【プロ野球】緒方孝市が今季の広島を分析 ルーキーや新外国人たちへの期待、課題の得点力不足について語る

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2025年03月27日 10:21  webスポルティーバ

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緒方孝市インタビュー

今季の広島について

 昨季は9月に歴史的な大失速があり、首位から4位に転落した広島。雪辱を期す今季のチーム状態について、走・攻・守三拍子揃った名選手として長らく広島で活躍し、監督として球団初のリーグ3連覇を成し遂げた緒方孝市氏はどう見ているのか。新外国人選手や期待の若手選手、ルーキーなどの評価を中心に分析してもらった。

【野手陣は好調の二俣や、2人の外国人選手に期待】

――キャンプやオープン戦から、チーム状態をどう見ていますか?

緒方孝市(以下:緒方) 一番感じるのは、近年にないくらい投打ともに若手の選手が出てくるシーズンになるんじゃないか、ということです。それと、昨季は開幕2戦目に外国人選手が離脱し、以降は外国人選手不在になってしまうなど、ここ2年は外国人選手に泣かされましたが、今季に加入したサンドロ・ファビアンとエレウリス・モンテロは期待できます。

――それぞれの特長をどう見ていますか?

緒方 モンテロは長打を打てますし、思っていた以上に広角に打てる器用さも持ち併せています。一方のファビアンは、オープン戦序盤は対応に苦労していましたが、試合を重ねるごとに日本の野球に慣れてきました。モンテロ同様に長打力があるので、2人とも戦力になると思います。

――期待の若手選手が多いとのことですが、特に注目している選手はいますか?

緒方 最も目を引くのは二俣翔一(高卒5年目)です。非常に守備能力の高い選手で、内野も外野も守れます。今季は大きく打撃フォームを改造したのですが、試合に出ながらタイミングのとり方もよくなり、自分のバッティングスタイルを確立してきた感があります。

 田村俊介(高卒4年目)にも期待しています。キャンプから見ていますが、バッティングでタイミングのとり方を少し変え、長打力を含めて確実に成長してきているなと。長打力という点では、林晃汰や末包昇大らもオープン戦で内容のあるバッティングを見せてくれていましたし、モンテロやファビアンも含めて各ポジションの争いが活性化しています。

――内・外野を高いレベルで守れる二俣選手の存在は大きい?

緒方 ライトに限らず、サードやショート、菊池涼介を休ませるためにセカンドを守らせることもできますし、貴重な戦力です。いろいろなポジションで起用してみたいと思わせる選手ですね。

――ドラフト1位ルーキーの佐々木泰選手(青学大)は左足太もも裏の肉離れで離脱中ですが、どう見ていましたか?

緒方 構えが大きくてゆったりとしていて、非常にフォロースルーが大きい。そういうスイングを見ると、中・長距離のバッターだなという印象です。ポジション争いに入っていける実力の片鱗を見せてくれていただけに、離脱は残念でしたね。それと、彼のバッティングを生かすためなのか、オープン戦ではテストの意味で外野を守らせたりもしていましたが、ポジションは基本的にサードでしょうね。

【ドラ1の常廣らも含め、投手陣は層が厚い】

――ピッチャー陣はどう見ていますか?

緒方 主力の大瀬良大地、床田寛樹、森下暢仁以外の3枠を、森翔平、玉村昇悟、ジョハン・ドミンゲス、常廣羽也斗(つねひろ・はやと)、ドラフト2位ルーキーの佐藤柳之介(富士大)が争う形となり、先発ローテーション争いは非常に激しいです。常廣はオープン戦の西武戦(3月18日)でストライクを取るのに苦労していましたが、長いシーズンを考えれば今後もチャンスはあるはずです。

――常廣投手のピッチングをどう見ていますか?

緒方 まずウイニングショットのフォークは狙って空振りを取れますし、バッターはそう簡単には打てないでしょう。要は、追い込んだら三振を取れるピッチャーということです。カットボールやスライダーも精度が高くなっていますし、何よりも真っすぐが力強い。キャンプの最初のシート打撃での登板では、寒いなかで150キロ台を連発してバッターを圧倒していましたし、ちょうど視察に来ていた侍ジャパンの井端弘和監督を唸らせるほどでした。

 森翔平も今年は非常にいいです。社会人出身で入団4年目なので、首脳陣からすれば求めるレベルも高いところにあったと思いますが、オープン戦でもほとんど点を取られませんでしたし、ランナーを出した場面でも非常に落ち着いています。

 今までは力で押すピッチングが目立っていたのですが、もともと球種が豊富なピッチャー。カットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォークといった変化球の精度が上がっていますし、コントロールがいい。そういうものがオープン戦の好調さにつながったと思います。

――ドラフト2位ルーキーの佐藤柳之介投手は、即戦力になれそうな投球を披露していました。

緒方 150キロ超えの強い真っすぐをどんどん投げる、というタイプではないですが、打者目線ではタイミングが取りづらいピッチャーです。独特の投球フォームでリリースポイントが見づらく、真っすぐを待っていても差し込まれてしまう。また、両コーナーに投げ分けるスライダーや、右バッターの外に落ちていくチェンジアップ気味のフォークなどの精度が高いですし、バットの芯でとらえにくいタイプですね。

――ドラフト3位ルーキーの岡本駿投手(甲南大)はいかがですか?

緒方 先発陣と同じく中継ぎ陣も層が厚いのですが、そこに食い込んでいきそうですよね。真っすぐの強さやコントロールがよく、何よりも右バッターのインサイドに食い込んでくるツーシームがいい。縦の変化が大きくて空振りが取れますし、右バッターが一番嫌がるような軌道です。

 ドラフト4位ルーキーの渡邉悠斗(富士大)も、オープン戦途中までは結果を残していました。内野の守備で少し不安定さが見受けられましたが、打つほうに関しては一軍で競争しているメンバーに引けを取っていなかった。佐々木同様、シーズン中に必ずチャンスがくると思います。

――先発もリリーフも充実している一方、チームの一番の課題はやはり得点力不足だと思いますが、今季の打線はいかがでしょうか?

緒方 攻守において要である坂倉将吾が開幕にいないのはマイナスです。ただ、昨季は2人の外国人選手がシーズン早々に離脱した打線で9月頭まで首位にいたことを考えれば、今季の打線はプラスアルファしかないです。やはりモンテロとファビアンが計算できる、期待を持たせてくれていることがすごく大きいですし、若手がチームを底上げしてくれています。昨季は得点力不足に泣かされましたが、今季は得点力不足が改善するはずです。

>>緒方孝市がセ・リーグの順位を予想 チーム力が増して上位にきそうなチームは?

【プロフィール】

緒方孝市(おがた・こういち)

1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。1986年に広島東洋カープからドラフト3位で指名され入団。2008年まで主に外野手として活躍し、盗塁王のタイトルを3度、ゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後、コーチとして後進の指導。2015年に監督に就任すると、2016年から18年にかけてチームを球団史上初の三連覇に導いた。2019年に退任後、野球評論家などで活躍中。

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