
GI天皇賞・春(5月4日/京都・芝3200m)のステップレースとなるGII阪神大賞典(阪神・芝3000m)が3月23日に行なわれる。
スタミナ自慢が集結する伝統の一戦。過去10年の結果を振り返ると、1番人気は5勝、2着1回、3着2回と安定した成績を残している。おかげで、3連単の配当が1万円を超えたのは4回だけ。重賞のなかでも堅いレースのひとつとして知られる。
となると、穴党の出番はないように見えるが、時に人気薄馬が馬券圏内に突っ込んできたり、断然の人気馬が馬券圏外に沈んだりして、波乱が起こっている。たとえば、2019年には6番人気のカフジプリンスが2着、10番人気のロードヴァンドールが3着に入って、3連単は8万円超えの好配当をつけた。2021年には、単勝1.3倍のアリストテレスが惨敗を喫したうえ、3着に9番人気のナムラドノヴァンが飛び込んできて、3連単では12万円超えの高配当が生まれている。
はたして、今年はどうか。堅いのか、荒れるのか。カギとなるのは「馬場状態」。さらに、そこから導かれる「展開面にある」とデイリー馬三郎の吉田順一記者は分析する。
「この3月、約10カ月ぶりにリニューアルオープンした阪神競馬場は、開幕週から絶好の馬場コンディション。前に行く馬と、内でじっと脚をタメていた差し馬が伸びるトラックバイアスとなっています。
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先週の日曜日は雨中の競馬となりましたが、それでも芝の塊はそれほど飛んでおらず、全体的にいいコンディションが保たれていると判断していいでしょう。そして、この週末の天気は晴れ予報です。
内回りの芝3000m戦で馬場がいいことを考えれば、ジョッキーの仕掛けは早めになると読むのが定石。ある程度前に行く馬は早めのプレッシャーに耐えうることができるか、後方で脚をタメる馬はコーナーリングでスピードを落とさずに長い脚を使うことができるか、といったことが求められます。
そこで、今回のメンバーを見てみると、中団から後方で折り合って、仕掛けのタイミングをうかがいながら運ぶ馬が数多くいます。しかも、前を行く馬を潰せるだけの脚力を保持した有力馬がそろいました。それゆえ、先行各馬が有利というわけではないように見えます。
ただ、中団以降の有力馬たちは道中近いところで運んでいるため、互いに牽制し合って仕掛けが遅れる、というシーンがあることも頭に入れておくべきでしょうね。その場合、前でしぶとさを発揮し、後続の仕掛けにマクられることなく動ける器用さと忍耐力のある馬が優位ではないか、と見ています」
吉田記者がそういった見解を示すのは、有力視される差し勢それぞれに「懸念があるから」でもあるという。
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「まず、天皇賞・春につながるという意味では、武豊騎手が騎乗するショウナンラプンタ(牡4歳)に魅力を感じます。1週前の追い切りでは、道中の折り合いが今まで以上にスムーズでした。
ですが、これが実戦でどうか? となると、まだわからないというのが本音。状態は申し分ないのですが、今回は次走を勝つための"試走"と判断したいですね。
また、ワープスピード(牡6歳)は前走より状態を上げてきそうですが、やや時計や上がりがかかったほうがいいパワータイプ。ゴールデンスナップ(牝5歳)も上がりが少しかかったほうがいいタイプで、京都のほうが好相性。今回よりも次走向きです。
ブローザホーン(牡6歳)も体調はよくなっているとはいえ、本質的には時計の速い芝コースには疑問が残ります。いずれも、ここよりは京都で行なわれる本番のほうが向いているように感じます」
こうしたことを鑑みて、吉田記者は今回の前哨戦で激走しそうな先行馬2頭を推奨馬に挙げた。
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「1頭目は、サンライズアース(牡4歳)です。
GI日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)4着以来だった2走前のGII日経新春杯(1月19日/中京・芝2200m)では、2番手で運んでヘロヘロになって16着惨敗。これは、重め残りと活気不足が敗因でした。
それが、復帰2戦目となる前走の3勝クラス・早春S(2月8日/東京・芝2400m)では、パドックからスイッチが入って気配が良化。日経新春杯同様、大逃げの馬を追いかける2番手からの競馬になりましたが、今度は勝負どころでモタつくことなく、直線もしっかりと長い脚を使えての2着。その走りは評価できると思います。
ダービーの4着は、向正面でマクる形から2番手を確保して踏ん張ったものですが、ここ最近の行き脚と今回の顔触れなら易々と主導権を握れるはず。勝負どころでマクられずに直線に入れば、大きいストライドを駆使して簡単にバテることはないでしょう。
阪神の内回りコースでは、デビュー2戦目のリステッド競走・すみれS(阪神・芝2200m)を快勝。適度に上がりを要する流れを自らが演出できれば、粘り込みも十分にありそうです」
吉田記者が推すもう1頭は、昨年の夏から秋にかけて芝2400m〜芝2600m戦で3連勝を飾ったヴェローチェエラ(牡4歳)だ。
「同馬は道中、牽制し合う有力馬の前で運べそう。サンライズアースを見る形でしっかりとスパートし、後続のマクりに屈することなく直線を向けば、最後はしっかり伸びきってくれると踏んでいます。
調教では2週続けて川田将雅騎手が騎乗し、これまで見たことがないような鋭い反応と伸び脚を披露。クビを巧みに使ったブレのない走りは、短期間での成長と状態アップを物語ります。
体つきも筋肉量がアップし、均整の取れたフォルムに変わってきました。掻き込みの利いたフットワークながら、回転が速くなったのは好感が持てますし、有力馬の差し勢より行き脚がよく、好位置から運べる点に優位性を感じます」
天皇賞・春に向けて、注目の前哨戦。大一番を見据えた実績馬を出し抜いて、勢いある明け4歳勢が一発かますのか、必見である。