写真はイメージです―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。村野氏は「投資においては絶対に守るべきものがある」と言います。これは仕事をしていくうえでも役に立つ考え方だそう。詳しくお話を聞いていきます。
◆仕事では「誰がやりたいのか?」を意識すべし
上司から「あなたの成長の為になるからこの仕事をやって欲しい」と言われてモヤっとした経験はありませんか。「この仕事をやって欲しいのは誰?」と考えてみると……。もちろん私がやりたい仕事であれば、私「も」ですが、まず第一には上司であり私ではありません。それにも関わらず「成長になるから」と、あたかも「あなたのために」という雰囲気で仕事をさせられるのは、大変気持ちの悪いものです。
この気持ちの悪さは他人のやりたいことを、自分がやりたいことのようにさせられてしまう「主導権が自分にはない」という状況からくるものです。この状況に陥ってしまうと本当に不幸でしかありません。自分に主導権がない、つまり判断も決定も自分で自由に行うことができない。一方で、結果に対しての責任だけは「あなたがやりたかったことでしょ」ということで押し付けられる。「言われたからやったのに……」という他責思考で逃げるしか自分を守る術はありません。
そもそも、「上司に言われた仕事をやる」だと、主導権は上司にある状態です。一方で、「この仕事はあなたでないと出来ないから」と「お願いされてやる状態」。この場合ならば主導権は自分です。会社のなかで立ち回るときには、自分自身の主導権は持った上で働くことができるようになると、他人のさじ加減によって仕事を左右されずに済むので、気持ち良く進めることができるようになります。
また、仕事においては、何かやらなければ行けないコトが出てきたとき。「誰がやりたいのか?」を意識すると周囲の意図が見えてきます。
◆主導権を握っているか否か
例えば、不動産では売買するときには「重要事項説明書」の読み合わせを行い、売り手から買い手への説明事項を解説することが必須です。一見すれば、「買い手の為に説明している」ように見えます。もちろん買い手にもメリットはありますが……。しかし、実際は売り手にとって「ちゃんと物件の詳細やリスク周りに関しても説明をしましたよ」というエクスキューズの側面が強かったりします。購入後に「ここが壊れているじゃないか!?」とクレームになる等の、のちのちのトラブルを避けるためであり、「売り手がやりたい」行為でもあります。すると重要事項の説明で特に気にしなければいけない点は、「トラブル」に発展する可能性がある部分だと理解できます。
なにか仕事で物事を進めるとき、この案件をやらなければいけない、となったとき、「それは誰がやりたがっているのか?」を考えてみた上で、「主導権は自分にある状態を作る」ことも意識しましょう。他人に価値判断基準を渡し、主導権がある状態では納得できる仕事はできません。自分自身に主導権がある状態を保っておくことが必要です。もし自分で主導権が取れず、主導権が他人にある場合には、その責任もその人にあることを忘れずに。うまくいこうがいくまいが、それはあなたのお陰でも、あなたのせいでもありません。
◆投資でも相手に主導権を渡さない
投資をするうえでも、「主導権を自分に持つ」というのは非常に重要です。例えば、「人からオススメされたから購入した」というのは主導権を失っている状態です。自分で判断して購入しているわけではないので、その人が居なければその商品が良いのかどうかもわかりません。また、もしもその商品が微妙だったとき、売却しようとしても「〇〇さんからオススメされた手前、こっそり売却したことが知られたら……」という状況になったら思わぬ損をしてしまうかもしれません。この「自分ではどうしようもできない」という主導権のない状態に陥る投資は避けたほうが良いと思います。
そして、株価は自分では上げることができません。ですから、株式投資による上昇や下落は主導権がないのです。そのため売買で利益を出す行為は、他人次第という「賭け」でしかないのです。配当金や株主優待も貰えるかどうかは会社次第ですのでこれもある種の「賭け」でしょう。優待を設定していながらも急に「業績悪化のため優待を廃止します」や「配当を減らします」と宣言した株はいくらでもあります。一方で、配当や優待をもらった以降の使い方には当然自分に主導権があります。つまり自分でなんとかできるところは「得たものの使い方」の部分にしか無いのです。
私自身は「主導権が無いもの」は極力そのリスクは小さくする、または最初から負ける前提で考えるようにしています。一方で、自分自身の主導権があるところで最大限に頑張るのが一番意味があるものと考えています。
ですから、不動産投資の場合においても、キャピタルゲインである不動産価格の上昇、下落はそれほど重要視しません。それよりもちゃんと安定してお家賃が入ってくるか、そして入ってくるお家賃をどのように効率的に再投資に回していくことか、この部分こそが大事だと考えています。
なにかが発生した際「誰がやりたいかのか?」「自分が主導権を持つ」ことが大切。是非今一度自身や周囲の行動を見つめてみていただけると、新しい発見があるかもしれません。
<構成/上野 智(まてい社)>
―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)