昇格後初のレースを制したフラワーパーク(撮影:高橋正和) 今年で55回目、そしてGIに昇格して以降では30回目となる高松宮記念(4歳上・GI・芝1200m)だが、これまでで最も注目を集めたのは昇格初年度の96年だろう。三冠馬のナリタブライアンが参戦したことで話題となった一戦を振り返る。
もともとは夏の中距離GIIだった同レース(以前は高松宮杯)だが、96年に短距離路線の体系が整備されたことに伴い、立ち位置が一変。施行時期を春に移した上、芝1200mに距離短縮となり、春のスプリント王決定戦となった。そんな記念すべき「第1回」に参戦したのが2年前の三冠馬であり、前月の天皇賞(春)で2着だったナリタブライアン。日に日に注目が増し、中京競馬場の入場者数は史上最多の7万4201人を記録することとなる。
レースは伏兵スリーコースが果敢に逃げた。これに続くのが前哨戦のシルクロードSを制していたフラワーパークと、前年のスプリンターズ覇者で1番人気のヒシアケボノ。この2頭を見る位置にビコーペガサス。ナリタブライアンはペースの違いに戸惑ったのだろうか、後方で押っ付けながらの追走となる。
迎えた直線、4角で先頭に立ったフラワーパークが一気に後続を引き離す。残り200mでは完全に勝負あり。2着のビコーペガサスに2馬身半差をつけて、初代チャンピオンに戴冠した。ヒシアケボノは本来の伸びを欠いて3着まで。ナリタブライアンは直線半ばでエンジンがかかったものの、上位ははるか前。何とか4着まで押し上げるのが精一杯で、結果的にこのレースがラストランとなった。
近年は各路線の整備が進んだため、芝ダートや距離の壁を超えてGI勝ち馬が競い合う「異種格闘技戦」のようなレースはほとんど見られなくなった。それだけに96年の高松宮杯が与えてくれた興奮を懐かしく思うファンは多いに違いない。