<フィギュアスケート:世界選手権>◇29日(日本時間28日)◇第3日◇TDガーデン◇女子フリー
【ボストン=藤塚大輔、松本航】地元米国の“天才少女”が衝撃のカムバックを果たした。初の世界女王に輝いたのは、3季ぶりに復帰した19歳のアリサ・リュウ。首位だったショートプログラム(SP)に続いてフリーでも1位の148・39点とし、合計222・97点の完全優勝で坂本の4連覇を阻んだ。
米国女子では06年キミー・マイズナー以来、19年ぶりの快挙。五輪前年の自国開催の世界選手権を制し「今季最高の演技」と声をはずませた。
最終滑走で観衆を総立ちにさせた。全7本のジャンプを決め、3つのスピンとステップシークエンスでも全てで最高難度のレベル4を獲得。全要素の出来栄え点で加点を得たのは24人中1人だけで「練習でさえ、これほど良いものはなかった」とほほ笑んだ。
自身の性格は「外交的で人と話すのが好き」という新女王。優勝後に抱擁した坂本からも「明るさ、元気さ、優しさ、人の良さがパワーアップした」とたたえられた。
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天才と称されるゆえんは、その道のりにある。史上最年少の13歳で全米制覇。男子でも難しい4回転ルッツを習得し、14歳のころには国際スケート連盟公認大会において女子で初めて4回転ジャンプとトリプルアクセルを同時成功させた。
22年北京五輪でも6位となったが、同年世界選手権で銅メダルをつかむと、16歳にして電撃引退を表明。「スケート以外のことがしたい」とエベレストを登山したり、進学したカリフォルニア大ロサンゼルス校で心理学を学んだりした。スケート靴は1年半にわたってクローゼットの奥にしまい、競技も全く見なかった。
そんな中、昨年1月に「スケートはどんなものだったかな?」と軽い気持ちでリンクへ。20分ほどウオームアップをした後に、いきなり3回転サルコーを着氷してみせた。4月には全5種類の3回転を降り「もう1度やってみよう」と復帰を決断。当初は「今季はジャンプができるようになってスタミナを取り戻したい」と結果を度外視した目標を立てていたが、それを大きく上回り、一気に世界の頂点へ立った。
競技を離れた時間を経た今、心身ともに充実感が漂う。
「自分は全く別人になった。ハードな練習もたくさんの喜びが見つけられる。後悔したことは一度もない。(引退も)して良かった」
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円熟味を増したリュウが世界女王の称号をひっさげて、ミラノ五輪への争いに加わった。
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