【プロ野球】巨人・浅野翔吾が振り返る、涙のエラー後の阿部慎之助監督のハッパ「もう一回、コケてこい!」

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2025年03月25日 10:21  webスポルティーバ

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巨人 浅野翔吾インタビュー

【阿部監督自ら指導する場面も】

 セ・リーグ連覇と日本一を目指す読売ジャイアンツでは、高卒3年目の浅野翔吾(20歳)が、外野の熾烈なレギュラー争いを続けている。

 高松商業高校から2022年のドラフト1位で入団した浅野は、1年目でプロ入り初本塁打を放つと、昨年の8月以降は1軍に定着。40試合に出場して打率.240、満塁弾を含む3本塁打で存在感を示した。

「プレッシャーはあまり感じていませんが、ドラフト1位で指名していただいたので、『絶対に活躍しないといけない』という思いです」

 そう意気込む若武者は、3度目の春を一軍で迎えることになった。

「毎年いろいろな経験をさせていただいているので、それらをきちんと自分のものにして、"いい感じ"でシーズンにつなげていきたいですね」

 2月15日から始まった沖縄・那覇キャンプでは、初日に沖宮(おきのぐう)を参拝。阿部慎之助監督と共に獅子舞に噛まれる大役を担い、笑顔を見せる場面もあった。だが、それらの喧騒や自身に向けられる眼差しを、浅野は冷静に受け止めていた。

「自分がすごいのではなく、ジャイアンツの選手だから注目してもらっていることを絶対に忘れてはいけませんし、惑わされてもいけない。(岡本)和真さんや(坂本)勇人さんくらいのレベルに到達すれば、ようやく"一流"だと胸を張れますが、今の自分はまだすべてにおいて課題があります。

 苦しいこともたくさんありますけど、自分では『たくさんの伸びしろがある』と捉えています。きちんと練習して、いい部分を増やしていきたいです」

 外野のレギュラーを目指す今季は、昨年に課題が見えた守備と、逆方向に強い打球を飛ばすことに重点を置き、充実したキャンプを過ごした。期間中は、阿部監督自らノックやバッティングを熱心に指導する場面も見られ、期待の高さもうかがえた。

「身体はしんどいですけど、指導してくださることは本当にありがたい気持ちでいっぱいです。日々の結果も大切ですが、ケガなく開幕を迎えることを重視していきたいですね」

【痛恨のエラーでの涙を乗り越え、初のビールかけを経験】

 さらなる飛躍を目指す浅野の姿を人一倍気にかけているのは、やはり高校からドラフト1位で入団し、今年でプロ19年目を迎える坂本勇人だったという。

「勇人さんは、いろいろと気にかけてくださいます。例えば、先日も練習中に『声が出てないぞ!』と声をかけてくださいました。一軍で過ごした時期が短い僕が野球に打ち込みやすいように配慮していただいていて、感謝しています」

 昨オフの納会では、阿部慎之助監督らと一緒に浅野が人生初のゴルフに挑戦する姿も見られたが、春季キャンプが始まってからはゴルフクラブを握っていないそうだ。

「毎日疲れて、動けなくなるくらい練習しているので、オフの日は足のふくらはぎをマッサージしたり、YouTubeや映画、アニメなどを見たり、高校時代の友人とたわいない電話をしながら、部屋でゆっくり休むようにしています。昨年もシーズン中に友達が応援に来てくれてうれしかったので、今年も忙しいなかでも球場に駆けつけてくれるみんなの前で活躍を見せられたらなと思っています」

 昨年は、開幕して間もない4月にいったんは一軍に昇格するも、9打数無安打と苦しんだ。浅野は「阿部監督が「『もし打たなかったらバイバイだな』と冗談交じりに話してくださり、気持ちが楽になった」と振り返るも、ファームで再調整をすることになった。そこで安定した成績を残せるようになり、8月12日に一軍に再昇格すると、同14日の阪神戦では満塁本塁打を放った。

 浅野のハツラツとしたプレーはチームに勢いをもたらしたが、9月21日の広島戦(マツダ)では、浅野のエラーで逆転負けを喫して涙に暮れる場面も見られた。

「確かにネガティブな気持ちになることもありますが、すぐに次の試合がやってくるのでいつまでも落ち込んでいるわけにはいきません。うまく気持ちを切り替え、モチベーションを保つことを心がけていました」

 優勝が間近に迫った9月27日の中日戦(東京ドーム)では、阿部監督に「『ビビらずやれ!もう一回、コケてこい!』と背中を押されて7番右翼手として先発出場。押し出しの四球を選んだ場面ではガッツポーズを見せた。マジックを1に減らしたチームは、翌日の対広島戦(マツダ)で4年ぶりのリーグ優勝を成し遂げ、浅野は人生初のビールかけに参加した。

 11月生まれの浅野は当時19歳だったため炭酸水での祝杯だったが、「高校卒業後にプロ入りして、2年目で経験できたことは本当に光栄なことだと思っています。これからも、たくさんビールかけができるように頑張っていきたいです」と、今後に向けた思いを語った。

「昨年の開幕前には、あそこまで多くの試合に出場させてもらえるとは思っていませんでした。2試合で6三振を喫したことも、僕のエラーで負けてしまった試合もありましたけど、阿部監督が我慢して起用してくださったことに感謝しています。去年の経験を生かしながら、今季も監督を胴上げできるように頑張りたいです」

【外野手のライバルたちと「一緒に活躍して優勝を目指す」】

 チームには切磋琢磨できる若手が多く、「僕がファームで過ごしている時に、活躍する姿を見て気持ちがたかぶりました」と話す門脇誠や中山礼都、捲土重来を期す秋広優人、新人の浦田俊輔や荒巻悠などと競い合いながらも、チーム力アップを目指す。

「誰かの不振を願うのではなく、僕もライバルの選手たちも一緒に活躍して、優勝を目指せる関係が理想だと思っています。チームとしてはリーグ連覇と日本一、個人としてはフルシーズンを一軍で過ごすこと、打点70を目標に頑張りたいです」

 オープン戦ではやや苦しむ場面も見せたが、3年目のシーズン開幕に向けて調整を続けている。

「バッティングも守備もまだまだですが、これからひとつずつレベルアップしていきたいです。やるべきことに取り組めば、自ずと結果もついてくるはず。昨年はミスも多く、首脳陣の信頼を得らなかったと思いますが、今年はしっかり結果と残したいです。気持ちが溢れるプレーで、皆さんの期待に応えたいですね」

 巨人に高校からドラフト1位で入団した野手の3年目のシーズンを振り返ると、松井秀喜は22本塁打、坂本勇人は打率3割を記録し、いずれもベストナインを記録している。そのふたりのように、近い将来に巨人の主軸としての活躍が期待される浅野は、どのような成長曲線を描くのか。さらなる高みを目指す3年目が幕を開けようとしている。

(井上温大:巨人の新エース候補 内海哲也の助言による飛躍と、日本一への決意インタビュー>>)

【プロフィール】

浅野翔吾(あさの・しょうご)

2004年11月24日、徳島県生まれ香川県出身。身長171cm、外野手。右投右打。中学3年時に全日本少年軟式野球大会に出場してベスト8に進出。U-15アジア野球選手権大会の日本代表に選出された。香川県県立高松商業高校に進学すると、2、3年時に夏の甲子園に出場し、3年時には打率.700、3本塁などの活躍でベスト8進出に貢献。WBSC U-18ワールドカップにも日本代表として出場した。高校通算68号本塁打を記録し、2022年のドラフト1位で巨人に入団。昨年までの2年で64試合に出場し、今季はさらなる飛躍を目指す。

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