第100回を迎えた競泳の日本選手権が23日、東京アクアティクスセンターで幕を下ろした。
世界選手権(7月、シンガポール)代表選考会となり、28年ロサンゼルス五輪に向けた4年サイクルの第1歩。大阪・四條畷学園高2年の今福和志(17=枚方SS)は男子1500メートル自由形で、11年ぶりの日本新記録となる14分50秒18をマーク。香川・丸亀南中3年の平田統也(15=坂出伊藤SS)は50メートルと100メートル背泳ぎ、100メートル自由形の3種目で中学新記録を樹立するなど若手の台頭も見えた。
16年リオデジャネイロ五輪男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介氏(30)も、会場で見守りながら有望株の出現を喜んだ。
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競泳がメダル1個だったパリ五輪の翌年に、新たな選手が出てきたことは喜ばしいニュースです。特に中学、高校生。今福選手の自由形長距離は、日本が海外で活躍できる選手を待っていた種目。11年ぶりに山本耕平さんの日本記録14分54秒80が更新され「こうやって時代が動いていくんだな」と感慨深くなりました。
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彼の特徴はキックにあります。ガガガガッと打ち込むのはラストスパートぐらい。それ以外は独特の使い方をしていて、力感がなく、高いボディーポジションを保っています。並行して取り組む(海や川などで10キロを泳ぐ)オープンウオーターは、周囲の選手との距離感が競泳より近い。私の現役時代の経験を踏まえても、勢いあるライバルは覇気を感じるし、同時に疲れも察知できます。国際大会での競り合いでは駆け引きがあり、レーンや呼吸の向きも関わってくる。今福選手はレース運びも安定していて、28年ロス五輪や32年ブリスベン五輪で引っ張っていく期待感があります。
平田選手は昨夏、私が持っていた100メートル背泳ぎの日本中学記録55秒33を、15年ぶりに更新(55秒25)しました。今大会で55秒05まで縮めています。手足が長く、柔らかみを感じる泳ぎが特徴。バサロも胸椎から動いていて、非常に強みだと思います。今後、100メートル背泳ぎで世界を目指すのであれば、スピードだけでなく、200メートルの体力もつけていく必要があると感じます。彼はターンからの蹴りを課題に挙げていたそうですが、壁際の筋力は大学生の方が強い。自然と伸びていく部分だと思います。
私も高校生のころ、腕立て伏せは10回もできませんでした。適切なタイミングで、必要なトレーニングはやってきます。高校生になっても当たり前のことですが、練習だけでなく、食事や睡眠を十分にとっていくことが大事だと思います。
実績組では、パリ五輪男子400メートル個人メドレー銀メダルの松下知之選手も印象的でした。五輪翌年の代表選考会で自己ベスト4分8秒61を出し、代表切符をつかんだことには価値があります。前半の200メートルから攻めた姿勢もですし、200メートル自由形、200メートル個人メドレーを含めて、殻を破るレースができている。結果を残すべき選手がしっかりと残し、若手が台頭する。そんないいバランスの日本選手権を見て、競泳界のこれからが楽しみになりました。(16年リオデジャネイロ五輪金メダリスト)
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