「ONE 172: 武尊 VS ロッタン」を独占配信 U-NEXTの狙いは?

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2025年03月22日 16:21  ITmedia ビジネスオンライン

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左からロッタン選手、ONE ChampionshipのチャトリCEO、武尊選手

 定額制動画配信(SVOD)の業界各社が、激しいシェア争いを繰り広げている。こうした中、U-NEXTは3月23日、さいたまスーパーアリーナで開催する格闘技イベント「ONE 172: 武尊 VS ロッタン」を独占配信する。GEM Partnersが2月25日に発表した調査によると、2024年の国内シェア(金額ベース)ではU-NEXTが最大の伸びを示し、首位のNetflixに迫る勢いだ。世界的に注目を集める今回の興行を配信することによって、競合と差別化を図る狙いがある。


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●王者Netflixに肉薄 “爆発的”成長の理由は?


 同大会を主催するONE Championshipは、シンガポールに拠点を置く世界有数の格闘技団体だ。日本で初めて大会を開催したのは6年前の2019年3月の東京・両国国技館。今大会は、約1年2カ月ぶりに日本で開催する形となる。


 会場がさいたまスーパーアリーナであることから、同社が日本で開いてきた大会の中でも、過去最大の規模になることは間違いない。会場でのチケットの他、U-NEXTがペイ・パー・ビュー(PPV、有料コンテンツに料金を支払って視聴するシステム)を5000円で販売している。


 過去最大の大会を、独占で配信するのがU-NEXTだ。U-NEXTとONE Championshipは2月14日にパートナーシップ契約を締結。年間を通して「ONE Fight Night」「ONE Friday Fights」の全試合を独占で配信している。U-NEXTの堤天心社長はプレスリリースで以下のようにコメントした。


 「U-NEXTは、自らの可能性を切り拓(ひら)き、世界を目指すアスリートの挑戦を最大限のリスペクトと共に応援し、皆さまに届けるプラットフォームでありたいと考えています。多くの日本人ファイターが世界を目指すONE Championshipにおいて、試合をリアルタイムで配信することはもちろん、アスリートのストーリーやバックグラウンドまで丁寧に掘り下げて発信し、ONE Championshipと密に連携していきます」


 パートナーシップを組んだONE Championshipのチャトリ・シットヨートンCEOによれば、今大会の模様は世界195カ国で放送されるという。3月17日に都内で開催した記者会見でチャトリCEOは「今回のストーリーは『日本vs世界』」だと話し、期待を述べた。


 「今回のONE Championshipは、日本と世界のベスト・オブ・ザ・ベストの選手を集めています。簡単な試合はありません。日本の皆さんはこのレベルの試合をちゃんと見たことがないかもしれませんね。25年前は日本の格闘技が世界でもナンバーワンでしたが、その後はだんだんファンが少なくなってしまいました。私の夢は今大会を境に、日本の格闘技がベスト・オブ・ザ・ベストになっていく新しい将来を作ることです。そういうストーリーを作りたい。U-NEXTさんも応援してくれています」


●格闘技に注力する背景とは?


 U-NEXTはONE Championship以外にも世界最大の格闘技団体「UFC」や日本の格闘技イベント「RIZIN」や「PANCRASE」の試合も配信中だ。U-NEXTがこれだけ格闘技の配信に注力する背景には、SVOD業界で繰り広げられる熾烈(しれつ)な競争がある。


 GEM Partnersの最新の調査によると、2024年の国内シェアはNetflixがトップ(21.5%、前年比-0.4ポイント)。王者Netflixがシェアを落とす一方で、全プラットフォームの中でも異例の成長を続けるU-NEXTが2位を堅持している(17.9%、前年比+2.7ポイント)。


 調査対象となった13サービス中、前年からシェアを拡大したのはU-NEXT、FOD(FODプレミアム)、DMM TV、ABEMAプレミアム、Amazonプライム・ビデオのみだ。SVODサービスの利用率自体が2020年、2021年の急進に比べて「近年は成長が鈍化している」(GEM Partners)。そんな中でも、U-NEXTの成長は力強い。2024年12月には、有料会員数が450万人を突破した。会員数500万人達成も見えてきている。


 もともとU-NEXTは、2022年にAmazonプライム・ビデオを抜いて2位に浮上した。2023年には、TBSとテレビ東京系のドラマ作品やバラエティー番組を配信していた「Paravi」とサービス統合をしたことも影響し、シェアの拡大がさらに進む形となっている。その流れの中で2024年、市場全体の成長が停滞する中、調査対象のサービスの中で唯一、前年比で1.0ポイント以上伸長した。


 「ONE 172: 武尊 VS ロッタン」が注目されている理由は、2022年6月に東京ドームで5万6399人を動員した「Yogibo presents THE MATCH 2022」のメインカードを闘った武尊選手が出演するからだ。THE MATCH 2022のPPVの売り上げは50万件を突破し、日本の興行史に残る記録となっている。チャトリCEOは以下のように話した。


 「武尊は世界中にファンがいます。今回の試合は世界中が注目しているので、また広くファンを獲得するでしょう」


 チャトリCEOは日本人の母とタイ人の父を持ち、ハーバードビジネススクールでMBAを取得している。ONE Championshipを立ち上げる以前はウォール街のヘッジファンドで辣腕(らつわん)を振るったり、eコマースのスタートアップ「Nextdoor Networks」を起業して事業売却したりした。いわゆる「やり手の連続起業家」だ。今回の大会で、PPVがどれだけ売れるか。SVOD競争の中で、U-NEXTがさらに存在感を高めることになりそうだ。


(アイティメディア今野大一)



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