U-20日本代表を率いる船越優蔵監督(手前)[写真]=ムツ カワモリ 3月17日からスペイン遠征を行なっているU-20日本代表は24日、バレンシア州ベニドルムにてU-20アメリカ代表(以下、米国)との親善試合を戦った。結果は1-1の引き分け。90分を通して米国にボールを支配されたが、我慢強い守備と少ないチャンスを活かして実際に得点を奪う試合巧者ぶりが手応えとして残る試合となった。
この日のU-20日本代表のスタメンは以下の通り(システムは4-2-3-1)。
GK:中村圭佑(東京ヴェルディ)
DF:布施克真(日本大学藤沢高)、土屋櫂大(川崎フロンターレ)、喜多壱也(京都サンガF.C.)、小杉啓太(ユールゴーデン)
MF:石井久継(湘南ベルマーレ)、大関友翔(川崎フロンターレ)、保田堅心(ヘンク)、平賀大空(京都サンガF.C.)、佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)
FW:後藤啓介(アンデルレヒト)
立ち上がりからプレスが上手くはまらず米国にボールを保持される展開が続いたものの、前半20分に相手ボランチのわずかなコントロールミスをついてMF大関がボールをカットすると、そのままドリブルで持ち運び得点。チームとしてワンチャンスをものにするしたたかさを示した。
その後も攻撃的かつ流動的な米国のサッカーに圧倒され、ピンチを招くもGK中村の好セーブとDF陣の体を張ったシュートブロックで失点を防ぎ前半は1-0で折り返し。前半終了間際にFW後藤が負傷交代し、徳田誉(鹿島アントラーズ)が入り後半開始からは西原源樹(清水エスパルス)が佐藤に代わり投入される。
後半も流れは米国で立ち上がりの46分、52分と立て続けに決定機を作られるがここもGK中村がビッグセーブを連発。しかし、57分に中央突破から失点。バルセロナ、ベンフィカ、ノッティンガム・フォレストといった欧州強豪クラブ所属の主力がいる米国は持ち味のフィジカル、パワーの土台に洗練された技術、戦術が乗った手強いチームで、試合を通じて日本は局面でもグループでも劣勢に立たされ続けた。
日本の船越優蔵監督も何とか流れを引き寄せようと、62分にMF嶋本悠大(清水エスパルス)、FW道脇豊(ベフェレン)を投入し、75分には徳田までもが負傷してしまいMF小倉幸成(法政大)を入れて道脇のワントップで勝負をかけるも米国ゴールを脅かすようなチャンスは作れず1-1のまま試合終了。引き分けのスコアであったため、試合後はPK戦が行われ、PK戦は日本が勝利した。攻撃面では課題を残すも守備では確かな手応えを掴む試合となった。以下、試合後の船越優蔵監督の談話。
「手応えはそれほどありません。もうちょっとボールを持たないといけないな、というところはあったので。課題がよく見えた試合でした。ただ、そこで(PK戦で)勝ちきれたというところは、日本人らしさというか、耐え忍ぶというか、そういうところは出せたと思います」
「アメリカのやり方はわかっていたのですが、それに対してちょっと臆病になってしまった。例えば、アンカーの6番に対して誰がプレスにいくのかというのを本当は前半の途中で変えたかったんですが、ベンチからそこを言ってもなかなか通らなかったのでハーフタイムで変えました」
「保持では前線から相手がプレスをかけてくる、フィジカル的な能力で多分彼らが上回ってくるので、ハイプレスが来るのはわかっていました。今回の遠征では、サイドバックが低い位置を取ってしっかり相手を引き出してその背後にスペースを作って攻撃する形を積極的にトライしました」
「(スペイン遠征の総括は)選手たちにも言ったんですけど、これはアジアの戦いとは別物だと。アジアの戦いではボール保持は6割以上。ただ世界に行くと違います。これはデータも出していて、カタールW杯でスペインに勝った時の日本の保持率は17%、ドイツ戦は31%、東京五輪でスペインに負けた時も40%、U―17W杯でスペインに負けた時も30%、先日U−2-フランス代表とやった時も33%くらい」
「でも、それをどう考えるかだと。持たれているんじゃなくて持たせているんだと。フランス戦もシュート数は我々の方が多かった。12本打ちました。オン・ターゲットもボックス内の侵入もこちらの方が多い。ボールを持てないところでも(試合を)コントロールできる、というようなメンタリティを持たないと日本人としてダメなのかなと。目的はやはり試合に勝つことだ、というところは選手たちに伝えました」
取材・文=小澤一郎