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◆介護分野に「特定最低賃金」を導入検討
福岡厚生労働大臣は、3月21日に「特定最低賃金」の介護分野への導入について、「労使の意見や特定最低賃金の実態を再度確認し、検討を進めたい」と話しました。
吉田:塚越さん、この「特定最低賃金」について教えてください。
塚越:まず、最低賃金には種類が2つあります。1つは、都道府県ごとに決める「地域別最低賃金」。アルバイトの時給などの目安にもなるもので、基本的には行政が主導で決めるものです。
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現在、この特定最低賃金が設定されているのは電子部品や鉄鋼といった製造業のほか、百貨店などがあります。ただ全国一律で設定されるのではなく、地域の産業の実情に応じて異なるので、同じ業種でも地域によって設定されないところもあります。とはいえ、産業によっては都道府県をまたいだ設定もできるので、全体としては賃上げ拡大につながる可能性があります。今回は、このなかに介護分野も入れようという話です。
石破総理は3月17日の予算委員会でも、賃金が上がらないとこの国の経済はもたないという認識があるので政府主導で判断したいと述べています。政府としてもそういう動きがありますし、狙いとしては人手不足の介護分野を賃上げによって少しでも解消しようという考えがあります。
◆高齢者数はピークに 一方で介護職員は減少傾向
吉田:介護職の賃金や人手不足は、今、どのような状況ですか?
塚越:介護は、とても大切な分野ですが、あまり給料が高くないというのは聞いたことがある人も多いと思います。厚生労働省によると、介護職員の去年9月の平均月収は25万3,810円で、前の年の同じ時期に比べて4.6%増えています。しかし、物価上昇に伴い、どの業界も多かれ少なかれ賃金が上がっています。介護職の賃金が上がったと言っても、いまだに全産業の平均より7万円以上低く、そうなるとなかなか人手が集まらないということなので、だからこそ賃上げ対策としてこうした話が上がってきています。
さらに言うと、今後のことを考えると本当に深刻で、15年後の2040年度になると65歳以上の高齢者数が、ほぼピークになります。介護職員がおよそ57万人不足する推計があります。AIを使って業務の効率化を図ると言っても、介護業界となるとなかなか難しいですよね。介護業界は人間の力が必要とされる業界なので、人が足りなくなります。
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◆企業側だけの対応では限界が 政府の支援は必須
ユージ:介護分野に「特定最低賃金」を導入することについて、塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越:最近は地域別最低賃金の引き上げが、どんどんおこなわれています。急激に賃金を上げると、特に中小の経営が厳しくなるという問題も指摘されており、(企業側の対応だけでは)限界があるかなと思います。今回の特定最低賃金も労使が主導して、条件が整えば賃金を引き上げることができます。介護業界だけでは賃金を上げるのは難しいので、政府は支援しながら介入するということも考えています。
例えば、厚労省は訪問介護など、小規模事業者への支援をおこなうということです。さらに、横の連携や事業の再編を促して、大規模な経営をつくって経営を安定させていくということをある程度お手伝いするので、賃上げや人員拡充を進めてもらうよう働きかけたいとのことです。
今回の動きについて、労使の合意がとれるかが問題ですし、過度に賃金が上がることで(企業側の)経営が圧迫される可能性もあります。人と関わる福祉だからこそ、さまざまな制約があります。さらに、介護職員の賃金を引き上げると、結果的に利用料金が高くなるため、一般のユーザーはそれをある程度は受け入れなければなりません。いろいろと難しい点はありつつも、賃金を上げて人を集めなければいけないのは当然です。今日お話ししたような内容について、さまざまな話し合いがおこなわれているとご理解いただけるといいのかなと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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3月26日(水)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 4月3日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
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