元県議が口利き後、教室開催件数は5.5倍 ケア・トランポリン汚職

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2025年03月31日 20:04  毎日新聞

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毎日新聞

ケア・トランポリンを体験する片岡誠二被告=片岡被告のホームページから

 年齢を問わず、誰でも安全に楽しめて脳の活性化にも効果的――。福岡県発祥の「ケア・トランポリン運動」はそんな触れ込みで広まり、2023年度には県内の半数以上の自治体が健康教室を主催するまで普及した。だが、当初は開催費用がネックとなり、協力する自治体はわずかだった。その状況の打開に奔走したのが、収賄罪で起訴された元福岡県議の片岡誠二被告だったという。


 関係者によると、ケア・トランポリンは、贈賄罪で在宅起訴された鬼木義美被告が多額の資金を提供し、北九州市の一般社団法人が開発。16年以降、自治体に器具を使った健康教室を開いてもらおうとロビー活動を展開した。


 だが、市町村が主体となって教室を開催する場合、費用の12・5%を負担する必要があり、18年度までは県内7市町の開催にとどまった。関係者が頭を抱える中、頼りにしたのは、かねて鬼木被告が熱心に献金をしていた片岡被告だった。


 「ケア・トランポリン運動というものがある」。18年夏ごろ、片岡被告は県議会の自民党控室に県幹部2人を呼び出し、熱心にアピールした。タブレット端末で健康教室の動画を再生し、「教室を見に来てほしい」と要望した。


 当時、厚生労働省の調査で福岡県の健康寿命は全国平均以下だった。健康寿命を延ばして医療費を抑えるため、運動習慣の定着につながるような事業を探していた県側と、片岡被告の利害が一致。県幹部は教室の視察に動き、19年度以降に県の100%補助事業となる下地ができた。費用負担の問題が解消されたことで健康教室の開催に動く自治体は増加。全額補助事業となる前の18年度は7市町だったが、23年度は約5・5倍の39市町に急拡大した。


 「県議(片岡被告)が突破口を開いてくれた」。鬼木被告は普及活動に取り組んできた社団法人の幹部の前で、そう話したという。社団法人の別の元幹部は苦渋の表情で語った。「高齢者の健康のためを思って取り組んできたが、手段が間違っていたのか……」【佐藤緑平】



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