なぜ4回目で成功したのか? ゼブラ「マイルドライナー」4億本突破の裏側

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2025年03月28日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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4度の試行錯誤を経て誕生! ヒット商品「マイルドライナー」

 ゼブラが販売する「おだやかな色合い」が特徴のラインマーカー「マイルドライナー」シリーズがヒットしている。2009年に国内で発売し、現在は日本だけでなく、世界20カ国以上で展開。シリーズ累計販売本数は4億本を突破している(2025年2月末時点)。


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 販売比率を見ると国内が約2割、海外が約8割のようだが、なぜ海外でこれほどヒットしているのか。開発の背景やヒットの要因を、同社プロダクト&マーケティング本部 副本部長の平將人さんと水性マーカーチームの島田留依さんに聞いた。


●おしゃれに楽しく書けるラインマーカー


 マイルドライナーは、蛍光感を控えめにした鮮やかな色合いが特徴のラインマーカーだ。手帳やノートに彩りを加えたり、イラストを描いたり、さまざまな用途で使える。デジタルコンテンツが主流の現代において、「書くこと」をもっと気軽に楽しんでほしいという思いも込めて開発している。


 ラインアップは大きく3種類ある。2025年で発売16年目を迎え、1月に新色が加わった「マイルドライナー」(全40色)、2019年より発売している筆ペンタイプの「マイルドライナーブラッシュ」(全25色)。そして2024年に発売したペンと違う色のインクを直接付けて楽しむ「マイルドライナーのもと」(全9色)だ。


 マイルドライナーシリーズは今でこそ国内外でヒットしているが、実はゼブラが手掛ける「鮮やかな色合いの蛍光ペン」には、紆余(うよ)曲折の歴史があった。


●4度目の正直でヒット商品に


 1998年、当時蛍光ペンでは珍しい白軸を採用した「蛍光ソフトカラー2」を発売。蛍光ペンの色が強すぎるといった声があり「目に優しいパステル調の蛍光色」を採用したものを開発した。しかし、発売からわずか2年後の2000年に廃盤となった。


 その後、2003年に「PCなどで目が疲れ気味の人」に向けて“目がちかちかしない”といった訴求で売り出したのが、2代目に当たる「オプテックス ファンカラー」。従来の蛍光ペンと比較して約70%色が淡い(同社比)ものだったが、こちらも2005年に廃盤になってしまう。


 翌2006年には、たくさんマークしても目に優しい、淡い色の進化版蛍光ペンとして「オプテックスクリップ ソフトカラー」を発売。こちらも2009年に廃盤となった。


 そして2009年に登場したのが、現在販売中の「マイルドライナー」だ。当時の担当者が起案した際、経営陣からは『4回目も売れないのではないか』『また廃盤になるのでは』といった懸念もあったという。それが現在では、累計4億本を超えるヒット商品になったわけだが、3代目までの商品とは何が違ったのか。


 「大きな違いはターゲットと、それに合わせて見た目を変えたことだった」(平さん)


●これまでにない形で売れていった


 3代目までは事務用の蛍光ペンとして、主に事務用途向けに展開していたという。マイルドライナーについてはメインターゲットを女性とし、シンプルなデザインでペン軸に初めて白を採用。ペン自体の見た目もかわいらしいものを意識して開発した。


 とはいえ、発売からすぐに売れ行きが良かったわけではない。ヒットのきっかけはInstagramだった。「2016年くらいから世の中にInstagramが広がり始め、どちらかというと海外から人気に火が付いていった」(平さん)


 マイルドライナーは2025年現在、20カ国以上で販売している。中でもよく売れているのは、韓国と米国だという。韓国では2012年から、米国では2017年から販売し、それ以降、海外での売り上げが好調に推移している。


 「韓国では勉強用の手帳やスケジュール帳、米国では手帳術と絡めた投稿がそれぞれ増えていって、当社としてもこれまでにない流れで、ユーザーが自発的にブームをつくってくれた」(島田さん)


 米国では現在、現地限定品として既存のブラウンよりも少し濃い茶色で肌の色を表現できるcooper(カッパー)色のものや、1本のペンで2色使える「マイルドライナーミックス」を発売している。


 今のところ日本での発売は未定だが、クリエイティブ寄りの商品はメッセージカード文化がある米国で需要が高く、そうしたニーズに応えた商品展開を行っているという。


●意外な使われ方も


 Instagramを中心に人気が広がり、ユーザーの声に応えながらラインアップも拡張していったマイルドライナー。日本でも女性を中心に多くのファンから支持を得ているが、手帳やノートでの活用はもちろん、イラストを描く際に使う人も多いようだ。


 2022年と2023年には、人気イラストレーター「おちゃ」さんが描きおろしたマイルドライナー活用のイラストの描き方本『マイルドライナーで簡単! かわいい! ちょこっとイラストが描ける本』『マイルドライナーでもっと簡単!かわいい! ちょこっとイラストが描ける本』が発売された。


 ゼブラは画材ではなくペンを販売しているという認識だったため、意外な使われ方に驚いたようだ。しかし、「ここまでおだやかな色味だけでそろったペンは、日本では他にない」という自信があり、綿密な計画と試行錯誤を重ねて調色を行った。その結果、筆ペンタイプを除く通常のマイルドライナーだけで40色をラインアップしている。


 企画開発時には流行の色も調査し、絵の具を使いながら新色を考案。量産に向けては、顔料インク(着色剤の粒子が水に溶けていないインクのこと)で安定して同じ色を出すためにさまざまな工夫を重ねているという。


●公式Instagramアカウントも開設


 今後については、Instagramを中心にユーザーが広がっていった商品でもあることから、同社の公式Instagramにも力を入れていくという。2024年に公式アカウントを開設し、10〜11月には日本、米国、中国をはじめとする世界14カ所の国と地域でグローバルSNSキャンペーンを開催した。


 公式アカウントでは、世界中のファンが公開している使い方なども紹介している。SNSを通じて「各国のコミュニティが広がってくれたらうれしい」とのことだ


 また「おだやかな色合い」が特徴的なブランドであることから、筆ペンタイプの「マイルドライナーブラッシュ」やインクの「マイルドライナーのもと」とは異なる、淡い色合いを生かした新商品の発売も検討しているという。


 「おだやかな色合い」というブランドの価値は崩さず、国内外のユーザーの声を聞きながらラインアップを拡張し、ヒット商品となったマイルドライナー。今後の展開にも注目したい。


(熊谷ショウコ)



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