3月11日、女優のいしだあゆみさん(享年76)が「甲状腺機能低下症」のため都内の病院で亡くなったというニュースが飛び込んできたが、その死因について衝撃が広がっている。
「明日はわが身かも……」
と、案じているというのは都内に住む50代の女性・Aさん。40代後半から更年期障害の治療を受け続け、医師からは何度も「甲状腺に異常があるかもしれないから、念のため内科に行って血液検査を受けてもらってください」と、言われ続けていたという。
更年期障害は女性ホルモン(エストロゲン)の低下により、不定愁訴などの症状が起こる。Aさんの場合、ホルモン補充療法を受けていても、疲れやすい、だるいといった症状がなかなか治まらなかったそうだ。
「たくさん寝ても疲れが取れない、特に天気の悪い日や寒い日は一日中頭がぼんやりして眠気が取れないといった“なんとなく不調”が続いていましたが、病院に行くほどでもないと思ったのと、毎日が忙しいので放置していました。まさか甲状腺機能低下症で亡くなることがあるなんて。いしださんが亡くなったニュースを聞いて、背筋が凍りつきました」(Aさん)
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スポーツ紙などで、「いしださんは、昨年秋に公開した映画では元気な姿を見せていた」と報じられており、つい最近までは元気だった様子がうかがえる。
「更年期障害と甲状腺機能低下症の症状は似ているため、見分けが難しいのです。不定愁訴などの体調不良を『更年期のせい』と思って婦人科を受診をしたら、じつは甲状腺の疾患が原因だった、というケースも。
特に中高年の女性は体調不良をなんでも“更年期のせい”と、ご自身で判断してしまい、病院を受診されない人も多いので、症状が気になるようでしたら、きちんと検査を受けるようにしましょう」
そうアドバイスするのは、婦人科医で、成城松村クリニックの松村圭子院長。甲状腺機能低下症とは、のどぼとけの下にあるチョウのような形をした甲状腺から出る「甲状腺ホルモン」の分泌量が低下してしまうこと。
このホルモンは新陳代謝を調整する重要な役割を担っているので、量が不足しても、反対に過剰になっても体に影響を及ぼす。甲状腺ホルモンの分泌量が減る原因はいくつかあり、よく知られている橋本病(慢性甲状腺炎)などの自己免疫疾患による甲状腺の炎症や、脳腫瘍や脳出血など頭部の傷害からくるものなどがある。ほかに、加齢や強いストレスといったことも減少の原因になる。
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「ホルモンの分泌量が低下してくると、疲れやすく、声がかすれてきて元気がなくなってきます。また、少しの気温の低下で寒さを感じるようになり、代謝が悪くなることから、尿や汗の排せつも悪くなる。さらに全身がむくみやすくなってきます。鏡を見て顔全体が腫れぼったくなったら要注意です。
食事量がそれほど多くないのに体重が増える、髪が抜けるといった異変もサインです」(松村院長、以下同)
厚生労働省によると、甲状腺機能低下症の患者数は1千人あたり2〜3人。潜在的に甲状腺機能が低下している人は全国で3.3〜6.1%いるといわれ、患者は男性よりも女性が2倍多いといったデータもある。原因は不明で、予防法も確立していない。
うつ状態などの精神的な症状が出ることもあるので、これらの異変を「更年期によるもの」と思い込んで婦人科にかかったり、あるいは「うつかも」と、心療内科を受診したりして、病気を見逃してしまうケースがある。適切な治療をせずにいると、無気力で頭の働きが鈍くなり、動作が緩慢になったり忘れっぽくなるなど、認知症の原因にもなるのだという。
また、血中コレステロール、中性脂肪の値が高くなりやすいので、生活習慣病や動脈硬化が進行しやすくなり、放っておくと心不全などの疾患の引き金になるケースも。“勘違い”が命を脅かす事態を招くこともあるのだ。
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「いしださんのように、甲状腺機能低下症それ自体が死因と診断される例は極めてまれですが、さまざまな重篤な病気のリスクを高めてしまうため、早期発見がとても重要です。
甲状腺ホルモンを補充する薬を服用すれば、多くの場合回復してきて、ふだんどおりの生活を送ることができるようになります」
甲状腺機能低下症は血液検査の結果で診断されるという。
「私のクリニックでは、問診で、疲れやすい、だるい、むくんで体重が増えた、といった更年期障害と似ている症状を訴える患者さんに関しては、念のため甲状腺ホルモンの検査も行います。更年期障害の治療をして改善しない場合も同様です。そこで甲状腺機能低下症の疑いがあれば、すぐに治療を受けてもらうよう専門医を紹介します」
反対に、バセドウ病に代表される、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患にも気をつけたい。こちらは、暑がりになり汗がよく出る、体温が上がる(微熱)、イライラする、脈が速くて動悸や息切れがする、など、やはり更年期障害とよく似た症状が出ることがある。
いま抱えている“なんとなく不調”が、甲状腺の異常のサインかもしれない。「更年期だからそのうち治まる」などと安易な自己診断をせず、手遅れにならないうちに適切に対処しよう。
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