「日本の対米開戦」を煽った人物がいる!? 経済評論家・上念司氏が日米を争わせた黒幕を暴く

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2025年03月30日 09:01  日刊SPA!

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※写真はイメージです(以下同)
 昭和史における謎の一つともいわれる「日本の対米開戦」。
 なぜ、当時の日本人は冷静な判断を失い、無謀な戦争へと突入したのか。「その陰には、実は巧妙な煽動工作があったことが、ヴェノナ文書や戦後の尋問記録などから明らかになりつつある」と語るのが、『保守の本懐』を上梓したばかりの作家で経済評論家の上念司氏だ。

 日米両国を争わせ、資本主義国家を弱体化させる目的で仕掛けられたという対米開戦の黒幕に迫る。

(本記事は、『保守の本懐』より一部を抜粋し、再編集しています)

◆日本の対米開戦を共産党主義者たちが願った理由

 日本の対米開戦を徹底的に煽ったのは誰か? それは共産主義者です。

 まさに保守思想の宿敵、設計主義の一形態である共産主義がこの謀略を仕掛けたことは間違いありません。

 ただし、陰謀論だと批判されないようにあえて付け加えますが、日本はソ連の命令で戦争をしたわけではありませんし、当時の国民の声に押された政府が主体的に対米開戦を決断したことは間違いありません。

 ただ、問題はそこではないのです。共産主義者たちが経済的に困窮した国民をデマと陰謀論で煽り、対米開戦へと仕向ける努力をしていた。それが事実であるということです。

 ソ連および共産主義者たちは日本とアメリカ双方の政治・外交の中枢にスパイを送り込み、日米両国の対立を煽ることで、最終的に戦争を引き起こすよう仕向けました。その目的は、資本主義国家同士を戦わせることで双方を弱体化させ、共産主義革命の拡大を狙うことにありました。

 この主張の裏付けとして重要な証拠とされるのが、ヴェノナ文書や戦後の尋問記録であり、これらの記録によりソ連、共産主義インターナショナル(コミンテルンおよび後継組織のコミンフォルムも含む)のスパイ活動や情報操作の一端が明らかになっています。

◆でっち上げられた「世界征服」の文書

 例えば、「田中上奏文」という有名な偽書は、1927年に日本の首相・田中義一が昭和天皇に提出したとされる偽文書で、アジア侵略と世界征服を目指す日本の戦略を明らかにしたとされる内容になっています。

 その内容を要約すると、「日本はまず中国を征服し、アジアを制覇する。これを基盤として、世界征服を目指す」という荒唐無稽なものです。その段階は以下の通りです。

・中国侵略:満洲・モンゴルを起点として中国を支配する。

・アジア支配:中国を足場に、東南アジアやインド、さらには西洋の植民地を制圧。

・最終的には西洋列強(アメリカやイギリスなど)との戦争を通じて世界を支配する。

 これらの日本の侵略行為は、自国の繁栄とアジア全体の解放のためであると主張し、文書のスタイルは、田中義一首相が昭和天皇に直接報告する形式で書かれています。

 もちろん、こんな上奏は行われていないし、この文書自体がでっち上げのデタラメです。しかし、このプロパガンダを真に受けさせるような悪手を日本は打ち続けてしまいました。それが諸外国の誤解を招きドツボにハマる。まさに国難でした。

◆日本人が対米開戦を願った背景は、経済的困窮

 では問題の核心に迫りたいと思います。なぜ当時の日本国民は対米開戦の決断をしたのか?

 もし、日本が1941年の対米開戦を3か月先送りしていたら、ドイツ軍の東部戦線における劣勢は明白になりドイツに味方して参戦することのデメリットは明らかになっていたことでしょう。

 例えば、ドイツに好意的な中立を保ちながら、だらだらとこの戦争をやり過ごせば、戦後始まる米ソ冷戦によってアメリカの対日姿勢は大きく変化していたのではないでしょうか? 

 実際にスペインという国はフランコ独裁政権が、戦時中はドイツに好意的な中立を保ちましたが戦後西側の一員にシレっと加わっています。日本もなぜここまで強かにできなかったのか?

 一言で言うなら日本人はキレてしまった。支那事変の泥沼化、欧米から相次ぐ経済制裁は日本経済の長期低迷を招き人々は経済的に困窮していきました。

 この状況を根本的に変えたい。そのためには蒋介石を屈服させ支那事変を終わらせる必要がある。しかし、蒋介石は欧米による軍事援助が支えている。

 ならば! ABCD包囲網を打破する根本的な解決策として、アメリカに宣戦布告せよ!

 ザックリ言うとこんな感じです。

 人々が急激な変化を求めた。その矛先が国内的な革命ではなく、対外的な戦争に向かった。これが対米開戦の根本原因です。

◆日本人の欠点は「根本問題のみに執着する癖」

 この点について、東洋経済新報社の石橋湛山(戦後の総理大臣)は次のように述べています。

 日本人の一つの欠点は、余りに根本問題にのみ執着する癖だと思う。

 この根本病患者には二つの弊害が伴う。第一には根本を改革しない以上は、何をやっても駄目だと考え勝ちなことだ。

 目前になすべきことが山積して居るにかかわらず、その眼は常に一つの根本問題にのみ囚われる。

 第二には根本問題のみに重点を置くが故に、改革を考うる場合にはその機構の打倒乃至は変改のみに意を用うることになる。そこに危険があるのである(参考:昭和11年「改革いじりに空費する勿れ」石橋湛山全集10巻から)。

<文/上念 司 構成/日刊SPA!編集部>

【上念司】
1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

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  • 【毒】大丈夫。今度戦わされる相手は中国ですから、思いっきり叩いてやりましょうw
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