
伊東勤インタビュー(前編)
昨シーズン、得点力不足に苦しみ、最下位に沈んだ埼玉西武ライオンズ。新監督に西口文也氏を迎え、チームは再建を図る。投手力を軸に戦うスタイルを予想されるなか、補強された外国人選手や若手の台頭はチームを変えることができるのか? かつて西口監督とバッテリーを組んだ伊東勤氏が、新戦力や課題、そして期待の選手たちについて語った。
【得点力部不足を解消できるか】
── 伊東さんは現役時代、新監督の西口さんとバッテリーを組まれていました。どんな野球をやると思いますか?
伊東 投手出身なので、やはり投手力を中心とした守りを前面に押し出した野球になると思います。ただ、昨年の西武の課題は得点力不足でした。得点力がアップすれば、昨年のように投手陣に負担がかかることも少なるのではないかと。
── 昨シーズン、チーム防御率はリーグ4位でしたが、チーム打率、チーム本塁打数はともにリーグワーストでした。
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伊東 ヘッドコーチには鳥越裕介氏が就任し、昨年の記録的なシーズン91敗の悔しさを忘れぬために背番号「91」を付けたそうです。また、野手チーフ兼打撃コーチには、現役時代に長打力と機動力を兼備した仁志敏久氏が就任しました。他球団出身のコーチが、どうやって「1点をもぎ取り、守りきるか」というところに注力し、新風を吹き込むことになると思います。
── 攻撃陣ですが、ドラフト2位の大卒ルーキー・渡部聖弥選手が、オープン戦では6番・レフトで出場を続けていました。
伊東 広陵高(広島)2年春の選抜に、同級生の宗山塁(明治大→楽天)とともに出場しています。大商大時代は首位打者、ベストナインを5度受賞するなど、(関西六大学)リーグ屈指の好打者として活躍しました。しかも遠投110メートルの強肩に、50メートル6秒2の俊足も兼ね備えています。
オープン戦で見たのですが、1球目から思いきりよくバットを振っていました。泥臭くボールに食らいついていくタイプで、面白いですよ。同じパ・リーグのチームに入った宗山へのライバル心もあるでしょう。開幕からスタメンで使うと思いますね。
── 野手では、新外国人選手を2人補強しました。
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伊東 オリックスからレアンドロ・セデーニョが加入しました。昨年15本塁打。けっこういい場面で打っていたイメージがあります。打率3割、30本塁打まではいかないでしょうが、試合に出続けることができればそれなりの成績を残せると思います。
── もうひとりのタイラー・ネビン選手はどうでしょうか。
伊東 大谷翔平選手のエンゼルス時代のフィル・ネビン監督の息子です。アメリカでは才能は開花しませんでしたが、日本で実績を残して、再びメジャーでプレーする可能性はあるかもしれません。27歳ながら推定年俸2億5000万円ですから、球団編成部もそれなりに活躍を見込んでいるのだと思います。
【新外国人投手は機能するか?】
── これまで西武を支えてきたリリーバーが昨年末にこぞって去りました。投手も新外国人を2人獲得しました。
伊東 アメリカ出身のトレイ・ウィンゲンターとドミニカ出身のエマニュエル・ラミレスの、ともに今年31歳になる投手です。増田達至が引退し、アルバート・アブレイユが退団、本田圭佑が現役ドラフトでオリックスに移籍。だから、新外国人の2人は"後ろ(リリーフ)"をまかされるということです。
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── 捕手出身の伊東さんの目から見て、日本で活躍できそうですか?
伊東 うーん......私もこれまで数多く、前評判の高い外国人選手と一緒にプレーし、監督として起用してきましたが、こればかりはシーズンが始まってみないとわかりません。力があって、ブルペンではすばらしい球を投げていても、マウンドに立った途端に自滅する外国人投手をたくさん見てきました。1点もやれない緊迫した打面で、細かな牽制やクイックなど、やるべきことが多くなって、打者に集中できないといったことがよくあります。
── 外国人投手が機能すれば、リリーフは楽しみですね。
伊東 平良海馬が、今年は先発からリリーフに再転向の予定です。外国人2人を含めて7回、8回、9回をどういう順番がいいか、あらためて試しているようです。
── 今季、伊東さんが注目する新戦力は誰ですか?
伊東 現役ドラフトでロッテから移籍した平沢大河です。仙台育英出身の大河は、私がロッテ監督時代の2015年のドラフトで1位指名した選手です。1年目から一軍で起用し、2年は50試合。私が退団した2018年に112試合に出場しましたが、レギュラーを獲りきれませんでした。でも、打撃はすばらしいです。今年でプロ10年目、この移籍を最後のチャンスだと思って、死に物狂いで頑張ってもらいたいですね。
── ほかに目を引く選手はいますか?
伊東 ソフトバンクに育成ドラフト14位で入団し、支配下登録され、昨シーズン一軍で24試合に出場した仲田慶介。今年、西武でも最初は育成契約でしたが支配下登録されました。練習の虫で、両打、内外野を守れるユーティリティプレイヤーでもあります。チームに勢いをつけてくれる選手として期待しています。
── 西口監督は「レギュラーは源田壮亮だけ」と言っていました。
伊東 言い換えれば、それだけチャンスがあるということです。シーズンを戦うなかで、レギュラーが固定されていけばいいですよね。7年連続ゴールデングラブ賞の源田にしても、今年で32歳になりました。まだまだ若いですが、チームとしては後釜としてドラフト1位で齋藤大翔(金沢高)を獲得しました。将来のことも考えて、チームづくりをしていきたいですね。
つづく
伊東勤(いとう・つとむ)/1962年8月29日、熊本県生まれ。熊本工高3年時に甲子園に出場。 熊本工高から所沢高に転入し、転入と同時に西武球団職員として採用される。 81年のドラフトで西武から1位指名され入団。強肩と頭脳的なリードでリーグを代表する捕手に成長し、西武の黄金時代を支えた。2003年限りで現役を引退。04年から西武の監督に就任し、1年目に日本一に輝く。07年限りで西武の監督を退任し、09年にはWBC日本代表のコーチとして連覇に貢献。その後も韓国プロ野球の斗山のコーチを経て、13年から5年間ロッテの監督として指揮を執り、19年から21年まで中日のコーチを務めた