いまの時代、「叱る」という行為は、やり方をひとつ間違えると「パワーハラスメント」だと言われます。叱る側は、相当な覚悟をもって取り組まなければなりません。このことは、若い読者のみなさんには、よく認識しておいてもらいたいと思うのです。
では、叱る人は、なぜハラスメントの地雷を乗り越えてまで叱ろうとするのでしょうか。部下に仕事をしてもらわないと、自分の評価も上がらないからという理由もあるかもしれませんが、やはり、部下に成長してもらいたいからこそ叱るのです。
マザー・テレサは、「愛の反対は憎しみではなく無関心である」と言いました。無関心なら、リスクを冒して叱ったりしません。関心があり、愛があるから叱るのです。
しかし、現代社会において、「叱る」ことは完全に時代遅れになっています。
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私は「叱る」ことはせず、部下への対応は「褒める」ことを基本にしています。目標未達の場合など、褒めることが難しい場面においても、「なぜできなかったのか?」と問いかけ、対話を重視します。一方的な命令ではなく、部下と対等な立場で、「どうすれば改善できたのか?」と建設的に話し合います。
「叱る」のではなく、「褒める」を通して部下のモチベーションを高め、目標達成へと導く。上から目線で強制するのではなく、自発的に目標へと向かうよう仕向ける。これが私のマネジメント手法です。
私が経営している「アパマンショップ」は、当初は全国のフランチャイズの中で30位前後でしたが、社員に会社への誇りを持つために、傘下の10店舗の中で必ず全国1位を獲得しようと目標を掲げました。社員に結果を給与や賞与に反映させることを約束し、社長就任から数カ月で、全国1位を目指しました。結果、着実に順位を上げ、ついに1位になることができたのです。
実は数年前まで、叱ることは重要だと考えていました。そんな私が、部下を叱らずに「あと少し」と鼓舞し、褒め、対話し、目標を高く設定し、成長を促すことができたのです。その時は大きな喜びを感じたことを覚えています。
また、モチベーションが低く、仕事に迷いを抱えている営業メンバーがいました。その社員は、あることをきっかけに結果を出し始めます。
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それは、店長に任命されたことでした。個人の限界を超えるため、チームで売上を上げる仕組みを作り、店長には部下の育成に注力させました。自ら営業せずとも、部下を育成すれば、個人の能力をはるかに超えるレバレッジ効果を生み出すことができます。店長は、部下の育成に注力することで、結果的に自身の負担を軽減できるようにもなります。
では、「叱られない時代」に若い人たちはどうやって成長すればいいのでしょうか。
新入社員には、褒められても常に改善点を考え続け、自分から上司に聞きに行くようアドバイスしています。以前は「忙しいから自分で考えろ!」なんて言われていたのに、いまの時代は本当に親切に教えてくれます。
また上司が褒めてくれたあとの「一言」にも学ぶ要素があります。英語表現“Yes, but〜”に見られるように、「しかし」以降にこそ本音が出るものです。
同様に、賞賛の言葉に続く「でもね」にも、本音が隠されているんです。例えば、「素晴らしい! でも、これを改善すれば更によくなる」といった感じです。重要なのは、この隠された意図、つまり本音を読み取れるかどうかです。褒められて満足することなく、向上心を持って上を目指す姿勢が求められます。
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ただ、現代社会では叱られる機会が減っているものの、「叱られること」は貴重な学びのチャンスです。もし叱られたら、その内容を受け止め、前向きに成長の糧にしていくのがいいでしょう。
【ポイント】
伸びない人は褒められて満足する。
伸びる人は褒められたあとの「一言」から学ぶ。
(菅沼勇基)
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電話の天気予報177番 31日で終了(写真:TBS NEWS DIG)256
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