【世界フィギュア男子】鍵山優真VSイリア・マリニンはSPが勝負の分かれ目 五輪の3枠獲得も油断できない状況

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2025年03月24日 07:10  webスポルティーバ

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世界フィギュア2025・男子シングル プレビュー

 3月26日(現地時間、以下同)にアメリカ・ボストンで開幕するフィギュアスケートの世界選手権。27日にショートプログラム(SP)、29日にフリーが行なわれる男子シングル最大の見どころは、これから最強時代を築いていくだろう"4回転の神"イリア・マリニン(アメリカ)に対し、鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)がどう立ち向かっていくか、だ。

【4回転の神はジャンプ構成に注目】

 2024年の世界選手権でマリニンは、SPをノーミスの演技としながらも演技構成点が伸びず、宇野昌磨と鍵山を下回る3位発進だった。だが、フリーでは4回転アクセルを含めた6本の4回転ジャンプを入れ、しかも、基礎点が高くなる演技後半にコンビネーションジャンプを3本という構成に。それをノーミスで滑り、合計得点を世界歴代2位の333.76点とし、圧勝していた。

 そして今季のマリニンは、初戦のロンバルディア杯でフリーを4回転4本構成で312.55点の優勝。つづくアメリカ、カナダ両大会と連戦になったGPシリーズでは、ミスも重なり、成功した4回転はアメリカが4本、カナダが3本。ともに優勝はしたものの、それぞれ290.12点、301.82点だった。

 GPシリーズは昨季も第3戦までの早い時期を戦い、今季も移動に負担のない北米開催の2大会で終わらせていたマリニン。それは、昨年12月のGPファイナル以降の大会に余裕をもって臨もうとする意図だ。

 そんな、前季の世界選手権王者の特権を存分に活かしたスケジューリングのなか、GPファイナルでは満を持してフリーで4回転7本構成に挑戦。だが、2本のルッツ、ループともにアンダーローテーション(回転不足)。ほかの4本の4回転も、4分の1の回転不足の「q」判定だった。優勝はしたが、フリーの得点はミスが出た鍵山より低い186.69点で、合計は292.12点という結果だった。

 今年1月の全米選手権のフリーでも4回転7本構成に挑み、4本目のループのアンダーローテーションでの転倒と、最後のサルコウの「q」判定以外は成功させた。スピンのレベル4は、最後のシットスピンのみとジャンプに意識が寄った滑りだったが、219.23点を獲得。SPと合わせて合計333.31点の高得点を出している。

 マリニンが今回の世界選手権でもそうした難度の高い構成でくるかどうか注目されるところだが、勝負に万全を期すなら、前回大会でもそうしたように4回転の本数を減らして完成度を高めようとしてくるだろう。

【完成度で挑む鍵山優真】

 対する鍵山は、完成度で勝負する。

 今季のフリーの4回転は、フリップとサルコウ、トーループ2本の4本構成にしていた鍵山。300.09点で優勝した昨年11月のGPシリーズ・NHK杯の公式練習では、4回転ルッツを跳んでみせた。そのルッツについては、「12月の全日本選手権までには(構成に)入れる予定はないが、その先には......」と話していたとおり、年が明けてから実行に移した。

 だが、今年1月のワールドユニバーシティゲームズではそのルッツは1回転になり、優勝はしたものの合計289.04点にとどまった。さらに、2月の冬季アジア大会では、ルッツを「q」判定で転倒。後半も崩れて、チャ・ジュンファン(韓国)に逆転負けの結果になった。

 その後、世界選手権に向けては、4回転ルッツを入れない構成でプログラムの完成度を上げることをめざすと明言。シーズン前半戦のフリーの構成でまだ完全なノーミスの演技をしていない現状では、妥当な選択だろう。

 今大会でまず、鍵山がめざすのは2022年北京五輪で出した自己ベストの310.05点を上回ること。さらに、北京の団体戦で記録したフリーの自己最高208.94点を更新することだ。

 そして2025年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を考えれば、今大会でSPとフリーをノーミスでそろえた納得の演技をして、マリニンとどのくらいの差があるかを確認することも必要だ。差を明確に知ることで、五輪でのマリニンとの対決に向け、4回転ルッツ導入などの長期的な戦略を立てられるからだ。

【SPでプレッシャーをかけられるか】

 その第一歩として、世界選手権へ向けてさらにブラッシュアップをしているというSPで、まずはマリニンをリードし、プレッシャーをかける戦いをしてほしい。

 マリニンは、冒頭を4回転フリップ、後半に4回転ルッツ+3回転トーループという高難度の構成で、今季初戦のロンバルディア杯で107.25点の自己ベストを出している。

 一方、鍵山がSPでめざすのは、前半の4回転サルコウと4回転トーループ+3回転トーループを跳ぶ構成で、北京五輪で出した自己最高108.12点を超えることだ。

 また、技術基礎点ではマリニンに劣る鍵山が、GOE(出来ばえ点)加点や演技構成点を稼いでリードする展開に持ち込んだ時に、大会連覇や五輪へのプレッシャーもかかるマリニンが、どういう精神状態になるかも確かめてみたいところだ。

【油断できない五輪出場3枠獲得】

 また、日本男子チームにとって重要なのは、五輪に向け、日本勢の出場3枠を獲得できるかどうかということ。

 日本勢は、鍵山のほか、佐藤駿(エームサービス/明治大学)と壷井達也(シスメックス)が出場。3枠獲得するための条件は、上位2人の順位合計を13以内にすること。たとえば鍵山が2位になった場合は、2番手が11位以内となる必要があるが、今季のシーズンベストランキングで佐藤が、285.88点で3位につけているのは心強い。

 前半戦はケガもあって不調だった昨季の世界選手権3位アダム・シャオイムファ(フランス)は、ヨーロッパ選手権ではフリーで大崩れしたが、前戦のソニア・へニー杯で優勝し復調の気配を見せる。今回も実力どおりの滑りをすれば、3〜4位に入ってくるだろう。

 しかしながら、シーズンベストでは3番目の佐藤も不安要素がある。プレッシャーのかかる全日本選手権では7位、年明けの2試合でも不調だった。出場選手の自己最高得点などを見れば、270点を超えてくる可能性をもつ選手が佐藤や鍵山も含めて12人ほどいる状況で、油断はできない。

 佐藤にとっては、これからの日本男子の中心選手になるための真価が問われる戦いにもなる。鍵山とマリニンの戦いとともに、注目したい。

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