写真 こんにちは。これまで3000人以上の男女の相談に乗ってきた、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。髪もボサボサで化粧もしない“完全なる非モテ”から脱出した経験を活かし、多くの方々の「もったいない」をご指摘してきました。誰も言ってくれない「恋愛に役立つリアルな情報」をお伝えします。
HSPという特徴をご存じですか? HSPはHighly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字をとった言葉で、感受性が非常に高く、環境からの刺激に敏感に反応する人々を指します。「繊細さん」とも呼ばれるHSPには感覚が過敏で共感力が強いなどの特徴があるそうで、日本では2018年ごろにHSPに関する本が出版されたのをきっかけに広まりました。
HSPは診断名や疾患名ではなく、気質をあらわす概念です。そのため、HSPかどうかはほとんど自己判断です。
◆自称HSPさんが「マウントを取られた」と思ったできごと
婚活相談に来たミナさん(仮名・32歳)は自称HSPです。数カ月前までは彼氏がいたというミナさん。ある日、その彼から「同棲しないか」と提案され、モヤっとしたそう。その理由は、当時ネットで頻繁に見かけた「同棲をすると結婚が遠のく」という説でした。
彼がどういうつもりで同棲を提案したのかを、その場で確認すればよかったのかもしれません。ですがそのときは「え〜、どうしよっかな」程度の反応でやり過ごしてしまいました。
後日、ミナさんは既婚者の女友達に「プロポーズもしないのに同棲しようって言ってくる男ってどう思う?」と相談。「う〜ん、私は同棲したことがなくて、プロポーズされて結婚と同居が同時だったから分からない」と返されました。
解散してからも、ミナさんの中で気持ちのモヤモヤが止まりません。モヤモヤを突き詰めていった結果「私はマウンティングされたんだ」と感じたそうです。結果、その女友達とは距離を置くことに。
この友人の発言は、マウンティングに当たるのでしょうか?
◆ひとりで不安を募らせ、突然爆発させて暴走
ミナさんには結婚したい気持ちがありました。ですが「彼氏から結婚にがっついている女に見られ、重い女認定されるのが怖かった」と言います。
ミナさんから同棲の話題に触れないでいると、彼氏の方からも何も言われず、2〜3カ月ほどの時間が過ぎていきました。このはっきりしない状態に、ミナさんの不安はどんどん募っていきます。
ある日勇気を振りしぼり、「前に同棲しようって言ってたじゃん。あれってどういうつもりだったの?」と切り出しました。すると彼は「そんなこと言ったっけ?」と手ごたえのない反応。その瞬間、感情のコントロールができなくなり、「ずっと不安だった」などと彼に不満をぶちまけてしまいました。
「その場で言ってくれればいいのに後から責められても困るよ」と彼から言われ、後から「お互いに考える時間を作ろう」とLINEが来ます。
ミナさんは彼から捨てられるのが怖くて、衝動的に「別れよう」とLINEを送り、お別れすることになりました。
◆「私はHSPだから、本音を言えないんですよ」
ミナさんは過去にもこのようにため込み、あとから感情のまま不満をぶつけて着地点がわからない言い争いになり関係解消という失恋を経験しています。
ミナさんはもう32歳。結婚したいのに次に同じことを繰り返してしまってはじきにアラフォーになってしまいます。そんな経緯で、今回筆者のところへご相談にやってきたのでした。
「私はHSPだし、傷つきやすいし、その場の空気を読みすぎて本音を言えないんですよ」
「私はメンタルの専門家じゃないので、HSPかどうかは分かりません。ちょっと厳しいこと言うから気を悪くしないでほしいんだけど、ミナさんは感情のコントロールが苦手で、相手の立場に立つのは苦手なのかもしれませんね」
「え! 我慢強い方ですよ」
「とっても我慢したと思いますよ。でも、我慢と感情のコントロールは別です。仮にHSPでとっさに相手に言えなかったとしても、『その場で聞けなかった私も悪いんだけどね、ちょっと気になってたことがあって確認させてほしい』とか前置きしてから後で確認するとか、ちょっと丁寧なものの言い方を覚えることはできますよ」
◆人間関係をリセットしすぎて友達が減っていく
ミナさんは“傷つきやすい”ことを理由に、SNSなどですぐ人間関係をリセットします。自分の「100%味方」以外をブロックするから、友達が減るのです。
「言い方に気を付けることと、お友達を切らない事から始めましょう。ミナさんが『マウンティングされたと感じた』のは紛れもない事実だと思うよ。でも、相手はマウンティングしたつもりなんて1ミリもなくて、ただ自分の事情を説明しただけかもしれない。そこは本当に分からない。
人間関係を切るのは最終手段にして、友達だったら相手がなぜそう思ったのか、なぜそう言ったのかを確認して、自分とは価値観が違う人を理解するようにしていこう。そのお友達にも『同棲すると結婚できなくなる説ってどう思う?』って聞き方だったら、『分からない』以外の意見を聞けたかもしれないよ」
「う〜ん。それもそうですね」
◆同棲経験者の9割が「同棲した相手と結婚している」
実はミナさんの気にしている「同棲をすると結婚が遠のく説」を、思いきり覆すような調査結果があります。
ゲストハウスウエディング等を展開するアニヴェルセル株式会社が未婚・既婚の男女416人を対象に昨年行った調査によると、結婚前の同棲経験がある人は全体の37.3%、既婚者208人のうち59.1%でした。中でも20代の既婚者でみると、68.3%が同棲経験者と半数以上でした。
さらに同棲経験者に「同棲した相手と結婚したか」を尋ねたところ、「結婚した」が94.7%という結果に。
既婚男女600人を対象にした2016年の同社調査では同棲経験者の割合は48.5%(同棲経験者33.8%と半同棲のみの経験者14.7%を合わせた数字)でした。ここ10年弱で、結婚前に同棲する人はやや増加傾向にあると言っても良いでしょう。
筆者も「同棲をすると結婚が遠のく説」は聞いたことはありますが、今の時代はそうとも言えないのではないかなと感じます。同棲をきっかけに親に紹介してしまえば、わりと結婚までスムーズに進む印象です。ただ、同棲経験があるとロマンチックなプロポーズは難しいかもしれませんね。
ミナさんがもっと多様な意見を聞ければよかったのかもしれませんが、自分と異なる価値観の人と距離を置き、共感したくなるネットの情報だけ鵜呑みにし続ければ、考えはより凝り固まり、病みやすくなってしまいます。
彼女には、そうした情報が氾濫するSNSとは距離を置くことをおすすめしました。
◆どう見ても“そうじゃない人”が「HSPって私のこと」と思いがち
HSPという言葉は、本当に心優しくて他人に寄り添いすぎるような人にはピンと来なくて、情緒不安定で被害妄想を抱きやすい人だけが「HSPって私のことだ」と思ってしまうような側面もあって、厄介だなと感じます。
今回お話を聞いたミナさんだけでなく、別の自称HSPさんからも「デート当日にドタキャンした」という話を聞いたことがあります。マッチングした相手とメッセージのやり取りの中で不安になってきて、「この人に会ったら危ない」と思って行かなかったのだそうです。
HSPという言葉が、非常識な人が自分を肯定する口実になっているのは残念だなと感じます。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt