サッカー日本代表でも新天地レンヌでも悪戦苦闘 古橋亨梧が「らしさ」を発揮するために必要なプレーとは?

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2025年03月22日 07:10  webスポルティーバ

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 昨年11月に続き、古橋亨梧はワールドカップ・アジア3次予選(最終予選)の代表メンバーに名を連ねている。

 前回招集時は所属クラブがセルティック(スコットランド)だったが、今回はフランスのレンヌに変わっている。今冬の移籍市場において、移籍金1200万ユーロ(約20億円)でリーグ・アンのクラブに新天地を求めたからだ。

 この移籍が発表された1週間前に30歳になった古橋にとっては、おそらくキャリアアップのラストチャンスとも言える絶好の機会でもあった。だが、その船出は順風満帆というわけにはいかなかった。ここまでは、文字どおり「悪戦苦闘」といった状況にある。

 古橋が加入してからのレンヌは、これまでリーグ戦7試合を戦い、チーム成績は4勝3敗。残留争いに巻き込まれていたなかで勝ち点12ポイントを積み上げ、順位も入れ替え戦圏内の16位から現在は12位に浮上した。古橋がデビューしたストラスブール戦(第20節)から指揮を執るハビブ・ベイェ新監督が、チームを降格圏脱出に導いた格好だ。

 そんななか、古橋は7試合のうち4試合に出場。加入直後のストラスブール戦(1−0)こそ先発出場でデビューを飾ったものの、思うようなパフォーマンスを見せられず、その後はすべてが途中出場となっている。

 第21節サンテティエンヌ戦(2−0)では出番がなく、試合中に肩を負傷した第22節リール戦(0−2)は後半72分からの途中出場。日本人対決が注目された第23節スタッド・ランス戦(1−0)、続く第24節モンペリエ戦では最後までベンチを温め、第25節パリ・サンジェルマン戦(1−4)の後半81分から3試合ぶりにピッチに立った。

 そして日本代表合流前の第26節RCランス戦では後半70分から投入され、アディショナルタイム約7分を含めて計27分にわたってプレー。しかし残念ながら、個人としてインパクトを残すことはできなかった。

【古橋に味方からパスが出てこない】

 この試合では、現在の古橋が置かれている状況を象徴するようなシーンが2度あった。

 ひとつは、出場直後の後半70分。相手ボックス手前でルーズボールを回収した右WBロレンツ・アシニョンがそのままボックス内に進入し、その勢いのまま右足を振り抜くも、シュートがゴール右に外れたというレンヌにとっての決定機だ。

 その時、古橋はボックス内でワンタッチゴールを狙えるポジションに入っていたが、アシニョンはそんな古橋を見ることなく、迷わずシュート。もしアシニョンがシュートではなくパスを選択していたら、おそらく古橋の加入後初ゴールが決まっていた可能性は高い。

 もうひとつは、後半78分。3バック左を務めるミカイル・フェイが相手陣内でボールを奪うと、そのままドリブルで前進してボックス内で左足シュートを放ったシーンだ。そのシュートは相手DFにブロックされたが、このシーンでも古橋は申し分のないタイミングでファーサイドに進入し、パスが出てくればゴールできそうなポジションを取っていた。

 どちらも古橋の特徴がよく出たストライカーらしい動きではあったが、ゴールを量産したセルティック時代と違い、まだ新天地ではパス自体が出てこない。ストライカーは結果がすべてゆえ、ゴールどころか、シュートもデビュー戦での1本しか記録できていない状況を考えれば、これも仕方のないことなのかもしれない。

「彼はほかのFWとは異なる能力を持っている。彼はコンビネーションプレーヤー(周囲との連係を必要とする選手)なので、現在われわれは彼が周りとの連係を図れるように必死に取り組んでいるところだ」

 記者会見でベイェ監督が古橋について語ったとおり、古橋の得点能力を生かすためには周囲との連係が重要になる。そういう意味では、トレーニングや試合でチームメイトと一緒にプレーする時間が増えれば、いずれは前述したRCランス戦のふたつのようなシーンでも、味方からパスが出てくるようになる可能性はあるだろう。

 とはいえ、繰り返しになるがストライカーは結果がすべてなので、古橋自身がゴールを決めなければ、そう簡単にはゴールチャンスで味方からパスは出てこない。だとすれば、現在のようなプレースタイルで勝負しようとするだけでは、なかなか現状を打開できないというジレンマに陥ってしまう可能性もある。

【ボールに触れる回数が少なすぎる】

 まず取り組みたいのは、ゴールに直結しないプレーにおいても、しっかりと周囲と連係を図ることだろう。少なくとも、これまで出場した4試合を振り返ると、古橋がボールに触れる回数が少なすぎる。

 たとえば、後半66分まで出場したデビュー戦で、古橋がボールに触れたのは7回。以降、リール戦が5回、パリ・サンジェルマン戦が2回、RCランス戦も4回のみ。確かにそれが古橋のプレースタイルと言えばそうなるが、それでシュートが1本しか記録できていないとなれば、何らかの工夫は必要だ。

 たとえば、一発でゴールにつながるような動きだけではなく、時には中盤に下りてパスをもらい、確実に味方につなげるプレーがあっていいはず。あるいは、サイドに流れてボールをキープするプレーもひとつだろう。

 要は、そうやって周囲との関係性を少しずつ構築し、古橋にパスを預ければ次の展開につなげられる──という認識をチームメイトに持ってもらうことも、連係を高めるうえでは重要なポイントになるはずだ。

 そのためには、ボールをもらった時にロストしないようにしなければならない。独特のフィジカルバトルが特徴のリーグ・アンでは、とりわけこのハードルをクリアしなければピッチに立ち続けることはできない。

 そういう意味では、伊東純也、南野拓実、中村敬斗がそのハードルをクリアしたように、まずは正確にボールを扱うことで相手を寄せつけず、無用なデュエルを回避することも必要になるだろう。

 いずれにしても、チーム内で確固たる地位を築くためにも、セルティック時代からバージョンアップを図りたいところだ。それができれば、なかなか結果を出せていない日本代表においても、その相乗効果で持ち味を発揮できるようになるはずだ。

 とにかく、まずはリーグ・アンに順応することが先決。今シーズンの残り8試合はそのための適応期間と考え、今は焦らずにいろいろなことに取り組むべきだろう。

 古橋にとって、本当の勝負は来シーズンだ。そこに照準を合わせることで、2026年ワールドカップ出場への道筋も見えてくる。

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