【平成の名力士列伝:土佐ノ海】恵まれた体躯を生かした激しい相撲で数多の金星&三賞に輝いた上位キラー

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2025年03月29日 07:11  webスポルティーバ

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連載・平成の名力士列伝37:土佐ノ海

平成とともに訪れた空前の大相撲ブーム。新たな時代を感じさせる個性あふれる力士たちの勇姿は、連綿と時代をつなぎ、今もなお多くの人々の記憶に残っている。

そんな平成を代表する力士を振り返る連載。今回は、38歳まで激しい相撲で沸かせた土佐ノ海を紹介する。

連載・平成の名力士列伝リスト

【新入幕の初日から大関・横綱と対戦の巡り合わせ】

 金星11個は史上4位で、三賞受賞通算13回は史上7位タイ。土佐ノ海は平成時代に16年以上の長きにわたって土俵に上がり、鋭い当たりからの馬力十分の突き押しと思いきりのよいイナシで、上位キラーとして存在感を示した実力者だ。

 出身は高知県安芸市で本名は山本敏生。野球少年だったが小5の時から相撲を始め、高知高校から同志社大学に進んで頭角を現し、15のタイトルを獲得する。西日本では無敵の強さを誇り、同学年の尾曽(専修大学。のち大関・武双山)と、「東の尾曽、西の山本」と並び称された。その尾曽が大学を3年で中退して大相撲入りして活躍する姿にも刺激を受け、卒業と同時に元関脇・藤ノ川の伊勢ノ海部屋に入門。平成6(1994)年3月場所、故郷に因んだ「土佐ノ海」の四股名で、幕下最下位格付け出しで初土俵を踏むと、幕下を4場所、十両を3場所で通過し、スピード出世で幕内へと駆け上がった。

 大きな注目を集めたのは、新入幕の平成7(1995)年7月場所。出世の速さに髪の伸びが追いつかず、大銀杏でなくチョンマゲ姿で土俵に上がった新鋭が、初日に大関・若乃花(のち横綱)、2日目に横綱・貴乃花と、いきなり横綱・大関に挑んだのだ。前場所が東十両筆頭で14勝1敗という高レベルでの優勝で、この場所は新入幕ながら西前頭7枚目に躍進していたこと、そのうえ上位陣に二子山部屋勢が多く、同部屋同士の対戦は組まれないというルールから順当な対戦ではあったとはいえ、新入幕が初日に大関と対戦するのは86年ぶり、2日目に横綱と対戦するのは89年ぶりのことだった。

 さすがに上位陣の壁は厚く、この2戦のほか大関・貴ノ浪とも対戦していずれも敗れ、7勝8敗と入門以来初めて負け越したが、ようやく大銀杏を結って登場した翌9月場所は貴ノ浪を破って11勝し、初の三賞となる敢闘賞に輝く。続く11月場所では貴乃花、曙の両横綱から金星を挙げて9勝し、殊勲賞と技能賞をダブル受賞の大活躍で、平成8(1996)年1月場所は新小結に昇進。その後は三賞や三役の常連となった。

【躍動感あふれる相撲っぷりで見る者の記憶に】

 平成9(1997)年5月場所には新関脇に昇進して10勝。ライバルの武双山や魁皇らとともに大関候補に躍り出た。ヒザのケガで平幕下位に番付を下げるも、平成10(1998)年11月場所から金星を4場所連続で、若乃花から3個、貴乃花から2個、曙から1個の計6個獲得と上位キラーぶりをいかんなく発揮し、平成11(1999)年7月から7場所連続で三役に在位した。

 この間、武双山や魁皇が大関昇進を果たしており、土佐ノ海も続いての昇進が期待されたが、惜しくも逃してしまう。勢いに乗ると手がつけられない一方で、歯車が狂うと立て直すのに苦労して連敗することも多く、好成績がなかなか続かなかったが、それでもひた向きに土俵を務めた。

 強く記憶に残るのが、躍動感あふれる相撲っぷりだ。185センチの長身を折り曲げるようにして頭で当たると、激しい突き押しで攻め立てる。体中に漲(みなぎ)る気迫を抑えきれず、うなり声を発することもしばしば。攻めきれないとみると繰り出す、思いきりよいイナシや叩きも強烈だった。

 31歳で迎えた平成15(2003)年11月場所、武蔵丸を撃破して史上3位となる11個目の金星を獲得。10勝して7回目の殊勲賞に輝き、三賞通算13回は史上7位となり、平成16(2004)年1月場所で関脇に返り咲いた。

 その後は三賞、三役、金星とも遠ざかり、十両に落ちることもあったが、何度も幕内に復帰。幕下陥落が決定的となった平成22(2010)年11月場所後、38歳で引退したが、激しい相撲は最後まで変わらず、いぶし銀のベテランというよりも、若々しくフレッシュな印象のまま、爽やかに土俵を去った。

 現在は伊勢ノ海部屋付きの立川親方として後進の指導にあたる一方、長く審判委員を務め、土俵に目を光らせている。

【Profile】土佐ノ海敏生(とさのうみ・としお)/昭和47(1972)年2月16日生まれ、高知県安芸市出身/本名:山本敏生/所属:伊勢ノ海部屋/初土俵:平成6(1994)年3月場所/引退場所:平成23(2011)年1月場所/最高位:関脇

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