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寒暖差の影響で免疫力が低下する春も感染症に警戒が不可欠だ。例年以上の人流増加が見込まれる今春は、ウイルスにつけ込まれるリスクがさらに高まっている。
「3月に入ってからも、冬に流行する、激しい嘔吐と下痢症状を引き起こすノロウイルスが猛威を振るい、北海道の焼き肉店で11人、名古屋の料理店で37人の集団感染が報告されるなどしています。
同時に、今月4日に山口県の20代女性と、同居している20代男性、5日に兵庫県の30代女性、8日に千葉県の40代男性、11日に埼玉県の0歳男児がはしかに感染していることがわかりました。
はしかは感染力が非常に強く、潜伏期間が10日ほどあるため、さらなる感染拡大が懸念されています」(全国紙記者)
■日本でも集団感染がいつ起こってもおかしくない状況
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感染が発表された人たちは、いずれもフィリピンやベトナムへの渡航歴があるように、世界的にはしかは流行期にあるという。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが警鐘を鳴らす。
「アメリカでは、テキサス州で感染者が160人を超え、カリフォルニア州やニューヨーク州など複数州でも感染者が確認され、10年ぶりに死者も出ています。
日本国内でははしかは撲滅されていますが、今後も、海外渡航者や、円安の恩恵を目当てに来日する外国人旅行者がはしかを持ち込むことで、ワクチンを2回接種しておらず抗体が十分でない人たちなどの間で、集団感染がいつ起こってもおかしくない状況です」
たしかに12日には、海外渡航歴がなく、感染経路が判明していない東京都の40代女性の感染も明らかになったばかりだ。
■24歳以上は、ワクチンを2回摂取していない可能性が高いので要注意
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はしかのワクチンは2回の接種が推奨されているが、定期接種が始まる前の1972年9月30日以前に生まれた人は、1回も接種していない可能性が高く、1972年10月1日から1990年4月1日生まれの人は1回しか接種していない可能性が高い。
「1回も接種していなくても、大部分の人は自然感染によって免疫を獲得していますが、感染したつもりで感染していない人もいます。また、接種が1回で、抗体が十分でない人もいるので要注意です」(上さん、以下同)
厚生労働省が発表した2024年3月末のはしかワクチン2回接種率は、全国平均で92%と高水準だが、国立感染症研究所の資料では、集団免疫を強化するには2回接種率95%以上が目標と記されている。
■はしかの感染力はインフルエンザの9倍!
はしかは、それほど感染力が強いのだ。全員が免疫を持っていないと仮定した場合、1人の患者が何人に感染させてしまうのかを表す基本再生産数は、インフルエンザが約2人に対し、はしかは12〜18人と極めて高い。
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「空気感染するため、抗体を持っていない人が感染者と同じ部屋、同じ電車の車両にいれば、ほぼ100%感染します」
感染すれば、10日ほどの潜伏期間を経て、風邪のような初期症状が現れる。
「2〜4日ほどは38度前後の熱が出たり、咳、くしゃみ、鼻水、目の充血などの症状があります。特徴的なのは、一度熱が下がった後、再び上がり、体中に広がる赤い発疹です」
通常は10日ほどで症状は落ち着くが、はしかで怖いのが合併症。国立感染症研究所によると、はしかによって約3割の人に合併症が引き起こされる。その半数を占めるのが肺炎で、高齢者にとっては死に至るケースも。
「赤ちゃんの場合、母体からの免疫がなくなる生後6カ月から、ワクチン接種できる1歳までに感染リスクが高まります。両親ばかりでなく、祖父母も気をつけなければなりません」
東京都ではしかの感染者が100人を超えた2019年の推移を見ると、4〜5月にかけて増加傾向が見られているように、春の流行が顕著だ。
■花粉症や寒暖差などで免疫力が落ち、人との交流が増える春が危険
「とくに春は人の移動が多いことが要因だと考えています。新生活のスタートでコミュニティにはじめて出会う人が加わったり、会食も増えます。4月からはじまる大阪万博も、はしか流行の大きなリスクになりうるでしょう」
そもそも春は、感染症にかかりやすい時期なのだという。
「新生活によって生活のリズムが崩れたり、ストレスなどで自律神経が乱れます。また寒暖差が激しくて体に負担がかかり免疫力も落ちます。さらに花粉症で目や喉、鼻の粘膜が炎症を起こしていれば、感染リスクが高まります」
そんな春に注意すべき感染症を、表にまとめた。
「風しんも春から夏にかけて増えるイメージです。はしかよりも症状がずっと軽く、なかには風しんに感染したことに気づかないケースもあるほどなので、それほど神経質になる必要はありません。ただし、注意したいのは妊婦。妊娠10週までに感染すると、極めて高い確率で胎児に心奇形や難聴、白内障などを引き起こします」
1962年4月1日以前生まれの人はワクチン接種をしていない可能性が高く、1979年4月2日から1990年4月1日生まれの人は個別接種のために、接種率が低い傾向があるといわれる。
■こどもの病と油断せず大人こそ注意が必要!
こどものときに感染することが多いのは、おたふくかぜ。
「ムンプスウイルスに飛沫感染、接触感染すると、耳下腺が腫れる耳下腺炎に。ほっぺたが腫れておたふくのように見えます。大部分は、症状自体は軽く終わりますが、まれに起こる髄膜炎、精巣炎、卵巣炎、心筋炎、脳炎、難聴など合併症が怖い。とくに成人が罹患すると重症化しやすくなります」
確率は低いものの、死亡も報告されているおたふくかぜだが、2016年の感染研の資料によると、50代のワクチン接種率は30%と低い。
「過去に感染歴がない、もしくは感染の有無がわからない、予防接種をしていない人などはワクチン接種を検討しましょう」
80歳までに3人に1人が発症するといわれる帯状疱疹も、春のような季節の変わり目に注意。
「水ぼうそうウイルスに感染すると、治った後も知覚神経の部位に潜み続けます。ストレスや加齢で免疫力が低下すると、ウイルスが再活動し、帯状疱疹を発症します。
発疹が出るなど皮膚症状が現れ、夜に眠れないほどの痛みが出たりします。怪談で有名なお岩さんも、帯状疱疹だという説があります。
今年4月よりワクチンが定期接種となり、65歳以上の人などを対象に、各自治体で接種費用の一部が公費補助されます」
昨年の春から秋にかけて山形県で感染拡大が確認されたのが、百日咳だ。世界的に見ても、昨年、ヨーロッパや中国で感染者が急増し、オランダでは感染者が5千人を超え、死者も出ている。
「ヒューヒューという独特の呼吸困難の症状があり、数週間、咳が続くのが症状。幼児へのワクチン接種が進められて予防できていますが、一部、接種をしていない人や免疫が十分でない人もいます」
春に活動的になるマダニが媒介するウイルスによって感染する、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)も注意したいところ。2023年には過去最高の133人の患者が報告されている。初期症状は発熱や全身倦怠感、消化器症状などだが、重症化して死亡することも。
「西日本を中心に発生しています。ワクチンもなく、免疫もないため、重症化しやすいといえるでしょう。春から活動的になるマダニに刺されないようにするため、山や森に入るときは長袖長ズボンを着用するなど対策が求められます」
50歳以上は特に、感染歴やワクチン接種歴を今一度チェックし、春の感染症予防につとめよう。
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