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<フィギュアスケート:世界選手権>◇28日(日本時間29日)◇第3日◇TDガーデン(米マサチューセッツ州ボストン)◇女子フリー
【ボストン=松本航、藤塚大輔】ショートプログラム(SP)5位と出遅れた坂本花織(24=シスメックス)の、実に66年ぶりとなる4連覇はならなかった。
フリーを、ほぼノーミスの146・95点。氷上を歓喜雀躍する会心の演技に喜びを爆発させ、合計217・98点で暫定首位に立つ。後に滑った、同じ日本でSP2位の千葉百音(19=木下アカデミー)も5・40点差で抑えたが、SP首位だった地元米国のアリサ・リュウ(19)が大声援に押されて完璧に舞い、計222・97点でかわされた。
惜しくも銀メダルとなったが、納得のフリーに、仲間との共闘に、ライバルへの尊敬と、特別な感情が入り交じった。当地での取材では、涙をぼろぼろ流しながら次の通り振り返った。
「演技直後は、本当に自分でもよく頑張ったなっていう感情で、その後4人の演技見て、いろんな人に泣きすぎて、感動しすぎて、何か感情がよく分かんなくなっちゃって。でもアリサがパーフェクトの演技をして『これはもう負けたな』って思って、本当にアリサの優勝はうれしかったんですけど、そのうれしいっていう気持ちの後に悔しすぎて。今までで一番悔しかったなっていうのがあって、泣いても泣いても涙が止まらないぐらい、うん、とにかく、こんなにも悔しい試合になったのは、久々でした」
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一方のリュウは初優勝。19年に、史上最年少の13歳で全米選手権を制した“天才少女”だった。22年の北京オリンピック(五輪)で6位、同年の世界選手権では16歳で銅メダルに輝いたが、電撃引退。1年半、氷から離れた末に今季復帰して、SPでは坂本に3・55点差をつけていた。
千葉は3位、樋口新葉(24=ノエビア)は6位。来年2月に行われるミラノ・コルティナ五輪(オリンピック)の国・地域別出場枠が懸かっていた大会で、日本は上位2人の総合順位が「2位+3位」の「5」となり、同「13」以内まで与えられる最大3枠の五輪出場権を、日本に持ち帰ることに成功した。
坂本は、冒頭のダブルアクセル(2回転半ジャンプ)から順当に決めていた。3連続ジャンプこそ、わずかに出来栄え点(GOE)マイナスとなったものの、他は全て成功。フィニッシュ直後にガッツポーズして氷上を歓喜雀躍し、中野園子コーチから「完璧」とたたえられた。
本場の満員の大会場で上演した「シカゴ」に万雷の拍手が降り注ぎ、場内インタビューでは「アイム・ベリー・ハッピー! センキュー・ソー・マッチ!」。暫定首位のスケーターが座る席で「やばい、涙が止まらない」と感動に震える場面もあったが、同じく米国の伝説で1960年まで5連覇したキャロル・ヘイス以来の快挙には、届かなかった。
ただ、中野園子コーチが「必要な負けだったんじゃないか」と話したことに、自身も同感した。
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「やっぱり今までは何連覇とか、優勝候補とかいろいろあって、でも1回ゼロになれば、自分もたぶんスッキリするだろうし、追いかける立場になれたっていうのは、本当に自分自身、大きいなって思うので。それを今回の世界選手権で経験できたのは、すごく自分にとって大きな節目、大きなきっかけだと思います」
来年2月の五輪へ転機の大会になる。
◆女子総合成績
<1位>222.97点 アリサ・リュウ(米国)
<2位>217.98点 坂本花織(シスメックス)
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<3位>215.24点 千葉百音(木下アカデミー)
<4位>209.84点 イザボー・レビト(米国)
<5位>205.65点 アンバー・グレン(米国)
<6位>204.58点 樋口新葉(ノエビア)
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