
横浜、智辯和歌山ともにスタメンに県内出身の選手はひとりだけ。奥村頼人(タイガースジュニア)、小野舜友(ドラゴンズジュニア)、池田聖摩(ホークスジュニア)ら横浜には小学生時代から名をはせた選手が並び、智辯和歌山には藤田一波、渡邉颯人、宮口龍斗と3人のU−15日本代表選手が名を連ねる。
また横浜・駒橋優樹(駿台学園中)は中学軟式で日本一。さらに、横浜の小野、江坂佳史と智辯和歌山・山田凛虎は、東海中央ボーイズのチームメイトとして全国制覇を達成している。ほかの選手たちも実績を上げればきりがないほど、全国から野球エリートが集まる強豪校同士の対戦となった。
【いかに下位打線を抑えるか】
勝敗のポイントは2つ。1つめは下位打線を確実に抑えること。チーム打率は横浜が.300、智辯和歌山は4試合中3試合で2ケタ安打を記録して.377と両チームともに打線が好調。強力打線であることは間違いないが、7番以下の打者は力が劣る。
横浜は7番の駒橋以下、江坂、織田翔希の3人合計29打数5安打(駒橋14打数3安打、江坂8打数2安打、織田7打数0安打)。健大高崎戦は3人合計10打数0安打8三振だった。
一方の智辯和歌山は7番の大谷魁亜以下、渡邉、黒川梨太郎の3人で32打数10安打、打率.313をマークしているが、上位打線と比べると明らかにスイングが弱い。大谷、黒川は、中谷仁監督からの指示で1200グラムの重い木製バットを使っているが、それは「スイングスピードが遅い選手は木製バットを使っています」(1番の藤田一波)とチームメイトが証言するような理由からだ。大谷、黒川は逆方向へフラフラと飛んで、外野手の前に落ちる安打が多い。
両チームともに6番までは気の抜けない打者が並んでいるだけに、いかに下位の3人の打者を抑えられるか。横浜は最速152キロ右腕の織田、146キロ左腕の奥村、智辯和歌山もエース・渡邉、151キロ右腕の宮口と力がある投手を揃えており、下位打線のところで四死球やエラーなどが出てしまうと上位につながり、ビッグイニングになりかねない。つまり下位打線で確実にアウトを取ることが、勝利への必須条件になる。
【インコース攻めの重要性】
もうひとつは、インコースにどれだけ投げられるかだ。これまでの戦いを見ていて、横浜は徹底できている。西日本短大付の4番・佐藤仁に対して徹底して織田がインコースのストレートを投げ込んだ。
|
|
準決勝の健大高崎戦でも織田は昨秋9試合で3本塁打の3番の秋山潤琉、4番の小堀弘晴に対してインコースのストレートを4球、5球と続けて攻め、強打者の3人をいずれも無安打に抑え込んだ。
ただ、これは右対右の話。智辯和歌山は上位5人のうち4人が左打者だけに、同じように内角に投げきれるかがポイントになる。しっかり投げることができれば悪くても単打ですむが、シュート回転して真ん中に入ると危険な球になる。
準決勝の織田は変化球のキレがいまひとつだっただけに、内角への制球力がなおさらカギになるだろう。
左腕の奥村頼が投げれば左対左となり、織田が右打者に対して見せたような内角直球で攻められるか。ボール球でもしっかりインコースに投げることができれば、奥村頼はスライダー、チェンジアップがいいだけに、強打の智辯和歌山といえども攻略は容易ではない。
一方の智辯和歌山バッテリーは、アウトコース中心。これまでに対戦したのは千葉黎明、エナジック、広島商、浦和実と決して打線が強いチームではないため、問題なく抑えられたが、横浜相手に同じ配球では通用しない。
|
|
これまではインコースに投げる必要性がなかったのか、それとも投げるのが得意ではないのか。智辯和歌山投手陣の真価が問われることになるだろう。渡邉は準決勝で打球を右足に受けており、その影響が出るかも気がかりだ。
また、智辯和歌山投手陣で気になるのがけん制球の多さ。2回戦のエナジック戦では4回表までに8対1と大量リードしながら、4回裏一死一塁で渡邉が3球続けてけん制するなど必要以上に足を警戒しすぎて、6イニングで4四球を与えた。
昨秋の公式戦では9イニング平均で2.68与四死球だったが、自らリズムを悪くして制球を乱した。準決勝の浦和実戦でも宮口が5対0と大量リードしている7回表無死一塁で2球続けてけん制。さらに、その打者のバント処理をミスしてピンチを広げる場面があった。この傾向から、横浜はたとえ打てなくても足を意識させれば活路を見出せる可能性が高い。
総合力では横浜が上回るが、厳しいブロックを勝ち上がってきた心身の疲労がどう出るか。今大会は接戦が少ないだけに、決勝にふさわしい好ゲームを期待したい。
|
|