
福田正博 フットボール原論
■2月に開幕したJ1は第6節まで終了。代表ウィークで中断のあと3月28日のセレッソ大阪vs浦和レッズから再開した。。序盤戦で早くも明暗分かれているところがあるが、福田正博氏に各チームの状況を分析してもらった。
【序盤でよさを見せた4チーム】
2月14日に開幕したJリーグも、早いもので1カ月が過ぎた。6試合を終えた時点で鹿島アントラーズがJ1首位に立っている。
今季から鬼木達監督を迎えた鹿島は、誰もがイメージする「鹿島らしさ」を取り戻しつつある。湘南ベルマーレとの開幕戦こそ落としたものの、次節の東京ヴェルディ戦以降は、セットプレーで流れを変えたり、接戦をモノにしたりと、粘り強い戦いができている。DFラインの中央に植田直通と関川郁万が入り、レオ・セアラと鈴木優磨が2トップを組む4−4−2の布陣は、強かった時代の鹿島を彷彿させるものがある。
ただ、まだまだ黄金期のような圧倒的な強さはない。それでも「らしさ」を取り戻しつつある鹿島が、シーズンが進むなかで自分たちの戦い方をブラッシュアップしながら、本物の強さを纏うのではという期待感がある。
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その鹿島に勝ち点1差で続くFC町田ゼルビアには、J1で2年目と思えない風格を感じる。開幕戦で3バックの中央の菊池流帆がケガをしたが、次節からは新加入の岡村大八を中央に据え、昌子源とドレシェビッチで左右を固める布陣を組み、第2節から第6節までの5試合は4勝1敗。
J2時代からのライバル・東京ヴェルディには敗れたものの、守備的MFの前寛之、シャドーの西村拓真といった新戦力が活躍し、昨年同様、相手にやりたいサッカーをさせずに手堅く勝ち点を伸ばしている。この戦い方ができている限り、町田が大崩れすることはないはずだ。
ほかよりも1試合消化が少ないながら、3位につけているのがサンフレッチェ広島だ。ACLを戦ったため他クラブよりもシーズンインが早く、過密日程となりながらも、さすが広島という手堅さを見せている。新加入のFWジャーメイン良も効いている。そのまわりを固める選手たちは昨年からの顔ぶれが揃い、コンビネーションなどに不安はない。
序盤戦で存在感が際立っているのが柏レイソルだ。開幕前からリカルド・ロドリゲス新監督の志向するサッカーは、柏の選手たちと相性がいいだろうと予想していたとおりで、後ろからしっかりつなぐサッカーができている。
開幕から3勝1分けの負けなしで迎えた鹿島戦は、相手が前から勝負をかけてきたことで、自分たちのサッカーを見失ったように映った。翌節の広島戦では終了目前で同点ゴールを許して勝ち点3を掴み損ねている。ただ、内容は評価できるだけに、これから先の長いシーズンで、つなぐ精度を高めていければ、安定した成績を残せるだろう。
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【今季J1の注目点、特徴とは?】
今季J1で注目していることのひとつが、率いるチームを変えた3人の監督だ。鹿島の鬼木監督は昨季までは川崎フロンターレ、その川崎は前アビスパ福岡の長谷部茂利監督に。そして前アルビレックス新潟の松橋力蔵監督はFC東京を率いている。
意外だったのは川崎の長谷部監督だった。福岡時代のように守備に重点を置くサッカーをするのかと思っていたが、そうでもない。守備を整理しつつも攻撃面のよさを残している印象で、戦績は2勝2分け1敗の8位。勝ち点を積み重ねる視点で見れば、安定した戦いぶりだろう。これを継続できれば、もう少し上位に顔を出してくるはずだ。
一方、FC東京の松橋監督は、結果だけを見れば2勝1分け3敗と苦しいスタートを切ったが、3バックでの戦いぶりには手応えも感じているのではと思う。もちろん、まだまだ監督の志向するサッカーが選手たちに浸透しきっていない部分はあるが、この戦いを続けていけば、リーグのなかでのFC東京の存在感を取り戻せるのではと思う。
また、今のJ1の特徴のひとつに、3バックを敷いて前からプレッシャーをかける守備をするクラブの多さがある。そうしたクラブのなかで序盤戦から気を吐いているのが湘南ベルマーレだ。
湘南は山口智監督のもとで、毎シーズン残留争いに巻き込まれてきた。シーズン前半で敗戦が重なって失った勝ち点を、後半戦の勝利で取り返す流れだ。
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これは言い換えれば、シーズン後半の戦いを翌シーズンの開幕から再現できていれば、本来はもっと上位に顔を出せたということでもある。それがついに実現したのが今季のスタートダッシュ。3勝2分け1敗の5位。山口体制で5季目を迎え、チームとしての戦い方が徹底されているうえに、ツートップの鈴木章斗、福田翔生がいい。
【巻き返しに期待のチーム】
好スタートを切ったチームもあれば、残念ながらスタートダッシュに失敗したチームもある。
2連覇中の王者・ヴィッセル神戸は第6節終了(5試合消化)時点の順位は16位。1勝3分け1敗と、引き分けが多く勝ち点3を奪いきれていない。大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳という元日本代表組は健在で、ほかのメンバーの顔ぶれも変わらないものの、ここまでは補強をあまりしなかったマイナス面が出ているように感じる。
メンバーの顔ぶれが変わらないのはコンビネーションなどで他クラブより優位性がある一方、新戦力がいないとチーム力が前年よりも上がりにくい側面がある。ただ、神戸は昨季も春先はスロースタートだった。計算が立つ選手が揃っているだけに心配はしていない。とはいえ、今後も取りこぼしが多くなるようだと、夏場に起爆剤を補強しなければ3連覇は難しくなるだろう。
同じ関西勢ではガンバ大阪が3勝3敗で7位。悪くはないものの、今季のガンバには期待していただけに、少し肩透かしを食らった感じがする。そのガンバに開幕戦で勝利したセレッソ大阪は、その後は2分け3敗。ガンバよりももっと苦しい序盤戦になった。
ほかにも横浜F・マリノスは1勝3分け1敗の15位。スティーブ・ホーランド新監督を迎え、ACLとの両立という難しさがあるとはいえ、あまりに寂しい結果だ。大型補強をした浦和レッズは17位とシーズン早々に苦悩し、名古屋グランパスは主力選手に故障者が相次ぎアルビレックス新潟とともにシーズン初勝利が未だなく、最下位に低迷している。
横浜FM、浦和、名古屋の3チームは、J1の上位を争える規模のクラブなだけに、いち早くチームを立て直し、勝ち点を積み上げていってもらいたい。
明暗の分かれた序盤戦だが、首位の鹿島から最下位の名古屋までの勝ち点差は、まだ11ポイント。上から下まで団子状態になるのが近年のJ1の特徴だけに、ここから先どんな波乱が待ち受けているのか。興味深い。