「愛犬を盗まれた!」ペット連れ去りの恐怖。高額品種は“違法ブリーダー”に転売されることも

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2025年03月31日 16:01  日刊SPA!

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「北海道犬」という珍しい犬種を飼っている木島さん
 SNSでは頻繁に飼い犬や猫を捜す投稿があるが、その中には脱走ではなく、「犬を盗まれた」と主張するものが多数ある。果たして、本当にペットの盗難が起きているのか? 誰がどんな目的で盗むのか? 被害者の証言を集めた。
◆「散歩中に犬の強盗に遭った!」真冬の北海道を回遊する謎の車

 ここ最近、ペット愛好家たちの間で、ペットの盗難を注意喚起するSNSの投稿が相次いでいるという。

 そうした投稿を目にしていたものの、「自分の身に起きるわけがない」と他人事だった北海道在住の木島裕也さん(仮名・43歳)。しかし、彼はその怖さに直面することになる。

「1月下旬のある日、街灯のない真っ暗な川沿いの道を散歩していたんです。そうしたら向かい側から黒のプリウスが走ってきて、通り過ぎたあとUターンして僕たちの前に。車から2人の外国人風の男女が降りてくると、一人は犬をなでるそぶりをし、もう一人は僕に話しかけてきました。会話に僕が気を取られているうちに、犬の近くにいたヤツが犬の首元を掴んで連れ去ろうとしたんです」

 とっさにリードを引っ張って抵抗すると「もう一人が僕に折りたたみナイフで切りつけてきた」という。

「思わず膝を上げたら、相手の懐に入ったようで、諦めて車で逃走していきました」

 幸いにもナイフは木島さんの服をかすめただけで、犬ともに無傷だった。

◆事件後、愛犬に変化が起きてしまった

「すぐに警察に出向いたんですが、車のナンバープレートがわからなかったので『証拠不十分だ』と。『犬が盗まれたり、人が刺されて亡くなったりしない限り動けない』とまで言ってきたので、あまりの対応に頭にきました」

 木島さんの妻がこのことをSNSに投稿すると、意外な情報を得ることになった。

「フォロワーさんから、道内で黒いプリウスに乗ったアジア人による窃盗や詐欺事件が複数起きていると教えてもらったんです。僕を襲った犯人らは外国の言葉でしゃべっていたので、同じ人だった可能性はあるのかなと。事件後、犬は首まわりを触られるのが極端に苦手になったり、夜中に遠吠えをしたりと、トラウマと思える行動をとるようになってしまった。夜道の散歩は複数人で行くようになったし、犬にGPSをつけることも検討しています」

◆ケージを洗う10分の隙に愛犬が消えた

 静岡県御殿場市に住むダンサーの前田樹さん(30代)は、1月上旬にイタリアングレーハウンドの愛犬・ティンを連れ去られたという。

「深夜2時すぎに1階にある自宅アパートに帰り、ケージが汚れていたので風呂場で洗おうと一時的にティンをベランダの柱につないでいたんです。10分後にベランダを見たらリードごと姿を消していて……。ダンサー仲間も呼んで辺りを捜し回ったけど、全然見つからなかった」

 リードは柱に二重に結び、持ち手部分も固結びにしていたため、自然にほどけるとは考えにくい。加えて、「ここはど田舎だし、アパートも奥まった場所にあるので偶然ではたどりつけない」と話す。

「もしかしたら、深夜の寒い中ティンが放置されていると勘違いした人が好意で保護したのかもと思い、近所を聞き回ったんですが、全員『知らない』と……」

 前田さんは警察に相談したものの、「盗まれたという証拠がないと盗難届は出せない」とけんもほろろ。市役所や保健所にも届けを出したが、自発的に捜してくれることはなかったそうだ。

「警察はまったくあてにできないと痛感したので、迷子犬の投稿サイトやインスタ、Xにも情報を流したけど手がかりはゼロ。一時は相当病んだけど、今は犯人に対して、家族がいなくなる痛みを味わわせてやりたいと思っています」

◆高額品種は特に危険「違法ブリーダーに売られることも」

 ペット捜索も行うファミリー調査事務所の代表・山内和也氏は、「転売目的でペットを盗むケースもある」と語る。

「過去には静岡県の個人経営ペットショップから売値が100万円以上するプードルが盗まれ、神奈川県の個人宅で飼われていたのを発見したケースがありました。その飼い主によると『ネットで購入した』と。窃盗犯が転売したことで市場に流れたのでしょう」

 さらに別のルートに転売される危険性もあるという。

「高額品種は繁殖用として、違法ブリーダーや無許可の繁殖場に売られることも。これらはネットや市場に情報が出づらく、発見は困難。ただ、発見できた事例もあるので諦めないでほしいですね」

 愛する家族を突然奪われる苦痛は計り知れない。さらに愛犬がそんな過酷な環境に放り込まれたなら……まさに悪夢としか言いようがない。

◆盗まれたら発見は困難!! ペット盗難の犯人像とは

 実際にペットの連れ去りはどの程度発生しているのだろうか。

 これまで6000件以上のペットの捜索を行ってきた藤原博史氏は、「盗難だと断言できる事例は10件程度ですが、疑わしいものを含めるともう少し数は多いかもしれない」と話す。

「疑わしい例で多いのは、迷子ペットを偶然保護した人が愛着が湧き、そのまま飼育し続けるケース。ペットは遺失物なので、本来は警察に届け出ないといけませんが、保護した人は基本的に悪意がなく、なかには届け出ない例もある。このように、善意の保護が結果的に盗難になるケースを含めると、被害件数はさらに増えるでしょう」

◆脱走の可能性を否定しきれず、事件化のハードルが高い

 また、飼い主から見ると窃盗を疑う状況でも、「監視カメラの映像や目撃情報などの客観的な証拠がなければ、盗まれたという立証が難しい」という。

 しかもペットは自発的に動くので、脱走ではなく窃盗だと断定しづらい。そこから警察を動かすのは相当ハードルが高いのは、前出の事例からも明らかだ。

 では、ペットがいなくなった際に飼い主ができることは?

「警察や動物愛護センターに問い合わせたり、SNS、ポスター、チラシなどで情報発信することは有効な手段です。ただ、その際に決定的な証拠がないのに『盗まれた』と書くのは逆効果。なぜなら、たとえ善意で保護していたとしても、『ばれたらヤバい』と別の場所に移動させたり、情報提供をしなかったり、逃がす可能性があるから。あくまで迷子で捜すほうが帰ってくる確率は高まります」

 さらに手がかりや証拠を揃えるための対策が重要だと語る。

「犬ならリードを外しにくいロック式にしたり、室内飼いで一時的に外につなぐ場合も必ず家族の目が届く範囲にする。防犯カメラを設置したり、首輪や服にGPSをつけるのもオススメです。個体の識別ができるマイクロチップは、’22年以降に販売されている犬や猫には装着が義務づけられていますが、保護犬・保護猫や譲り受けたペットは未装着の場合もあるため注意を」

 盗難対策は万全にしたい。

【ペット探偵・藤原博史氏】
ペットレスキュー代表。全国から依頼を受け現在まで6000件の迷子ペットを捜索。著書に『ペット探偵は見た!』(扶桑社刊)など

取材・文/週刊SPA!編集部

―[多発する[ペット連れ去り]の恐怖]―

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