取材に応じるシヤチハタの舟橋正剛社長=2月25日、名古屋市西区 今年、創業から100年を迎えた文具大手シヤチハタ(名古屋市西区)の舟橋正剛社長(59)が、23日までに時事通信のインタビューに応じた。数々の独創的製品を生み出す中で培ってきた自前の技術を積極的に展開していく考えを強調。「今後の100年も挑む」と意気込んだ。
同社は祖業のスタンプ台に加え、浸透印や電子印鑑を使ったデジタル決裁ツールなど、自社の既存商品を否定するかのような商品を生み出し、ヒットさせてきた。舟橋氏は「俯瞰(ふかん)して見ると(各商品は)共存している。そういうチャレンジがなければ今はない」と振り返った。
看板商品の浸透印は、ゴムを練る加工からインキ開発、本体の金型設計に至るまで自社で行い、各工程で自前の技術が蓄積されている。舟橋氏は「自社技術の応用で次の100年に事業展開していければ」と強調。橋の鉄骨に使われるボルトの締まり具合を確認する印をスタンプの要領で簡単に付けられる製品を引き合いに、取引先の要望を踏まえた自社技術の展開に意欲を示した。
コロナ禍では、オフィスでのペーパーレス化が加速するなど事業環境は大きく変化した。舟橋氏は「今までの努力をそのまま必死に続けても成長はできない」と話し、危機感を原動力に新たな製品を生み出していく構えだ。
電子印鑑から始まったデジタル関連事業では、NFT(非代替性トークン)など新たな展開も模索。「シヤチハタブランドの高い信頼性」を生かし、独自の技術を持つベンチャー企業との協業も進める考えだ。