写真決勝は2大会連続の愛知県勢対決に
穏やかな陽気に包まれた岐阜県関市のグリーン・フィールド中池で行われた「JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN東海」は、2大会続けて愛知県勢同士での決勝となり、名古屋グランパスU-12がPKにまでもつれる激闘を制して優勝。名東クラブとともに全国大会出場を決めた。
JA全農杯全国小学生選抜サッカーは、12分×3ピリオド制の独自ルール。第1ピリオドと第2ピリオドは異なった8人が出場。第3ピリオドは制限がなく、交代で退いた選手でも再び出場できる「自由交代制」が採用されている。多くの選手の出場時間が確保され、チームの総合力や戦術も勝敗を分けるポイントとなる。
決勝に進んだのは、1回戦でSAKAE FC/SLA(三重)を、2回戦でFC STELLA焼津(静岡)を点差以上の接戦で制した名古屋グランパスU-12と、1回戦で清水エスパルスU-11清水をPK戦で下して波に乗った名東クラブが対戦。両チームは過去に何度も対戦経験のあるライバル同士。名東クラブは愛知県大会決勝のリベンジを、名古屋グランパスU-12は、昨年この大会で準優勝に終わった悔しさを晴らしたいと強い気持ちで決勝のピッチに立った。
名東クラブの粘り
「相手の第2ピリオドは5年生が多いと聞いていたので、第1ピリオドは耐えながら戦っていこう」と話していたという名古屋グランパスU-12。それでも個人の技術で上回り6番・菊谷奏人のドリブル突破や、13番・松本修史朗くんのミドルシュートなどで名東クラブのゴールを襲い試合の主導権を握っていった。
しかしその終了間際に反撃に出た名東クラブは、11分にCKからシュートまで持ち込んでリズムを作ると、12分に中盤の連係から右サイドでフリーになった8番・川端惺太郎が、「全国出場が決まっていたので緊張しなかった。中盤からボールが出てきてうまくボレーで打てて良かった」と、強烈なシュートをゴール上に突き刺して先制ゴールを奪った。
第2ピリオドで複数得点を狙っていた名古屋グランパスU-12だったが、ボールのポゼッションでは圧倒したものの、肝心のゴールは「ゴール前でフリーになって、(齋藤)絆からパスが来て逆足だったけど『押し込むしかない』と思った」と、9番の山路康雅が冷静に右隅に流し込んだ1点のみ。名東クラブは攻守の切り替えが速く、守備でも全員が集中して守り切った。
激闘はPK戦の末に決着
勝負の第3ピリオドは一進一退の攻防が繰り広げられた。8分の名東クラブ8番・川端のシュートは惜しくもGKの正面に。11分の名古屋グランパスU-12の13番・松本のシュートは惜しくもサイドネット。ともにチャンスを作りながらもあと1点が奪えない。両チームのGK坪井蓮斗(名古屋グランパスU-12)とGK中川昇空(名東クラブ)の好守も光った。
結果、第3ピリオドに得点は生まれずPK戦に突入。2-2で迎えた名古屋グランパスU-12の3人目のキッカー、9番・山路が「緊張したけど、絶対に決めると強い気持ちで蹴った」というシュートがゴールネットを揺らして、名古屋グランパスU-12が今大会を制した。
決勝に進んだ両チームは、5月に神奈川県で開催される「JA全農チビリンピック2025 JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会」に東海代表として出場する。
名古屋グランパスの3番・間瀬哉太は「この大会は失点が多かったのでディフェンスを立て直して、どこのチームにも『名古屋グランパスはすごい』と思わせるようにしたい」と、名東クラブの川端くんは「ハットトリックを決めて、チームを優勝させたい」と目標を語り、眼を輝かせた。
試合後コメント
■浅野浩孝監督(名古屋グランパスU-12)
決勝戦は、今日初めて先制点を奪われましたが、選手たちは気持ちをしっかりと切り替えて、よくやってくれたと思います。
僕自身2月にこのチームを率い始めたばかりで、大会の形式も違って学ぶべきところも多くありましたが、選手たちはゴールを目指してアグレッシブに、ピッチ上では自分たちが主体的に、楽しんでプレーするという目標をもってやってくれたと思います。
まだまだ大人が手助けをしないといけないところもありますが、実直で真面目やれる子どもばかりなので、こういう大会を経験してどんどん成長していってほしい。全国大会では去年の成績(ベスト16)を上回れたらベストですけど、なによりも成長することが大事だと思っています。
■山路康雅(名古屋グランパスU-12)
PK戦は緊張したんですけど、最後は絶対に決めると思って蹴りました。
同点ゴールはゴール前でフリーになって逆足だったんですけど、絶対に押し込むしかないと思いました。
全国大会ではチームを勢いづけるようなシュートを決めたいし、全国大会まであと1ヶ月あるけど、チームの団結力を高めてピッチ外の振舞い方も大事になってくると思うので、そこも高めたい。このチームはみんな明るくてレベルが高いのが特長です
■間瀬哉太(名古屋グランパスU-12)
決勝戦は先制されたけど、絶対に取り返そうという気持ちになりました。
第2ピリオドでもっと点を取りたかったけど、PK戦ができたのはいい経験になったと思います。
この大会は失点が多かったので、全国大会ではディフェンスのところを直して、どこのチームにも『名古屋グランパスはすごい』と思わせるようなチームにしたい。
個人としてはチームを引っ張って勝利に導くプレーをしたい。目標は優勝です。
■平子陽亮監督(名東クラブ)
子どもたちは準決勝で全国大会出場を決めて、決勝ではリラックスをして戦ってくれました。
決勝戦の前に『いい機会だからチャレンジしよう』ということだけを伝えましたが、一生懸命やってくれたことが良かったし、いい守備をして先制点を奪えたことは一つの成果だったと思います。
あと、攻守の切り替えの部分を求めて積み上げてきて、それを発揮できたこともすごく良かったですし、今やれる100%のプレーをしてくれたと思います。
全国大会でも特別なことはなくいつも通りやっていることを積み上げていくだけだし、日々の日常を大事にしながら、小学生年代なのでいろんなことを経験して、やってきたことが発揮できるように意識をすることが大事。選手が大きく成長していく機会になればと思っています。
■川端惺太郎(名東クラブ)
先制点は中盤に人と連携でボールが出てきて、うまくボレーシュートが打てて決まって良かったです。
初戦の(清水)エスパルスが強敵で、負けると思っていたけど、みんなが気持ちを出して頑張って、意外に勝ち進むことができました。
決勝はあまり緊張しなかったです。全国が決まっていたので気持ちとしてはリラックスして臨めましたし、思い切ってやるだけでした。
全国大会ではハットトリックを決めて、チームが優勝できるように頑張りたいと思います。
取材・文・写真=斎藤孝一