどだ。昨秋の明治神宮大会では打率.083に沈んだだけに、センバツでは真価が問われる。もう一段上の力強さを手に入れ、「いい選手」から「怖い選手」へと脱皮できるか。
古城大翔(花巻東2年/三塁手/180センチ・94キロ/右投右打)
将来が楽しみな右の大砲候補。父・茂幸さん(元・巨人ほか)はプロの世界でバイプレーヤーとして活躍したが、その息子は高校入学直後から4番打者を張るスラッガータイプ。低い重心でどっしりと呼び込み、ファーストストライクから積極的に打ちにいく好戦的なスタイルだ。昨夏の甲子園には4番・三塁で出場し、2安打を放っている。厚みのある体躯ながら、プレーに柔らかさがあり、鈍重さはない。花巻東は低反発バット導入後も力強いスイングで長打を狙う、意欲的なチームをつくり上げている。残り2年間の高校生活で、どれほどのスケール感を養成できるか。
菰田陽生(山梨学院2年/投手/194センチ・97キロ/右投右打)
ヴェールに包まれた超大型スラッガー。身長194センチ、体重97キロと見るからに"怪童"のムードが漂う。投手としても最速146キロを計測する有望株だが、昨秋の関東大会で目を見張ったのはその打撃力。打席での構え姿にオーラがあり、インパクトに爆発力がある。4打席立たせたら、どれだけの豪打を見せてくれるのかと夢想してしまう。投手としてマウンドに立った際の二塁牽制の素早いターンを見る限り、身のこなしも悪くない。兄・朝陽(上武大)は拓大紅陵時代に50メートル走5秒台の快足を武器にドラフト候補になったが、弟はまったく毛色が異なるタイプ。これから本格的な歴史が始まる、末恐ろしい怪素材だ。