【MLB】山本由伸「サイ・ヤング賞&沢村賞」史上初ダブル受賞の夢 5人の候補者のなかで最も可能性が高い

2

2025年03月24日 07:40  webスポルティーバ

  • 限定公開( 2 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 2025シーズンの山本由伸(ロサンゼルス・ドジャース)は、1年前とはまったく違うスタートを切った。

 昨シーズンは韓国で行なわれた開幕シリーズの2試合目に登板し、初回に5点を取られ、2イニング目のマウンドには上がらなかった。それに対し、東京ドームで開幕投手を務めた今シーズンは、2回裏に先制点を許したものの、5イニングを投げて1失点に抑えた。

 5イニングで降板したのは、通常よりも早い時期のシーズン開幕が理由だ。4回裏と5回裏では対戦した打者をすべて討ち取り、それぞれ11球と9球でイニングを終わらせた。

 ただし昨シーズンも、初登板とシーズン中盤の3カ月近い離脱を除けば上々の1年目だったと言っていい。2登板目以降の成績は、17登板の89.0イニングで奪三振率10.42、与四球率2.12、防御率2.53、FIP2.58と、決して悪くない内容だった。

 FIPとは「フィールディング・インディペンデント・ピッチング」の略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。対戦結果のうち、三振、四球と死球、ホームランは基本的に投手の責任だが、ホームランを除くインプレーの打球の結果は守備に左右されることが少なくない──という考え方から生まれた。

 いきなり初回で5点を取られたメジャー初登板の1イニングを含めても、昨シーズンの防御率とFIPは3.00と2.61だ。2024年に90イニング以上を投げた140人のなかで、山本の防御率は17位タイ、FIPは5位に位置する。ナ・リーグの66人に限ると10位と4位だ。

 また、メジャーリーグ2年目の山本は、ただ好スタートを切っただけではない。昨シーズンと違い、今シーズンは開幕からトップギアに入っているようにも見える。

 昨シーズンの初登板では、フォーシームは最速96.6マイル(約155.5km)にとどまり、6月に入っても97.2マイル(約156.4km)程度。シーズン最速の98.4マイル(約158.4km)を記録したのは夏以降だった。一方、今シーズンの開幕戦で山本が投げたフォーシームは、すでに最速98.1マイル(約157.9km)を記録している。

【沢村賞とサイ・ヤング賞の違い】

『ロサンゼルス・タイムズ』のディラン・ヘルナンデス記者によると、開幕戦の試合後、デーブ・ロバーツ監督は「この投球ができて、健康であれば、サイ・ヤング賞の候補にならない理由は見当たらない」と語ったという。このコメントは、単なるリップ・サービスではないはずだ。日本人投手初のサイ・ヤング賞を手にしても、おかしくない気がする。

 山本はオリックス・バファローズ時代、沢村栄治賞(以下:沢村賞)を3度受賞している。オリックスからドジャースへ移る前に、日本プロ野球で投げた最後の3シーズン連続でだ。沢村賞とサイ・ヤング賞をどちらも受賞した投手は、まだひとりもいない。

 沢村賞とサイ・ヤング賞は、似ているようで違いも少なくない。

 たとえば、沢村賞は選考委員会の協議によって決まるが、サイ・ヤング賞は記者投票の合計ポイントが最も多かった投手に与えられる。また、サイ・ヤング賞に選ばれるのは先発投手だけではない。リリーフ投手の受賞者もいる。今世紀に入ってからは、ドジャースのクローザーだったエリック・ガニエが2003年に選出された。

 歴史は沢村賞のほうが長く、1947年に制定されて、1989年からはセ・リーグだけでなくパ・リーグの投手も対象となった。サイ・ヤング賞は1956年からだ。当初は両リーグで1名の選出だったが、1967年以降はナ・リーグ1名とア・リーグ1名に変更された。

 とはいえ、そのシーズン最高の投手と言って真っ先に思い浮かぶのは、日本プロ野球では沢村賞、メジャーリーグではサイ・ヤング賞の受賞者なので、その点においては同じとみなすことができる。念のために言っておくと、両賞とも大投手の名を冠している。MLB歴代最多511勝のデントン・トゥルー・ヤングは、サイクロンを縮めた「サイ」のニックネームで知られていた。

【サイ・ヤング賞投票で日本人最高は2位】

 沢村賞に選ばれたことがあり、現在メジャーリーグの球団に在籍している投手は4人いる。山本以外の3人の受賞年は、ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)が2007年、前田健太(デトロイト・タイガース)が2010年と2015年、菅野智之(ボルチモア・オリオールズ)は2017年と2018年だ。

 一方、横浜DeNAベイスターズに復帰したトレバー・バウアーは、彼らとは逆のパターンになる。バウアーは短縮シーズンの2020年にサイ・ヤング賞を受賞した。

 ちなみに、2020年の投票でバウアー(当時シンシナティ・レッズ)に次ぐナ・リーグ2位だったのは、当時シカゴ・カブスのダルビッシュだ。2013年の当時テキサス・レンジャーズ時代も2位で、惜しくも受賞を逃した。また、2020年は当時ミネソタ・ツインズの前田もア・リーグ2位だった(1位は投手三冠に輝いた当時クリーブランド・インディアンスのシェーン・ビーバー)。

 そのバウアーも含めて候補者5人のなかで、沢村賞とサイ・ヤング賞のダブル受賞を成し遂げる可能性が最も高いのは、山本ではないだろうか。山本が沢村賞を受賞したのは、わずか2年前のことだ。

 しかも、山本は飛び抜けて若い。2025年のシーズン年齢(6月30日時点)は26歳だ。あとの4人は、バウアーが34歳、菅野が35歳、前田が37歳、ダルビッシュは38歳。2番目に若いバウアーでも、山本との年齢差は8歳である。

 山本の全盛期は、まだまだ続くはず。むしろこれからと言ってもいい。今シーズンでなくてもサイ・ヤング賞のチャンスは何度もある。複数受賞や連続受賞の夢も膨らむ。ちなみに山本の沢村賞3度は史上最多タイ。サイ・ヤング賞はロジャー・クレメンスの7度が最も多い。

 もちろんサイ・ヤング賞は、そう簡単には受賞できない。シーズンを通した活躍だけでなく、ほかの投手をしのぐことが必要だ。ドジャースの先発投手に限っても、ほかの候補を挙げるならば、ブレイク・スネル、タイラー・グラスナウ、資質からすると佐々木朗希もだ。スネルは2018年と2023年にサイ・ヤング賞を手にしており、来シーズン以降は大谷翔平も候補に加わる可能性がある。

 彼らがしのぎを削ることで、ドジャースはさらに強くなっていくかもしれない。そしてそのローテーションをエースとして牽引するのは、山本ということも十分にあり得る。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定