※画像はイメージです コロナ禍で低迷した日本の観光業はV字回復を遂げ、2024年には訪日外国人旅行者数とその消費額が過去最高を記録しました。現在、日本各地の観光名所や都市部では多くの外国人観光客が見受けられます。
今回取材したのは、そんなインバウンドに沸く日本の空で起きた残念なエピソードです。
◆結婚1周年で待望の沖縄旅行
「新婚旅行はハワイへ行ったのですが、今回は休暇もあまり取れなかったので、以前から行きたかった沖縄に決めました。レンタカーを借りて島を1周する計画でした」
そう語るのは、都内在住の堀越さん(仮名・28歳)です。結婚1周年記念で国内旅行を計画していた堀越さんは、行き先に沖縄を選んだそうです。
「旅行の予約はネットで済ませたのですが、インバウンドの影響なのか、軒並み旅行費用が高騰していたんです。それでも、少し無理をしてでも妥協せずにプランを立てました。新婚旅行以来の久しぶりの旅行ですからね」
堀越さん夫妻は久々の旅行に向けて、水着の新調や旅行アイテムの購入などに余念がなかったといいます。
◆飛行機内に日本人が見当たらない
旅行当日、堀越さん夫妻は新宿から朝一番の成田エクスプレス5号に乗り、成田空港の第3ターミナルへ向かいました。
「空港に到着した際、予想以上に多くの外国人観光客がいることに驚きを覚えました。妻に『え?ここは日本だよな』というような会話を交わしたことを覚えています。特にアジア系の人たちが目立ちました」
搭乗までまだ少し時間があったので、堀越さん夫妻は持参したサンドイッチをベンチに座って食べていると、やがて搭乗開始のアナウンスが流れてきたそうです。
「私の便だけなのかもしれませんが、機内へ入ると周囲からは日本語がほとんど聞こえてこないんです。大半は中国語のようで、時折韓国語も耳にしました。そんな異国ムードが漂う中、ジャンケンで勝った私は窓側に、妻は中央の座席に座りました」
◆震える隣の外国人男性
堀越さんの奥さんの隣には、珍しくアジア人ではなく、アラブ系の男性が座っていました。ただ、その男性の様子が少しおかしかったようです。
「間もなく離陸という時、何気なく窓の外を眺めていたのですが、奇妙な振動を感じたんです。最初は『LCCだから乗り心地もこんなものか』と思っていたのですが、その振動が次第に激しく、そして大きくなっていきました。
ふと横に座る妻に目をやると、まるで美味しくない料理でも食べたようなしかめっ面でこっちを見ているんです」
どうやら、その振動は通路側席のアラブ系男性による貧乏ゆすりであったことが判明しました。
「左足だけが上下に激しく揺れていたので、最初に見た時は痙攣でも起こしているのではないかと心配しましたが、結局それは『激しすぎる貧乏ゆすり』であることが分かりました。
妻は何度も私に助けを求めるように目を合わせてきましたが、どうすることもできない私は、そのままヘッドフォンをしたまま那覇空港まで耐えました」
◆せっかくの旅行が台無しに
まるで地獄のようなフライトとなった奥さんは、那覇空港に到着した後も堀越さんの顔を見ようともせず、ずっと無言だったそうです。
「今振り返ると、私が席を替えていればこのような事態にはならなかったかもしれません。しかし、暴力を振るわれたわけでもなく、いつまで経っても口を利いてくれない妻に対して、次第に腹立たしさを感じるようになりました」
その夜、二人は予約していたホテルに一緒に向かったものの、翌日、奥さんは帰りの便を変更して一人で先に帰京したそうです。
堀越さんは、予定通りもう1泊して帰路についたそうですが、自宅に戻ると驚くべき事実が待ち受けていました。
「すぐに仲直りできるだろうと思って帰宅したのですが、部屋は真っ暗で、テーブルの上には封筒が置かれていました。
中を開けると、『今回の件であなたと一緒に暮らす自信がなくなりました。ごめんなさい』と書かれた便箋と離婚届が入っていました。冗談だと思い、部屋中を探しましたが、誰もいませんでした」
残念なことに、この取材を終えしばらくしてから堀越さんは正式に離婚したそうです。
TEXT/八木正規
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営