画像提供:マイナビニュース日産自動車は3月25日、「ターンアラウンド」の取り組みついてのメディア向け説明会を開催した。これから登場する新型車やマイナーチェンジモデル、2025年度から2026年度にかけて投入を予定する新技術などを知ることができたのでレポートしていきたい。
日産次期社長は何を話したのか
日産では今後の新商品・新技術を通じ、業績の向上、顧客ロイヤルティの向上、新規ユーザーの獲得、収益性の向上と持続可能な成長を目指すとする。商品ラインアップについては、パワートレインに対するニーズの多様化に対応するため、車種ごとにハイブリッド技術(e-POWER、プラグインハイブリッド含む)、次世代BEV(電気自動車)、先進的ガソリンエンジンを設定するという。
プレゼンテーションで挨拶に立ったチーフパフォーマンスオフィサーのギョーム・カルティエ氏は、「現在の日産には、外にも中にも問題があるのは知っています。全てが完璧ではありませんので、まずは“謙虚”になることが必要です。商品戦略については固定費の削減と収益性の向上を目指し、市場ごとに最適な商品を導入し、パワートレインの多様化や新型車の投入でユーザーのさまざまな嗜好を満たす幅広い選択肢を提供します。さらに、日産とインフィニティをより差別化します」とした。
続いて登壇した次期社長のイヴァン・エスピノーサ氏は、「誇りを持って日産を前進させたいと思っており、そこではバランスが命となります。今後2年間で新型『リーフ』や新型『マイクラEV』を投入するとともに、SUVラインアップを刷新し、さらには次世代e-POWERによって新次元の洗練された高効率な走りを実現します。最高の日産を体現する商品に投資し、日産を支えてくれる世界中の熱いファンをワクワクさせる体験をお届けすることを約束します」とコメントした。
次の「リーフ」はどんな電気自動車?
会場では2025年にデビューする3代目の新型「リーフ」がお披露目された。グローバルデザイン担当のアルフォンソ・アルベイザ氏は、「新型リーフは高い目線で視認性が良く、広い空間を持つとともに、ノーズが低く空力の良いデザインとしたCMF EVプラットフォームを採用するEVクロスオーバーモデルです。大径19インチホイールやパノラミックガラスサンルーフを初採用しており、北米仕様はNACS充電ポートを搭載し、日産EVとして初めてテスラのスーパーチャージャーネットワークにアクセス可能となります。3-in-1パワートレインにより、効率的なエネルギーマネジメント、優れたパッケージング、走行性能向上、現行比で大幅な航続距離改善が実現できました」と説明した。
水色の新型リーフは「アリア」に似た滑らかなラインを持つボディが特徴的だった。ダックテールのような形状の後部に採用したリアライトには、ホログラム技術を活用しているという。
第3世代e-POWERについては、新型1.5Lエンジンを採用した5-in-1システムは最新EVパワートレインと主要部品を共有しており、第2世代に比べて高速走行時の燃費を最大15%向上させ、これまで弱点だったポイントを克服したそうだ。2025年度後半に欧州で「キャシュカイ」に、2026年度には北米の次世代「ローグ」と日本市場向け大型ミニバン(ご存知のあれです)に搭載する予定だという。
地域別に投入する主要モデルは以下の通り。
○北米・カナダに投入するモデル
次世代EVとハイブリッド技術を搭載した10種類以上の新型車とマイナーチェンジ車を投入する(インフィニティ含む)。
2025年度には新型「リーフ」を発売。SUV「ローグ」にはブランド初のプラグインハイブリッドモデル(PHEV)を追加する。
コンパクトセダン「セントラ」の次世代モデルとミドルサイズSUV「パスファインダー」のマイナーチェンジモデルを投入。インフィニティでは3列シートラグジュアリーSUV「QX60」のマイナーチェンジモデルを投入し、フルサイズSUV「QX80」にスポーツパッケージを追加する。
2026年度には4代目新型「ローグ」の生産を開始。新世代e-POWERモデルを初めて提供するとともに、PHEVと高効率ガソリンエンジン搭載モデルを投入する。インフィニティでは新型クロスオーバークーペ「QX65」を発売する。
2027年度後半には米ミシシッピ州キャントン工場で新型EVの生産を開始する。
○日本に投入するモデル
2025年度には日本市場向けの新型「リーフ」や新型軽自動車など、多様な新型車とマイナーチェンジ車を投入。2026年度には第3世代e-POWERを搭載した新型大型ミニバンを投入する。
○欧州に投入するモデル
2025年度にはルノーとの協業で生産する新型コンパクトEV「マイクラ」、新型「リーフ」、第3世代e-POWER搭載のコンパクトクロスオーバー「キャシュカイ」を投入する。2026年度には大胆なデザインと先進的コネクティビティを持つ新型「ジューク」EVを4車種目の乗用車EVとして投入する。
このほか、ラテンアメリカ、中東、インド、オセアニア、アフリカにおいてもさまざまな車種を投入していく予定だ。
エスピノーザ次期社長に気になることを聞く
説明会の後に行われたメディアセッションでエスピノーサ次期社長は、「すばらしいクルマを作っている日産の今後の計画を提示することで、社員の皆さんにも希望を持ってもらいたい」と今回のイベントの開催目的を語った。「25年前にメキシコで見たS30型Zに憧れて日産に入った」と話す新社長は、どうやら大のクルマ好きらしい。
説明会では「次期GT-R」などのハイパフォーマンスモデルについての言及はなかったものの、こうしたモデルは「ブランドそのもの」であり「復活が必要」で、「アイデアはたくさんある」との話が聞けた。どう実現していくかについては検討中とのことだ。
また、中東などで人気の大型SUV「パトロール」については、「日本導入があるかも」と含みを持たせた。
EVシフトが急速に進展するかと思いきやここへきて減速し、ハイブリッド車(HEV)への世界的な移行が進むなど自動車を取り巻く環境は変化のスピードが早い。こうした状況の変化に対応するため、日産では、これまで新車デビューまでに55カ月もかかっていた開発期間を37カ月(最短で30カ月)に短縮できるようにするという。
また、一旦は白紙に戻ったホンダなどとの協業については、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)のCCS(コネクテッドカーサービス)領域ではどこの会社もやることが同じなので、可能性はある(吉澤隆・電子技術担当常務執行役員)とのことだった。
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)