『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.43【コミックス派はネタバレ要注意!】

0

2025年03月30日 23:20  週プレNEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週プレNEWS

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが2月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが2月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第480話 かつてのロボ超人!!の巻(2月3日更新分)
第481話 "狼の部屋"の秘策!!の巻(2月10日更新分)
第482話 まさに、戦争男(ウォーズマン)!!の巻(2月17日更新分)

<あらすじ> 
ソ連のパトムスキー・クレーター。ついに、ウォーズマンが真の姿となり、時間超人五大刻・ぺシミマンを圧倒。しかし、ぺシミマンの奥の手に大苦戦。すると、狼の部屋の所長が数年越しの実験を再開するため、ウォーズマンへひそかに組み込んでいた秘密モードの発動を指示!

●どこまでも付きまとう「ロボ」

爪切男(以下、爪) 第481話で「エクストリームバトルモード」を起動させられて、ウォーズマンが変身したじゃないですか。

燃え殻(以下、燃) うん、全身鋲だらけのえぐいスタイルになった。

 あれでSNSとか、けっこうな騒ぎになりましたよね。昔、『少年ジャンプ』の誌面で、連載300回記念企画として「リング・コスチューム大募集」というものがあったの、覚えてます?

 え? ああ、あったような、そういえば。

 その時に採用されたのが、あの鋲だらけのウォーズマンなんです。

 えーっ!?  忘れてた! そうかあ! あの企画、俺が中学生の時だったっけなあ......。

 1985年だから、ぴったり40年前ですね。ほら、こういうやつ(PC画面で当時の採用作品を見せる)。

 ああ、覚えてるのもある! というか、採用されて本編に出てきたものも、けっこうあるね。ラーメンマンもそうだし、キン肉マンもそうだし。えっ、じゃあウォーズマンのこのコスチュームを、嶋田先生が覚えていたってこと?

 そうみたいですよ!

 すごいなあ! 40年かけた伏線回収。子供の頃、マンガ部みんなで『キン肉マン』の画を描いてた、って言ったじゃない?

 よくその話してますよね、燃え殻さん。

 ああいう時って、みんな勝手に超人をアレンジして描いたりするじゃない。ロビンマスクに角を増やしたりとか。

 ああ、やるやる。

 っていうのを、読者から公式に募集して、なおかつ40年経ってから実際に作品で使う。その子供心がすごい。

 いい意味で、ザコシさん(ハリウッドザコシショウ)的ですよね。「スケールベア・クロー」なんて、誇張しすぎたベア・クローだもん、これ。

 はははは。

 ウォーズマン、かわいそうだとは思いましたけど。突然「エクストリームバトルモード」を起動させられて、身体がトゲトゲになって。オレなら絶対イヤ。

 確かにビビるわ、自分の身体にこんなことが起きたら。いつまで経っても業(ごう)が深いよ、ウォーズマンは。

 うん。これがまだ隠されていたのか、背負ってる十字架ありすぎやろ! と。

 作者という神のおもちゃ感が、ハンパない(笑)。

●ぺシミマンの株上がってます

 対して、ウォーズマンを真正面から受け止めているペシミマン、いいヤツに見えてきません?

 確かに。できればこの試合が終わったら、ウォーズマンとタッグを組んでほしいぐらい。いいタッグになりそう。

 いいですよね、ペシミマン......ウォーズマンには悪いけど、この試合、ペシミマンが勝ってもいいと思っちゃったもんな。

 そもそもルックスで言うと、普通のマンガだったら、ペシミマンがベビーフェイスで、ウォーズマンのほうがヒールだもん。

 鋲をつけられたりしたことも大きいですよね。

 そこもすごい不思議な感じがして。ペシミマンが善玉に見える、キャラも立っている、そしてウォーズマンがどんどん悪玉っぽくなっていく。その両者の色の違いがいいよね。

 でもペシミマン、ロボ超人であることが途中でわかったじゃないですか、なのに時間超人。

 そうなんだよね。

 それって成り立つのか? という気もしますけど(笑)。でもペシミマン、闘い方が正々堂々としているというか。卑怯とか残虐なこともしてないし。

 むしろ、ウォーズマンのほうが残虐だから、善玉と悪玉がひっくり返ってる感じになっていて、そこもおもしろい。ペシミマンに主人公感があるもん。

 そう。器がデカい。変身させられたウォーズマンに対して、「わかるぜえ、お前のその哀しみ。オレたちロボ超人はみんなそうだ」とか、「その新たな見てくれも強そうだ。まだやれるだろ?」とか、言葉があったかいんですよね。

 ねえ。ウォーズマンも体が変わったことへの受け入れも早くない?

 変身させられたことに憤(いきどお)ってるのに、次の瞬間にはその変身で手に入れた「スケールベア・クロー」を使ってるし(笑)。ペシミマンに導かれている感じが格上を感じるんだよな。

 「置かれた場所で咲きなさい」とぺシミマンが諭(さと)しているような、ロボ超人の悲哀がある。

 でもほんと、時間超人と闘っている感じがしない、いい試合ですよね。ペシミマンの時間超人要素が後半で出てくるかどうかだな。

 お互いがロボ超人だというところで、闘いの残酷さがうまく回避されているよね。そのへんのうまさも、さすがゆでたまご先生だと思う。

 この試合、クロエで始まって、途中でウォーズマンになって、そしてこの「エクストリームバトルモード」になった。1試合の中で3形態ってすごいですよね。

 いや、ほんとにそう。

 前に燃え殻さんも言ってたじゃないですか。おなじみの超人たちのコスチュームが変わったらおもしろいのに、って。

 あ、言った!

 それをまずはウォーズマンがやった、ということですよね。的中じゃないですか。

 でも、40年前の読者投稿のスタイルに変わることまでは、予想できなかったから。その話をした時、バッファローマンも修行を終えて戻ってきたら、コスチュームが変わってるんじゃないかって話、したじゃない?

 ああ、ですね。楽しみになりましたね。怖くもあるけど。

 それにしても、この展開でいくと、ウォーズマンのほうが弾切れになりそう。やっぱり負けフラグが立っている気がする。

 うん、心配。不思議なキャラですよね。強いし人気もあるのに、こんなにファンを不安にさせるという。燃え殻さん、ゆでたまご先生は数年がかりで『キン肉マン』という物語をちゃんと終わらせるモードに入っているって、よく言ってるじゃないですか。

 うん。

 ということは、ウォーズマンの試合も、今回のこれでおしまいなのかな。

 そうなんじゃないかな。そもそも40年前に読者が描いたこの最終形態をひっぱり出してこと自体が、もう、ウォーズマン大感謝セールじゃない?(笑)。

 となると、最後の試合はこの格好ではなく、元のシンプルなスタイルでやってほしいな。でも「スケールベア・クロー」を一回見ちゃったら、普通のベア・クローが弱く見えるだろうなあ。

 そうなんだよ! だからもう、この形態で終わるしかない。

●アニメSeason 2が終わり、2冊同時発売

 アニメのSeason 2は、3月いっぱいで終わりなんですよね。ウォーズマンとポーラマンの試合が終わったところまでで、いったん終了。

 そうか、アニメもマンガもウォーズマンの試合だったんだな、2025年のこの時期は。

 あと、4月4日にコミックスの88巻と、『読切傑作選2015-2023』が出るそうですよ。

 え、そんなの出るの?

 2015、16年にそれぞれ『グランドジャンプ』に載った「超人列伝 ウルフマンの巻 -土俵上の士(もののふ)-」、「超人列伝 カレクックの巻 -愛と怒りの聖人-」とか、40年前に描かれたテリーマンが主人公の『アメリカからきた男』を、2019年の『キン肉マンジャンプvol.3』でリメイクした回。2023年の『キン肉マンジャンプvol.4』に載った、「キン肉バスター誕生秘話!!の巻」や、キン肉マン40周年の時に『少年ジャンプ』に掲載された、「特別読切 さよなら、キン肉マン!!の巻」。

 ああ、あったあった。

 その8年の間に、読切が単行本1冊分貯まっていたんですね。

 おお! 表紙もいい感じ!

 カレクックがちゃんと強そう。

 この読切、カレクックが頭にカレーを乗っけて残虐超人になるまでの話だったよね。

 うん。しかし、そう考えると、カレクックってパンチ強いですよね。それをテーマで主人公にして、読切1本描けちゃうんだから。

 いや、先生なら、どの超人でもできるんじゃない?(笑)。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社、1月29日文庫版発売)『これはただの夏』(新潮社、文庫版発売中)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は『明けないで夜』(マガジンハウス)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。『GetNavi web』にてコラム「もの語りをはじめよう」を連載中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00〜27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。最新著は、集英社発のWebサイト『よみタイ』で好評を博した、美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』が好評発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら 〜爪 切男の助手席ドライブ漂流〜』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化

取材・文/兵庫慎司  撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご/集英社

    ニュース設定