【F1】角田裕毅はまたも戦略ミスで入賞ならず チームは「マシンの速さに浮かれて」欲を出した

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2025年03月25日 10:30  webスポルティーバ

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F1第2戦・中国GPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 第2戦・中国GP決勝。角田裕毅(レーシングブルズ)は9番グリッドからのスタートとなった。

 スタート直後、前方ではフェラーリ勢同士が接触し、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)もポジションを落とす。その混乱をうまくすり抜け、ターン6からターン9まで角田はサイドバイサイドで僚友アジャに仕掛けて前に出た。

 この攻めで角田はチームメイトに先行し、レース戦略面で優位に立つという非常に大きな価値をつかみ取った。

 なぜなら、このレースではタイヤのグレイニング(表面のささくれ)に起因する磨耗が厳しく、ラップタイム低下が顕著だと予想されていたからだ。タイヤの"タレ"が大きいということは、新品タイヤを履けばタイムアップの幅が大きく、相手より1周早くピットインすることができれば、大きなタイムゲインを得て逆転が可能になる。

 今回のレースを考えるに、1ストップ作戦で走りきるのは難しく、2回のピットストップでそういった争いが繰り広げられることになると予想された。

 10周目に後方のピエール・ガスリー(アルピーヌ)が仕掛けてくると、レーシングブルズは翌周に角田をピットインさせて、中団トップのポジションを守った。

 アジャを先にピットインさせていれば、翌々周ピットインすることになる角田はエステバン・オコン(ハース)にアンダーカットされてしまっていただろう。アジャはポジションをひとつ犠牲にすることになったが、チームとしては正しいピット戦略を敢行したと言えた。

 スタートからハードタイヤのまま走り続けるランス・ストロール(アストンマーティン)を除けば、角田は実質的に7位、アジャは10位を走行。そのままいけばダブル入賞は確実な展開だった。

 しかし予定外だったのは、第2スティントに履き替えたハードタイヤがミディアムに比べて、予想以上に耐久性が高かったことだった。

【鬼神の走りで追い上げた矢先に...】

 各チームとも残り40周以上をこのハード1セットで走りきることを模索し始めるなか、レーシングブルズが突然動いた。

 33周目にアジャ、そして35周目に角田がピットインし、2回目のピットストップを敢行。これで集団の最後尾まで後退したが、ライバルたちは誰ひとりとして動かなかった。レーシングブルズの2台だけが2ストップ作戦を採り、わざわざ自分たちから入賞圏外へと出て行ってしまったのだ。

 1回のピットストップで失うのは約24秒。これを残り21周で取り戻せなければ、損をして「戦略ミス」ということになる。新品タイヤに履き替えて1周で1秒以上速く走れるならそれも可能だが、24周古いタイヤを履くオコンとのペース差はそこまで大きくない。

 そして何より、オコンとの間には7台ものマシンが並び、この程度のタイヤ差ではオーバーテイクしていくことは容易ではない。そのたびにタイムロスを強いられる。

 それでも角田はあきらめず、せめて12秒前方の10位ガスリーを捕まえて1ポイントでも持ち帰ろうと、鬼神のような走りを見せた。

 ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)を抜き、カルロス・サインツ(ウイリアムズ)の背後に迫ろうとした。その矢先、フロントウイングのフラップが突然、壊れて万事休す。ピットに戻ってノーズ交換をせざるを得ず、角田のレースは実質的にここで終わってしまった。

「入賞のチャンスは、なくはなかったと思います。難しかったとは思いますけど、せめて最後までしっかりと走りきりたかった。

 ペースは昨日のスプリントレースほどあったわけではなかったんですけど、1ポイントでもポイントは持ち帰ることはできたレースだったと思います。僕たちはそういうレースをするべきだった」

 そう言って、角田はチームの戦略ミスを責めたくなる気持ちをグッとこらえ、ミスそのものを責めるのではなく、ミスを生んでいる根本の原因を突き止めて改善しなければならないと口を結んだ。

【最優先すべき目標がブレている】

 角田は言葉を選んで言う。

「こういう戦略になった背景は、正直に言ってわからなくもないし、少し理解できるところもあります。おそらくハース(オコン)のことを意識しすぎてしまったのかなと思います。

 レース前の時点では、ハードタイヤがここまでいいとは思っていませんでした。今日はスプリントレースの時ほどのレースペースがなく、ハースもけっこう速かったので、抜かれることを受け入れて8位か9位狙いに切り替えるべきだった。いずれにしても、フロントウイング(のダメージ)で終わってしまったのが残念です」

 1ストップで走りきるのが難しいなら、前をいくストロールよりも先にピットインしなければ、最後まで彼に抑え込まれることになってしまう。そして後方からはオコンが迫り、先にピットインされれば、アンダーカットされる射程圏内に入られてしまう。

 そんななかで積極的に自分たちから動いたことが、裏目に出てしまった。

 しかし根本的な問題は、タイヤの磨耗や性能低下、ペース差をリアルタイムで正確に分析・把握できていないタイヤエンジニアリングの技術不足だ。その結果として、レーシングブルズだけが2ストップ作戦という間違った戦略選択をしてしまった。開幕戦オーストラリアGPも、昨年表彰台を逃したサンパウロGPも、このチームだけがほかと違うことをやって失敗している。

 そして、2台のうち1台だけでも1ストップ作戦に賭けていれば、どちらに転んでも1台は入賞できたはずだった。角田をピットインさせたのは、オコンとストロールの前にとどまって中団トップを死守したいという、欲がまた出たからだ。マシンの速さに浮かれた結果、確実に入賞できる戦略を採るべしという、本当に最優先しなければいけない目標がブレた。

 戦略ミスの内容はさまざまでも、本質的な意味では同じミスを繰り返している。その根本的な原因にメスを入れなければ、本当の意味での改善は果たせないだろう。

【マシンの能力を無駄にしている】

 角田は冷静に、前を見据えて語る。

「この2戦で(獲れるはずだった)大量のポイントを獲り逃しています。こういうタイトな争いのシーズンは1ポイント1ポイントが本当に大事になってくるわけで、マシンのペースを最大限に引き出して結果につなげることが重要なんです。

 今はマシンのペースがあるにもかかわらず、それを無駄にしていて、パフォーマンスを最大限に結果につなげることができていません。もう一度、しっかりと集中し直して、ここから先のレースではポイントを獲っていく必要があると思っています」

 マシンには、中団トップを争う速さがある。

 チームリーダーとして、今こそ角田裕毅の手腕が問われることになる。

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