【ハイキュー‼×SVリーグ】SAGA久光の荒木彩花は度重なる大ケガから復帰田中龍之介のように逆境を跳ね返す

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2025年03月30日 07:20  webスポルティーバ

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『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(43)

SAGA久光スプリングス 荒木彩花

(連載42:SAGA久光の平山詩嫣は月島蛍と「少し似たタイプ」100点に繋がる75点がリードブロックに共感>>)

 2025年1月に行なわれたSVリーグのオールスターゲームで、SAGA久光スプリングスの荒木彩花(23歳)は主審を買って出た。自らイジられ役になり、大会を盛り上げた。

「騒がしい人間なので......」

 本人は恐縮したように言う。明朗なキャラクターだが、実は照れ屋で、おどけた様子も見せる。

 一方、コートの上の荒木はパリ五輪日本代表のミドルブロッカーで、SVリーグではトップクラスの実力者だ。身長185cmと体格にも恵まれ、ブロックでシャットアウトする姿は見応えがある。

 攻撃面でも、クイックで跳び、ボールを叩き落とすような一撃は迫力満点。囮としても味方を生かし、敵を恐れさせる。トレードマークのゴーグルで空中戦を制する様子は雄壮だが......。

 荒木はどんな選手、人間なのか?

荒木がバレーと巡り会ったのは少し遅かった。中学の入学式で、バレー部の顧問に声を掛けられた。

「バレー部に来ないか?」

 当時から背が大きかった彼女は、バスケットボールかハンドボールをやるかで迷っていたが、結局はバレー部の体験に行った。

「体験は1週間でしたが、1日目から、なぜか『もしかしたらできるかも』という自信があって入部しました。1年の頃はずっと走る練習で、ときどきサボってましたね(笑)。3年生が卒業するくらいから、徐々に『バレーと向き合おう』となっていきました」

 彼女はそう言ってはぐらかすが、こうも続けた。

「できることが増えていくのが楽しかったですね。オーバー(ハンドパス)が真っ直ぐ飛ぶ、といった初歩的なところから。最初は全然続かなかったパスが、5回、10回と回数が増えていくなど、そういったうれしさにハマったのかなって」

 ただ、長く続けるとは思っていなかったという。

「バレーは中学でやめるつもりでした。結局は高校でも続けましたが、推薦で進学したのでやめるわけにいかなくて、高校2年までは『社会人まではいかない』と思っていました。バレーボールに人生をかけるタイプではなかったです」

 彼女は言葉を継いだ。

「本格的にやると思っていなかった理由は、中・高での自分のプレーに自信が持てなかったからです。アンダーの代表に選出された時も『身長で選ばれているだけ』と感じていました。バレーは中学からやり始めたので、周りと比べて遅いし、『通用しない』と思っていましたし、将来を考えるとバレーに打ち込もうとは思わなかったんです」

 荒木はそう明かすが、誰よりも"練習の虫"である。久光のチームメイトたちが目を丸くするほど、限界、それ以上まで自分を追い込んできた。だからこそ、ケガも多くなった。

 2021年、右膝外側半月板を損傷。2023年には右足首の靭帯を損傷。2024年には左手を骨折。それぞれ、復帰まで数カ月から1年かかる大ケガだった。コートに戻って調子が上がってくると、またケガをする。心は打ちひしがれた。それでも立ち上がってきた彼女は不屈だ。

「足首のケガは、OQT(パリ五輪予選)前で精神的にしんどかったです。膝もそうですが、足首はジャンプに影響するので時間がかかってしまって。左膝も手術していたので、十分に両足が使えない状態でした 。復帰してからも高さが出なかったですし、感覚が戻るのに1年以上かかりました」

 それでも、彼女はコートで夢を見る。

「ケガでつらくて、バレーから離れようと思った時期もあります。でも、『今だけの感情だから』と踏みとどまれました。もしバレーをやめたら、他の選手が活躍する姿を見た時に純粋に喜べるのか。そうはならない、と思いました。自分がコートに戻った姿を考えたほうがウキウキしたんです。自分からバレーを切り離したら、半端な人間になっちゃう。おかげで、今もバレーを続けられています」

 最後に訊いた。

――タイムマシンで5年前の久光に入団した日に戻り、自分に会えたら何を伝えますか?

「これまでのケガは防げるものだったとは思います。納得がいくまで練習しちゃうので、オーバーワークが多いんです。体が痛くても無視して練習していたので、『練習量のコントロールをしたほうがいいよ』って伝えるかもしれません。それを聞いた(5年前の)自分はどう答えそうか? 『そんなの関係ない!』って言うでしょうね(笑)」

 全力でバレーと対峙してきたからこそ、今の荒木がある。ふわりとした明るさは、強さの裏返しだ。

【荒木彩花が語る『ハイキュー‼』の魅力】

――『ハイキュー‼』、作品の魅力は?

「現実離れしていなくて、絶対にできないな、という技が出てこないところですかね(笑)」

――共感、学んだことは?

「烏野vs稲荷崎戦で、烏野の田中(龍之介)の調子がよくなくて、トスを呼ぶけどセッターに選択してもらえない場面がありましたよね? 決めきる信頼がなくてトスを上げられなかった、と感じる田中の気持ちがわかるんです。

 自分も調子が悪いと空回りしちゃうタイプで、『やばい、やばい』としか思えなくなってしまう時があって。プレッシャーを感じているとセッターに伝わるし、ミスが多いと相手のブロッカーもマークを捨ててくる。あれは、メンタルにくるんですよ」

――印象に残った名言は?

「やっぱり稲荷崎戦での、田中の『ところで平凡な俺よ 下を向いている暇はあるのか』ですかね。でも、烏野の武田先生の『負けは弱さの証明ですか?』もグッときますし、影山(飛雄)が日向(翔陽)に言う『「諦めない」って口で言う程簡単な事じゃねぇよ』も好きですし......選べません(笑)」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位は稲荷崎の宮ツインズ! 侑も治も自由奔放で囚われない感じで、関西弁なところも含めて好きです(笑)。試合中に、変人速攻(日向と影山のコンビプレー)をマネして挑戦してみる場面もうらやましい。自分は自信がないとできないタイプなので。

 2位は烏野のツッキー(月島蛍)。バレーに無関心そうだけど、冷静に考えている感じが好きです。私と同じようにゴーグルをしていますし(笑)。私の場合はケガ予防ですけどね。社会人1年目に相手選手のブロードが目に当たって、1週間見えなくなって『同じ衝撃を受けたら失明する危険がある』と言われたので。3位は、音駒のクロ(黒尾鉄朗)ですね。音駒が粘りのバレーをするチームで、リードブロックに対する考え方も共感できます」

――ベストゲームは?

「烏野vs白鳥沢学園戦です。白鳥沢学園の絶対的エース、ウシワカ(牛島若利)をツッキーが止めるシーンとか、いいですよね。青葉城西とのインターハイ、春高予選の2試合はどっちもいいですし、迷います(笑)」

【プロフィール】

荒木彩花(あらき・あやか)

SAGA久光スプリングス

2001年9月2日生まれ、福岡県出身。身長185cm・ミドルブロッカー。中学からバレーを始め、3年時にはJOCジュニアオリンピックカップの最優秀選手に選ばれる。東九州龍谷高校では、3年時に春高バレーを制覇。卒業後、2020年に久光スプリングス(現・SAGA久光スプリングス)に入団。度重なる大ケガを乗り越えて活躍し、2023年から日本代表でも活躍。2024年のパリ五輪に出場した。

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