写真「私は息子のためならなんだってしてあげたいのに、夫にはその気持ちがない。それでも親なのかと苛立ちが募る日々です」
そう話す近藤まゆさん(仮名・37歳)は、結婚10年目。発達障害を持つ息子の支え方に悩み、夫に相談したものの、親心が感じられない返答をされ、唖然としてしまいました。
◆発達障害の息子が癇癪を起こして家出してしまった
息子のタクヤくん(仮名・8歳)は、発達障害の一種であるADHD。確定診断に至ったのは、小学校に入学した頃のことでした。
タクヤくんはADHDの特性である「衝動性」が顕著で、学校で友人と喧嘩になってしまうことが多く、自宅では頻繁に癇癪(かんしゃく)を起こします。
「たしかに大変だと感じるときはありますが、あの子が悪いわけじゃない。私にとっては、かけがえのない息子です」
タクヤくんは癇癪を起こすと部屋のあるものを見境なく投げたり、大声を出したりするそう。そのたびにまゆさんは、専門書を参考にしながら対処してきました。しかし、ある日、ヒヤっとした出来事が……。
「息子が帰宅する時間には家にいられるように調節してパートをしていましたが、一度、帰宅が遅れたとき、息子は癇癪を起こして家から出ていったようで、お友達の家で泣き叫んでいました」
お友達のママから連絡をもらい、息子を迎えに行ったまゆさんは危険なことが起きないよう、パートを辞め、タクヤくんのサポートに力を注ごうと決意。夫の裕二さん(仮名・37歳)に、事情を説明し、自分の気持ちを伝えました。
◆「息子のためにパートを辞めたい」と夫に伝えたら…
ところが、夫から返ってきたのは「パート時間をもっと短くしてもらったら?」との言葉。気持ちに寄り添ってもらえないことに寂しさを感じつつ、まゆさんは職場で短時間勤務ができないことを伝えました。
しかし、裕二さんは折れず。「だったら、僕がいる夜に働きに出ればいいじゃん」と言われてしまいました。
「寝る時に私がいないと息子は癇癪を起こします。それを見ていたはずなのに、よくそんなことが言えるなって……。子育てにあまり協力的ではないと思っていたけど、こんなにも無関心だったことに呆れました」
イライラするけど、喧嘩になっては意味がない。そう思い、まゆさんは夜に働くのが難しい事情も丁寧に説明。再度、「パートを辞めたい」と伝えました。
すると、裕二さんはしばらく沈黙した後、「わかった、そうするしかないね」と、ようやくパートを辞めることを了承。ようやく事の深刻さが伝わったことに、まゆさんは胸をなでおろしました。
◆「息子を施設に入れられたら…」と話す夫に怒り心頭
ところが、その後、裕二さんが口にした言葉にまゆさんは深く傷つけられます。
「夫は笑って、『いっそ、タクヤを施設に入れられたらいいのにな』と言ったんです。百歩譲って、普段から子育てに協力的で疲労困憊……という状態なら仕方がない言葉だとも思えたかもしれません。でも夫はそうじゃない。私がワンオペで息子のケアをしているので許しがたい言葉でした」
怒りが溢れたまゆさんは、「それが親の言う言葉?」と戦闘モードに。すると、裕二さんは「だって、俺だけが働くなんて不公平じゃん。タクヤといたいから家にいたいなんて贅沢な願いでしょ」と見当違いな反発をしてきました。
「息子の癇癪も間近で見ているのに、問題の根本を分かっていない夫の言葉に呆れました。家にいたいのではなく、いないといけないと思っている私の不安感は結局、伝わりませんでした」
こんなにも頼りにならない夫なら、いっそいらない。でも、息子のケアに時間を割かれ、働くことが難しい今、離婚に踏み切ることは難しい……。そんなモヤモヤを抱えながらまゆさんは頼れる支援機関を探しつつ、息子さんの発達障害との向き合い方を模索中。
ワンオペで育児に奮闘するまゆさんの不安や涙に裕二さんが寄り添う日は来るのでしょうか。
<文/古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291