「羊肉はアスリートにも人気」 ラム肉の伝道師が語る“スパイス×ラム肉”の可能性

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2025年03月30日 22:00  クックパッドニュース

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クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。今回は、スパイスハンターのシャンカール・ノグチさんとラムバサダープロジェクト責任者の三橋一法さんがゲストの後編です。

日本で消費される羊肉の99%以上が輸入もの

小竹:オーストラリアでもスパイスカレーは食べられているのですか?

三橋さん(以下、敬称略):食べます。オーストラリアは多民族国家なので、スパイスが日常に溶け込んでいる。アボリジニという先住民の人たちは薬として使ったりもします。「ブッシュ・タッカー」というのですが、自生しているスパイスやハーブもよく使うので、オーストラリアはインド系やスパイス系の料理が実はすごく多いです。

シャンカールさん(以下、敬称略):盛んでしたね。メルボルンにもすごくおいしいインドカレーのお店がありました。あと、フュージョンで、小皿で1皿ずつ出すような料理とかね。

三橋:いろいろな国のバックグラウンドがあるので、最近はしそや味噌、わかめ、昆布などが人気で、和の食材や香辛料もかなり浸透していると思います。

小竹:調理ですが、ついにここでラム肉が入ります。


シャンカール:このくらい厚く切るといいですね。

三橋:今回はオージーラムを使っていますが、日本で消費されている羊の肉は99%以上が輸入ものなんです。国産を増やそうという流れもあったのですが、戦後の肉の輸入の自由化もあり、ラムは生産性も牛や豚に比べて低いので、国産が普及しなかった。なので、今は99%以上が輸入で、7割以上がオーストラリア産です。

小竹:やはり、日本だとなかなか難しい?

三橋:湿度が高いし、土地もそんなにない。ラムは大平原の牧草でのびのびと育てるので、なかなか日本ではそこがマッチしなかったというのはありますね。

小竹:世界で一番羊を飼っているのはオーストラリアですか?

三橋:実は世界で一番羊を飼っている国は、ダントツで中国なんです。ナイジェリアやインドも多い。人口が多いというのもありますが、羊の数も多いんです。

シャンカール:ナイジェリアの羊の肉はおいしいんですか?

三橋:食べたことないんですよね。ただ、アフリカはイスラム系の方も多いですからね。あと、結婚するときに結納返しみたいな感じで、旦那さんの実家から羊を30頭もらったなんて話を聞くこともあります。だから、お金と同じくらいの価値があるものと言われていますね。

小竹:それは自己消費だと思いますが、輸出でいうとやはりオーストラリアが多いのでしょうか?

三橋:そうなんです。自分たちで消費しているのは中国などですが、輸出に関してはオーストラリアが世界第1位で、次いでニュージーランド。これがTOP2です。日本は生産量が少ないこともあって、オリーブオイルと一緒で、輸入に頼ると決めたことで関税は0%です。

小竹:料理のほうですが、お肉が焼けてきましたね。

シャンカール:肉の表面を表裏焼いたので、濃厚な味わいをつけるためにヨーグルトを加えます。最初のテンパリングがバターとカルダモンだったので、ヨーグルトがすごく合います。ココナッツミルクなどで煮込むと南インド風になり、ヨーグルトだと北インドになります。

小竹:同じ乳製品でも違うのですね。

シャンカール:日本は酸味の強いものから濃厚でクリーミーなものまでヨーグルトの種類もいろいろとあるので、それを選んでカレーを作るのも面白いですよね。

小竹:今日使うのはどういったヨーグルトですか?

シャンカール:馴染みやすいので、クリーミータイプのヨーグルトを使います。それにお水を100ccほど加えます。ヨーグルトだけよりも水を加えたほうがさらに馴染みやすくなるんです。これを煮込んだらパクチーとガラムマサラを最後に入れます。

ラム肉とスパイスの可能性が広がってきている

小竹:ラムチョップ以外にラム肉が入ってきたのはここ数年ですよね?

三橋:北海道は昔からありましたが、本州でよく見るようになったのはここ数年かもしれないです。コロナ禍にあまりお金が使えずに買い控えがあったときに、やはり鶏や豚のほうがみなさんよく食べる。でも、消費者も飽きてきて、ちょっと違うお肉を提案したいというときにラムが注目されて、全国のスーパーでもラム肉を扱い始めたんです。

小竹:外食ではラム肉ブームが何度かありましたよね?

三橋:ありましたね。2005年くらいがジンギスカンブームでした。そのときは「BSE」という狂牛病の影響の代わりになるお肉みたいな捉えられ方をして持ち上げられたのですが、文化などが馴染んでいなかったので一気にトーンダウンしてしまいました。

シャンカール:やはりブームはすぐに落ち着いちゃいますよね。

三橋:それで2015年のひつじ年くらいから、ラムバサダーとともに徐々に増えてきた感じですかね(笑)。

小竹:料理のほうが仕上がってきました。

シャンカール:最後は味を見ながら、塩が足りないと感じたら少し足す感じでいいです。最終的には塩で味を決めます。その後すぐにパクチーを入れます。尖っていた味をうまく馴染ませてくれるのがパクチーなんです。そして、煮込むと香りが飛ぶので、いい香りをつけるためにガラムマサラを入れます。

小竹:ラム肉の外食ブームは何度かありましたが、家庭の中ではなかなか広がらない中、少しずつ変化も起きてきていますよね?


三橋:ジンギスカン以外の可能性が徐々に広がってきた感じはします。それはスパイスとともにでもあるかもしれないです。割と身近になってきたのでね。

シャンカール:スパイスが身近になったのは、2013年ぐらいから徐々に小売商品が売れてきました。家庭で揃えて、自分でスパイスカレーを作るみたいな人が増えてきたのでしょうね。東京カリ〜番長の『世界一やさしいスパイスカレー教室』という本は、2016年に発売してすごく売れたんです。スパイスカレーを簡単に作り易く紹介した本で一番登りつめたタイミングだった気がします。

小竹:ラムバサダーには、ほかにはどんな方がいらっしゃるのですか?

三橋:本当にいろいろな方がいて、お肉屋さん、料理家の方、町場のシェフ、ホテルのシェフもいらっしゃいますし、ユニークなところでいうとゆるキャラもいます。

小竹:ゆるキャラ?

三橋:札幌市公認のサッポロスマイルPR大使をやっているジンギスカンの「ジンくん」も仲間になってくれています。ラムバサダーはちゃんとユニフォームもありますし、遠方から来てくれる熱烈なファンもいらっしゃいます。だから、いろいろなジャンルの方がいていいかなと思っています。

ラム肉は“栄養価”もとても高い!


小竹:シャンカールさんの作ったカレーが完成しましたのでいただきたいと思います。

三橋:見ていて思いましたが、本当になんてことないんです。ラム肉はどう調理すればいいのかがわからないとよく聞きますが、牛肉や豚肉の代わりに使っただけです。そして、食べてみたら牛とも豚とも違うし、ネガティブなイメージを持たれがちな臭みも全くない。

シャンカール:全然ないですよね。

三橋:スパイスとの相性も最高ですし、みなさんにもっと食べてもらえるお肉だなと再確認しましたね。

小竹:後味にふわっとラムのおいしさがスパイスの香りと一緒にくるのもいいですよね。

シャンカール:牛肉のほうが味は強い。ラム肉のほうがさっぱりしていて弱い。なので、その分食べやすいし、ヘルシーで体にもすごくいいのでおすすめです。

小竹:ラム肉は栄養価も高いのですか?

三橋:すごく栄養価は高いです。たんぱく質、鉄分、亜鉛、ビタミンB群の4つの栄養素が豊富に含まれているので、女性にもすごくうれしいですよね。亜鉛はアンチエイジングや疲労回復にいいので、老若男女全てにおすすめできるお肉がラム肉だと思います。

小竹:アスリートやモデルの方もよく食べているみたいですね。

三橋:栄養価が高いのでアスリートはラム肉が好きな方が多くて、キャンプや合宿にも持ち込んで食べていると聞きます。ビタミンB群が豊富なので美肌にもいい。毎日食べろとは言わないですが、月に数回はレパートリーの1つに加えてもらえたらなと思います。

小竹:ハマる人も増えるかもしれないですね。

三橋:肉じゃがの具にラム肉を使ったり、ラム肉を生姜焼きにしたりしてもおいしいです。ジンギスカンのイメージが強いですが、焼肉の1アイテムとしてもおいしい。ラム肉はいろいろな宗教の方が食べられる唯一の赤身肉と言われていて、世界で一番レパートリーも多いと思います。

小竹:おすすめのお店をそれぞれ教えてください。

シャンカール:僕はフレンチの「アマラントス」ですね。宮島由香里シェフは和食のときはみりんの使い方が上手だし、ラム料理ではソース作りが上手で、とてもおいしいです。お店が今度、銀座に移るみたいですね。

三橋:宮島由香里シェフはラムバサダーのメンバーでもあって、お店もちょっとアッパーな感じですごくいいですよ。僕はもう少しカジュアルな感じの「味坊」をおすすめします。羊が好きな方は東京に来たら必ず行くみたいな有名店です。『孤独のグルメ』とかにも出ていますが、グループのお店は神田と御徒町にあって、今は12店舗くらいあるのかな。福岡にもあって、今度は静岡にオープンするとかで、勢いが止まらないんです。

小竹:すごいですね。

三橋:中国東北料理のお店なのですが、シンプルな味付けで自然の調味料を使っていてすごく食べやすい。びっくりするくらいラム肉のイメージが変わります。

シャンカール:味坊の梁(りょう)さんもラムバサダーのメンバーです(笑)。

三橋:あとは、「羊SUNRISE」もいいですよね。ジンギスカン界で最も有名と言われてもおかしくないお店です。彼らがユニットで作っている、虎ノ門ヒルズにある「ヒツジパブリック」というお店も注目ですね。

小竹:ラム肉のお店って、何店舗くらいあるのですか?

三橋:ジンギスカンで検索したら、全国で4〜500くらいはあるとは聞いていますけど、今はもう少し増えているかもしれないですね。北海道や東京だけではなくて、関西でもラム肉のおいしいお店がたくさんあって、ラム串とかも注目されていて、ジンギスカンだけではないというのがいいですよね。

小竹:いろいろと使えるということですよね?

三橋:焼き鳥屋さんに一品あったり、カレー屋さんにあったり、多様性が出てきているのがラムらしいなという感じですね。

小竹:2人にとって“おいしい”とは?

シャンカール:家庭でおいしい料理を作ってもらうために、僕はインドからスパイスを仕入れています。おいしいものを作ってもらって、おいしいという笑顔が広がってほしい。その一役を担えたらいいなと感じています。

三橋:個人的には、僕は1人で食事をするのが好きではないので、空間とか誰と食べるかとか、そういったシチュエーションでおいしいはすごく変わると感じています。

小竹:ラム橋さん的には?

三橋:おいしいって、「美しい味」と書きますよね。「羊」が入っているんですよ(笑)。「大きい羊」と書いて「美しい」ですよ。それが「味」になったら「美味しい」じゃないですか。

小竹:たしかに(笑)。

三橋:漢字は中国大陸から来ていますけど、もともと羊って、大きければ大きいほど、肥えた羊ほど美味しいという風に言われてあの字が成り立っているので、やはり羊はおいしいですよね(笑)。

小竹:素晴らしい締めですね。さすがです(笑)。最後に、2人が今後やってみたいことを教えてください。

シャンカール:世界のスパイスを探して回っているので、世界の1品をベースに本を書いてみたいです。それと同時にYouTube番組みたいな動画も作れたらなとも思っています。

三橋:僕は次のステージは家庭でのいろいろなラム肉のレシピやレパートリーを知りたいです。なので、クックパッドさんと一緒にレシピコンテストを開催するのもいいですね。ラム肉でこんな料理を作ったと消費者の方が紹介することで、もっともっと身近になると思うので、消費者の方を巻き込んだ企画をやりたいですね。

小竹:では、ぜひ一緒に企画しましょう。

三橋:ぜひ前向きにご検討ください。ちょっと仕事っぽくなってしまってすみません……(笑)。家庭で食べられるラム肉をどんどん増やして、とにかくみなさんに食べてほしいです。

(TEXT:山田周平)

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【ゲスト】

第25回・第26回(3月7日・21日配信) シャンカール・ノグチさん&三橋一法さん

シャンカール・ノグチさん


インドアメリカン貿易商会 代表取締役・貿易商・調合師/インドから輸入しているスパイスでインドカレーのレシピを作成。運営するwebサイト「SPICE TOKYO」ではスパイスやカレーにまつわる情報を発信。ラムバサダーや東京スパイス番長、THE HERBSMEN、スパイスと酒の研究室に属し、それぞれのユニットでイベントを開催して、カレーを作ったり、スパイスやハーブを通して世界を巡り、商品開発を行っている。近著にビールと相性抜群のカレーやスパイス料理を紹介するレシピブック『クラフトビールのためのスパイスカレー』(ステレオサウンド)他著書にインドカレーレシピ本『スパイスの世界へようこそ!』(河出書房新社)『心とカラダにやさしい316種 増補改訂 ハーブ&スパイス事典』(誠文堂新光社)などがある。

X: @SPICETOKYO1
Instagram: @shankar.noguchi

三橋一法さん


日本市場でオージービーフ&ラムのマーケティングやプロモーションを行うオーストラリアの牛肉・羊肉の生産者団体ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア(MLA)のフードサービス・マーケティングマネージャー/大学卒業後、アメリカとオーストラリアで2年間、地元の小中学校、高校で日本の文化を伝える日本語教師アシスタントとしての経験を積む。帰国後、オーストラリアのグルメ食品を輸入する会社に勤務。その後、オーストラリアとの縁が重なり、オージービーフとオージーラムをプロモーションする仕事に出会う。2015年の未(ひつじ)年からスタートしたオージーラムPR大使『Lamb+Ambassador=Lambassador(ラムバサダー)』プロジェクトの生みの親であり責任者。同プロジェクトは、食品産業新聞社の第50回『食品産業技術功労賞・マーケティング部門』を受賞。さらに2022年から世界10カ国以上の国と地域で総勢70名以上のラムバサダーたちが世界中で活躍するグローバルプロジェクトに発展。自身は現在、日本で20名のラムバサダーを率いるマネージャー兼「ラム橋」として彼らと一緒にラム肉の魅力を全国各地で伝えている。

HP: MLA

【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子


クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家。 趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。

X: @takakodeli
Instagram: @takakodeli

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