ブルペンで投球練習するロッテ・西野勇士[撮影=岩下雄太]※撮影2024年 ロッテ・西野勇士は新シーズンに向けて、このオフは河村説人、中森俊介、田中晴也といった後輩たちを連れて、アメリカのドライブラインで自主トレを行った。
西野を取材していると、“若手投手に負けないピッチングをしたい”と近年口にすることが多い。
「(佐々木)朗希とかに見劣りしないようないいピッチャーがいるので、小島(和哉)もそうだし。先発の競争が激しいですけど、それに勝ってまだまだ負けるつもりもないですし、勝ち抜いてしっかり若手に見劣りしない成績を残したいなと思います」(23年2月8日取材)。
「周りがどう思うかわからないですけど、(若手に)見劣りはしていないのかなと思います」(23年10月3日取材)
「(若手に)負けてたら投げられなくなっちゃうので。全然負ける気はないです」(24年2月3日取材)
「やっぱり先発ピッチャーは枠があると思うので、そこを取られないように若いも、歳が近いとか関係なく誰にも負けないつもりでやっています」(24年7月31日取材)
「競争だし、アメリカとかでもそうですけど、ちょっと年齢的なハンデみたいなところって結構少なくなってきているなと思っていて、戦わないといけない。じゃないとポジションもなくなっちゃうし、そういう意味では年齢を考えずに他の誰かよりもいいピッチャーでありたいと思ってやらせてもらっているつもりです」(24年9月8日取材)
若手をはじめ、先発の枠を争う投手に闘志を燃やしている中で、後輩たちを一緒に自主トレに連れて行ったのはなぜなのだろうかーー。
「それとこれは別というか、チームが強くあって欲しいし、自分一人だけで戦えるものではないと思っているので、野球って。1人でもいい選手が増えてほしい気持ちと、この歳になって自分のことばかり考えているのはチームのためにはならないと思う。そういうのも含め、向上心あるピッチャーの手助けはできることなら、できるだけやってあげたいと思っているので、それで(競争に)勝たないと意味がない。出し抜いて勝っても意味がないと思っているので、みんなで成長しながら、競争力を高めないとチームも強くならないし、自分自身も成長しないと思う。それはまた別かなと思います」。
34歳とベテランと呼ばれる年齢だが、その向上心は若い選手と変わらない。そのエネルギーはどこからきているのだろうかーー。
「この世界にいるので、それがないとダメだと思うし、若い時に育成だった時のハングリーさというのが僕の心の底にはあるのかなと思います」。
西野によると、西野が育成選手だった当時、支配下選手と育成選手で寮が違ったという。ただ、そこに関しては「野球のやる場所、トレーニングは一緒だったので、僕にとっては全然問題なかった」と話すが、「苦しかったですよ。投げたくても投げられないし」と試合で投げられなかった悔しさを今でも心に強く残っている。
投げたくても投げられなかった時代があったからこそ、誰よりも責任感を持ってマウンドにあがっている。「責任感は感じていますし、今は(先発ローテーションの)競争率が激しいので、その中で開幕(一軍)で投げるとなっている分、脱落するというか、残れない先発ピッチャーもいると思うので不甲斐ないピッチングだけはしないように。プレッシャーに感じるほどではないですけど、しっかりパフォーマンスを出さないとなと思っています」。プロ17年目――。今季も変わらず強い覚悟を持ってマウンドに上がる。
取材・文=岩下雄太