明治の子会社である道南食品(北海道函館市)の「北海道 生食感チェルシー」(864円、以下:生食感チェルシー)が、担当者も“想定外”というヒットを飛ばしている。
【画像】北海道限定で販売されている「生食感チェルシー」や「北海道サイコロキャラメル」、2月に限定販売した「北海道生食感チェルシー キャラメルサンド」など(計6枚)
終売した明治のキャンディー「チェルシー」のうちバタースカッチ味を、やわらかい食感の「生キャラメルガナッシュ」としてリニューアルした同商品。同年8月に北海道限定で発売したところ、道内の土産物店で品薄が続く事態となり、現在、増産体制を整えているという。
ロングセラー商品の形を大きく変えて売り出すことに「マイナスの印象を持つ方もいるのでは」――担当者は当初、そんな懸念も抱いていたというが、なぜここまで売れているのか。
●「キャラメルの設備」生かす
|
|
オリジナルのチェルシーは明治(当時は明治製菓)が1971年に発売。バタースカッチ味・ヨーグルトスカッチ味・コーヒースカッチ味の3種類を展開してきたが、「収益性の悪化」を理由に、2024年3月に終売した。市場環境や顧客ニーズの変化により、ハードキャンディー(砂糖を主原料とした固いキャンディー)の需要が低迷したことが背景にあるという。
しかし、長年親しまれてきたブランドを「なんとか継続したい」という明治の意向を受けて、子会社の道南食品が、新たな形での商品開発に着手することとなった。
道南食品は、明治グループ傘下でキャラメルなどの土産菓子を生産する菓子メーカーだ。2016年に全国販売を終了した「サイコロキャラメル」の生産も担っており、明治がキャラメル事業から撤退した後も、北海道限定商品としてブランドを引き継いだ実績を持つ。
しかし、リニューアル当初は引き合いが多かったサイコロキャラメルも、次第に需要が下火となっていたことが課題だった。同社の山谷真信氏(取締役業務部長)は、「『生産設備が100%稼働している』という状態が少なくなってきており、これを活用して何か作れないか、と模索していたところでした」と、生食感チェルシーの開発背景を説明する。
●「チェルシーの味」再現に苦心
|
|
ブランドを引き継ぐに当たっては、ガナッシュ状の商品を企画した。キャラメルの生産設備を生かしながら、「キャラメル以外」の棚に同社の商品展開を広げる狙いもあった。
フレーバーはバタースカッチ味に決定。「北海道産」のバターや生クリームにこだわり、「北海道限定」の商品として売り出すことで、“お土産需要”に照準を定めた。道南食品の木村幸乃氏(技術・開発部 開発グループ)は、「特にチェルシーになじみのある、大人の世代をターゲットにしています」と話す。
開発にあたっては、「従来のチェルシーファン」の目線を強く意識したという。「『生食感』の新しさを表現しつつ、バターの濃厚な味わいを再現できるよう、生キャラメルとチョコレートを練り合わせて試作を繰り返しました」(木村氏)
8月に道内の土産物店などで発売したところ、同社の想定を上回る勢いで売り上げを伸ばし、品薄が続いた。2024年度の出荷総額は7億円を見込む。主力のサイコロキャラメルは2億円を見込んでいることから、一躍ヒット商品に躍り出た格好だ。
発売月が観光シーズンに重なったことも「予想以上に売れた」要因だと山谷氏はみており、“土産物路線”の奏功ぶりがうかがえる。苦心した「チェルシーの味」の再現も、好評を博しているようだ。
|
|
「『生食感』にマイナスの印象を持たれる方もいらっしゃるのではないかと考えていましたが、SNSでは思った以上に『おいしい』『気になる』といったプラスのご意見が多いです。生食感という新しさ、かつ北海道限定という要素に、気になって購入してくださる方が多いのでは」(木村氏)
●新商品も投入
現在は、ゴールデンウイーク以降の行楽シーズンに向けて「生産体制を整え、来年度に備えています」と山谷氏は話す。
バリエーションも広げている。「ヨーグルトスカッチ味」についても、販売を望む声が多く寄せられていたことから、商品化に向けて開発に着手。一般向けにはまだ販売されていないが、3月24日には、函館市への「ふるさと納税」の返礼品として受付を開始した。
2025年2月には、札幌市内の一部店舗で「北海道生食感チェルシー キャラメルサンド」を期間限定で販売した。こちらは焼き菓子を練り込んだキャラメルチョコレートで、生食感チェルシーを挟んだ商品だ。「予想以上の好評」で2月中に売り切れとなったことから、本格発売を検討しているという。
生食感チェルシーは、2025年度に出荷総額20億円を目指している。「北海道限定」という特別感で訴求してきたことから、現時点で「道外での発売予定はない」という。新たなラインアップの投入によって、今後も成長を続けられるか。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。