処方薬と同成分! 薬局で買える花粉症のスイッチOTC薬はどれ?

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2025年03月28日 20:51  All About

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【薬学部教授が解説】花粉症の薬の多くは、以前は病院を受診する必要があった処方薬と同一成分のものが、市販薬として薬局などで購入できます。花粉症のスイッチOTC薬と、選び方のポイントをご紹介します。
日本人は、軽症でも病院を受診する傾向があると言われています。健康意識が高いのはよいことですが、保険調剤で多くの薬が処方されることで、公的医療保険に大きな負担がかかっているという指摘も、無視できません。必要なときに自分で薬を購入し、健康管理を行うことを「セルフ・メディケーション」と言います。セルフ・メディケーションを通して公的医療保険制度を守る方策の1つとして、近年は「スイッチOTC薬」が推進されています。

スイッチOTC薬とは……病院の処方薬と同一成分の市販薬

「OTC」は、Over The Counterの略です。「カウンター越しに(買える)」という意味の通り、OTC薬は、医師による処方箋がなくても薬局やドラッグストアで直接購入できる医薬品のことを指します。そして、「スイッチOTC薬」とは、市販薬として転用された医薬品のことを指します。スイッチOTC薬は、もともとは医師の処方箋に基づいて使用されていた医療用医薬品です。

長年の使用実績によって、有効性と安全性がある程度担保され、医師の処方箋がなくても使っていいだろうと判断されたものが、スイッチOTC薬として、薬局やドラッグストアで直接購入できます。

筆者自身もそうなのですが、花粉症は通常は命にかかわるような病気ではありませんが、当人にとっては非常につらいものです。かつては病院を受診して処方箋を発行してもらう必要があった薬の多くが、今では受診しなくても薬局やドラッグストアで市販薬として購入できるようになっています。つまり、花粉症に対しては、多くの「スイッチOTC薬」が用意されているということです。多くの人が、できるだけセルフ・メディケーションを行うことが大切です。

花粉症の症状に効く、薬局やドラッグストアで直接購入できる「スイッチOTC薬」を紹介します。

花粉症に効く市販薬は? 効果が期待できるスイッチOTC薬一覧

主に鼻水やくしゃみなどの症状に使える飲み薬(錠剤)

・アレジオン(有効成分:エピナスチン)
・新コンタック鼻炎Z(有効成分:セチリジン)
・アレグラFX(有効成分:フェキソフェナジン)
・アレルビ(有効成分:フェキソフェナジン)
・クラリチンEX(有効成分:ロラタジン)
・タリオン(有効成分:ベポタスチン)

これらはすべてスイッチOTC薬です。病院で処方されるのと同じ成分が入っており、飲み方も同じです。全て「眠くなりにくい」タイプの抗ヒスタミン薬であり、大きな差はないので、お好みで選べます。

目のかゆみや充血などに効果的な市販の点眼薬

非常に製品数が多いので、ごく一部だけを紹介します。また、処方薬の場合は単一成分のものがほとんどですが、市販薬の場合は単一成分のものはごく少数で、ほとんどの製品に3〜4成分が配合されています。そのため、どれを選べばいいのか非常に迷うと思います。

ここでは一例として、ロート製薬のアルガードというシリーズ製品を目薬で比べてみましょう。

1. アルガードクリアブロックZ、アルガードクリアマイルドZ(有効成分:クロルフェニラミン、プラノプロフェン、クロモグリク酸)
2. アルガードクリニカルショットm(有効成分:クロルフェニラミン、プラノプロフェン、トラニラスト)
3. アルガード、アルガードs(有効成分:クロルフェニラミン、グリチルリチン酸、テトラヒドロゾリン)

注:目薬には「コンドロイチン硫酸エステル」が添加されており、有効成分に含めることもあります。しかしあくまで保湿の役割を果たすだけなので、ここでは割愛しました。

1〜3は、同じアルガードですが、成分が違いますね。一方で、「クロルフェミラミン」は全ての製品に共通して入っています。これは「抗ヒスタミン薬」の一種で、目のかゆみを生じるヒスタミンの働きを邪魔してくれます。「クロルフェニラミン」は、非常に古い薬で、60年以上前から使われてきました。総合感冒薬などにも入っており、よく効きますが、眠気を生じやすいことも知られています。

近年は、眠くなりにくい抗アレルギー性の抗ヒスタミン薬が多く使えるようになったので、クロルフェミラミンを飲み薬として使うことはほとんどありません。しかし目薬として使うときには、全身に作用することはなく、眠気を生じませんので、アレルギー対策の目薬にはよく配合されています。

1と2に入っている「プラノプロフェン」と3に入っている「グリチルリチン酸」は、抗炎症成分です。炎症を鎮めてくれますが、それほど作用は強くありません。1に入っている「クロモグリク酸」は、ヒスタミンをはじめとするアレルギーを引き起こす体内物質が放出されるのを、あらかじめ抑えることが主作用の成分です。そのため、発症してから使っても効きにくく、症状が現れる前から予防的に用いる必要があります。

2の「トラニラスト」も、アレルギーを引き起こす体内物質が放出されるのを抑えてくれますが、作用はそれほど強くありません。3に含まれる「テトラヒドロゾリン」は、血管を収縮させて充血を取り除く効果があります。それぞれ特徴があるので、自分の症状や使用時期によって使い分けてもいいでしょう。

さらに、目薬の場合は、薬としての作用そのものに加えて、目にさしたときの「使用感」も大事です。特にコンタクトレンズを使っている方やお子さんの場合には、それぞれに適したものがあります。例えば1や3に含まれるそれぞれ2製品は、有効成分は同じですが添加物が異なっており、さしたときの感じが微妙に違いますので、買い求めるときにはぜひ店頭で薬剤師さんに相談してみてください。

なお、最近は、花粉症対策になる市販の「点鼻薬」も登場して使えるようになりました。

今回紹介した飲み薬や点眼薬を使っても症状が変わらないときは、受診して専門医のアドバイスをもらいましょう。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

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