
クックパッドでは先日、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんをお迎えしてオンラインワークショップを初開催しました。塩麹や甘酒、麹漬けなど、毎日のごはんにすぐ取り入れられる麹の使い方をたっぷり解説。その内容が「面白すぎる!」「料理が楽しくなる!」と参加者から大好評を集めました。メンバー限定で開催したワークショップの内容を、少しだけこちらでご紹介します。
発酵は魔法か科学か⁉︎
小倉ヒラク(以下、ヒラク):発酵というと、なんとなく「食べ物をおいしくする魔法」みたいに思われがちですが、実は科学がしっかりと関わっているんです。
身近なヨーグルトを例に考えてみましょう。牛乳の中には糖分であるグルコース、つまりブドウ糖が含まれています。乳酸菌はこのグルコースを吸収して、自分たちのエネルギー源にします。その過程で、乳酸といういわば「乳酸菌の排泄物」を出します。この乳酸がヨーグルトの独特の酸味を生み出し、牛乳のイヤな臭いを消しておいしくしてくれるんですよ!
ヒラク:ちょっと難しいですが、化学式で表現するとこうなります。
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麹菌が持つ酵素とその役割とは
ヒラク:今回のワークショップのテーマである「麹菌(コウジカビ)」は、発酵菌の一種で、いろいろな酵素を持っています。この酵素にこそ食品をさまざまに変化させる力があるのです。
例えば、麹菌に含まれる「アミラーゼ」と「プロテアーゼ」という二つの酵素が特に大事な役割を果たします。アミラーゼは糖分を作り出し、プロテアーゼは旨味を引き出します。これのおかげで、食品は保存しやすくなるし、栄養価もアップして、さらにおいしくなるんですよ。
参加者による素敵なレシピも!
ワークショップに参加したクックパッドユーザーの方が考案したレシピの中から、小倉ヒラクさんが特に注目した2つのレシピを紹介します。家庭で簡単に楽しめるアイデアが満載ですよ。
絶品塩麹チャーシュー
ヒラク:このチャーシューは本当におすすめです。塩麹を使うことで、風味が豊かになるのに加えて、酵素の力でお肉のタンパク質が分解されて食感がとても柔らかくなるのがポイントですね。揉み込んでから冷蔵庫で一晩寝かせると、じっくり発酵が進みますよ。また、時間がないときには常温で数時間漬け込む方法もあります」
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しっとりイカゲソの塩麹焼き
ヒラク:イカゲソってちょっと固いですが、塩麹で漬け込むことで独特な食感を柔らかくし、旨味も増してしっとりとした仕上がりになります。これは本当に皆さんに試してみてほしいレシピです!
おつまみにもぴったりなイカゲソのレシピは、参加者の皆さんからも「作ってみたい!」との声が多数寄せられました!
麹の疑問いろいろ
知れば知るほど発酵と麹の深みにハマって、疑問も湧いてくるもの。ワークショップ後半の質疑応答の部分も少しご紹介します。
塩麹を使って調理するときのポイントや注意点は?
ヒラク:塩麹で肉や野菜、ゆで卵を漬け込む際は、“揉み込む”ことで味の浸透が良くなります。温度が高いほど発酵が早く進むため、温めた場所で短時間漬け込むのも一つの方法です。25~30度くらいが、腐敗のリスクも少なくて良いですね。
素材が塩辛くなりすぎた場合は、食材を水でサッと洗ったり、キッチンペーパーで塩麹を拭き取って塩麹の塩分濃度を下げましょう。通常は10-12%ですが、発酵のさせ方がわかれば6-8%でも塩麹がつくれます。
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醤油麹と塩麹の使い方の違いはありますか?
ヒラク:醤油麹と塩麹は、「発酵の出発点」が違います。
塩麹は、甘さと旨味がいい感じにミックスされています。アミラーゼとプロテアーゼという酵素が活躍して、食材の旨味をぐんと引き出します。それに甘味も含んでいるので、調味料として使うだけでなく、食材を柔らかくする目的でもよく使われています。鶏肉や魚に漬け込むと、奥深い味わいを楽しめますよ。
醤油麹は、もともと醤油を手作りする際に生まれる「もろみ」に食品を漬ける方法から発展しました。風味がしっかりしていて、旨味を思いっきり楽しむのにぴったりです。豆腐や魚、肉にそのままかけたり、漬け込んで使うととてもおいしいです。発酵のおかげで食材に深いコクが生まれます。
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発酵レシピチャレンジ開催中
テーマは「塩麹漬け」。ここで紹介した麹漬けの基本を踏まえて、ぜひいろいろな料理で発酵の力を楽しんでみてください。あなたの塩麹漬けレシピのアイデアをお待ちしています!
小倉ヒラク
発酵デザイナー / アートディレクター /「発酵デパートメント」オーナー
ポッドキャスト『#ただいま発酵中』YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。 東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市に発酵ラボをつくる。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。
絵本&アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。著書『発酵文化人類学』『オッス!食国 美味しいにっぽん』『アジア発酵紀行』『日本発酵紀行』など。