写真 テレビの買い替え理由は「故障」が7割近くと最も高い比率だ。より良い製品に買い替える「上位品目」は2割程に過ぎず、50ポイント近い開きがある。また、2014年からテレビの平均使用年数は長期化し、22年に10年を超えたことが内閣府の消費動向調査から明らかとなった。
その他の画像はこちら 内閣府の消費動向調査の数値を用い、総世帯におけるテレビの買い替え理由をグラフ化した。
11年のアナログ停波をきっかけに、テレビの買い替えが発生。その結果、買い替え理由の「その他」が急増した。10年の21.9%から11年に45.2%まで倍以上となった。翌12年には55.6%とさらに10ポイント積み上がる。その後は、アナログ停波のような外的要因がないため、「その他」の比率は低下した。
その一方で13年以降急速に「故障」の比率が伸びている。年々上昇し、18年に69.1%までに達した後、6割台で推移している。画面サイズアップや、液晶テレビからプラズマテレビや有機ELテレビへのより高価な製品への買い替えを指す「上位品目」では、10年に37.5%を記録した後、比率は減少しており、18年以降は2割程にとどまる。
また同調査では、テレビの平均使用年数も聴取している。11年のアナログ停波の前までは、使用年数は10年に届きそうだった。強制的に買い替えが発生したことで、11年以降の平均使用年数は、14年に6.4年まで低下。
先の買い替え理由で「故障」の比率が4割に近づいた15年から、徐々に使用年数は長期化の傾向を見せ始め、22年には10.4年まで達した。このように買い替え理由と平均使用年数から、『テレビは壊れるまで使う』ということが裏付けられている。
次に、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」を用い、07年の販売台数を「100.0」とした薄型テレビの販売台数指数を算出した。
アナログ停波を見据えた買い替え特需が発生したことを受け、10年と11年の指数は急激に跳ね上がっている。09年から動き始めているのは、「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業」が開始になったことがきっかけだ。
基準とした07年とほぼ同程度に戻った12年以降は、70-80の間を推移している。指数は、16年を底に緩やかに上昇している。これは、買い替え理由の「故障」の比率が増加した時期とシンクロしていることが興味深い。ちなみに、20年には新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が伸びたため、販売台数が増加した。
今後も薄型テレビの販売台数が急増することはないだろう。しかし、現在は「テレビ=(イコール)地上波放送視聴」という構図は崩れている。テレビを使いインターネット上の動画を視聴する需要も存在するため、一定の需要は存在し続けると考えられる(BCN総研・森英二)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。