※画像はイメージです 公共交通機関の車内では、スマホは着信音が鳴らないように設定し、通話は控えるというのが一般的なマナーだろう。だが、一部にはこうしたマナーを守れず周囲の乗客に迷惑をかける者も存在する。
現在主婦の恵さん(仮名・38歳)は、8年前に強烈なマナー違反乗客に遭遇したそうで、「今でも忘れられない」と語る。はたしてそれはどんな乗客だったのか。
◆バス停で大胆にも割り込む中年女性
その日は夕方ごろ、自宅の最寄り駅のスーパーで買い物をしていたという。雨で足元が悪く、当時妊娠中だった恵さんは、大きな買い物袋を提げて、なんとかバス停にたどり着き、帰りのバスを待っていた。
「私がバス停に着いたときにはすでに10人以上並んでいました。帰宅ラッシュの時間帯かつ雨の日だったということもあり、いつもよりバス停が混雑していたように思います。
しばらくすると上下ジャージ姿の小太りな中年女性がズカズカとこちらへ歩いてきました。バス停に並ぶんだろう、と思った次の瞬間、堂々と先頭に割り込んでいったんです」
50代程度だったというその女性は、バス停に着くやいなや、なんと大胆にも列の先頭に立ったんだとか。
「あまりにも大胆な行動に二度見してしまいましたよ(苦笑)。いちばん前に並んでいたのは、40代くらいのスーツを着たサラリーマンの方でしたが、『割り込むのはダメだろ、ちゃんと並びなさい!』と女性に注意していました」
その女性は注意されたことが気に食わなかったのか、鬼の形相でそそくさと最後尾にいた恵さんの後ろに並んだそうだ。
◆一度は列に並んだと思ったら……
鬼の形相のまま、何やら独り言をつぶやく中年女性に、恵さんは恐怖を感じるほどだったとか。
「自分が妊娠中ということもあり、かなりナーバスになっていました。その女性は『バスが遅い』などと文句を言いながら貧乏ゆすりをして、なんだか落ち着かない様子だったんです」
そんななか出発時刻よりだいぶ遅れてバスが到着。列に並ぶ人たちは傘を閉じてバスに乗り込む準備をする。そしてバスの扉が開いた瞬間、またしても中年女性があり得ない行動に出た。
「並んでいる人たちを無理やり押しのけて、我先にとバスに乗り込んだんです。周囲の人は唖然とするのみ。私は肩に激しくぶつかられて、転倒しかけてしまいましたが、前に並んでいた女性が支えてくれたおかげでなんとか無事でした。本当に危なかったですよ……」
恵さんはその女性に一言注意しようとしたそうだが、逆ギレされて危害を加えられるかもしれないと思い、お腹の子のことも考え何も言わずに我慢したそうだ。
◆乗車後、またしてもマナー違反炸裂
バスに無理やり乗り込んだ中年女性は、二人掛けの座席を独り占めし、ご満悦な様子だったという。周囲の乗客も誰も注意することはなく、“関わったらいけないタイプの人物”だと認識していた様子。だがこの中年女性の暴走はまだ止まらない。
「バスが出発してからしばらくすると、中年女性の携帯電話の着信音が鳴り響きました。どうするのか観察していたところ、案の定電話に出て、大声で通話し始めたんです」
マナー違反のダブルコンボである。車内に響き渡る女性の大声を聞き、バスの運転手は「バスの中での通話はご遠慮ください」と一言注意した。
しかしそれでも通話することを止めない女性。バスの運転手はその後3、4回注意するも一向に止めないため、ついに運転手がブチ切れた。
「運転手さんはかなりの怒り口調で、『電話してる方!バスの中では、電話やめて下さいよ!迷惑です!』と強く注意してくれました。そうしてやっと女性は渋々電話を切り、不機嫌な様子で次の停留所で降りようとしていました」
◆「天罰か?」と思えるアクシデント
その女性がバスを降りようとした瞬間、「天罰か?」と思えるようなアクシデントが起きたという。雨に濡れた車内の床で女性は派手にすっ転び、持っていた小銭ポーチの中身をぶちまけてしまったそうだ。
「よく漫画でバナナの皮で転ぶシーンがありますが、本当にそんな感じだったんです。失礼ながら『いい気味だなあ』と思ってしまいました(笑)」
散らばった小銭を周囲の人に拾ってもらいながら、女性は礼を言うこともなく顔を真っ赤にしてバスから降りていったという。
――列への割り込みや大声での通話など、公共交通機関におけるマナーを守らない人は一定数存在する。この中年女性のエピソードを反面教師として、乗客同士がお互いを思い合い、気持ちよく利用したいものである。
(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)
【瑠璃光丸凪】
編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。興味のあるジャンルは、アングラ・音楽・ファッションなどサブカルチャー全般と、ジェンダー問題、政治経済問題について。趣味はレコード集め。