新入生がつながる魔法の言葉「#春から〇〇大 」はちょっと待って! なりすましや詐欺に注意

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2025年03月31日 21:40  ITmedia Mobile

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「春から〇〇大」の投稿例(筆者作成)

 春は進学の季節です。新しい学生生活は期待と不安がいっぱい。ネットで情報を集め、万全を期すご家庭も多いでしょう。その際に、注意していただきたいことがあります。それは「春から〇〇」というキーワードです。


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 「春から〇〇」は、新入学生や学校関係者などがSNSに投稿する際に使う言葉です。「〇〇」には、「〇〇大」や「〇〇高」など、学校名や略称が入ります。主にハッシュタグにして「#春から〇〇」と使われますが、キーワードのままだったり、「2025〇〇新入生」と詳細に記載されることもあります。


 投稿先はXやInstagramが多く、「4月から法学部に入ります。よろしくお願いします! #春から〇〇」といったように使われます。投稿やプロフィールに記載することで、同じ学校に進学する人とつながれるというわけです。


 合格の喜びから投稿してしまう人も多く、中にはXにInstagramのQRコードを載せている人もいます。Instagramは10代がLINEの次に使っているプラットフォームなので、Instagramでつながりたいのでしょう。


 同じ進学先の人と入学前に出会えたら、相互フォローしたり、DMで連絡を取り合ったりして情報交換をします。また、新入生同士のLINEグループに招待されることもあります。一人でも多く知り合いが欲しいため、LINEグループで一斉に知り合えることは皆うれしいのです。


 「春から」のおかげで、入学式では既に知り合いがいる状態になります。「入学式は何時に行けばいいのかな」「クラス発表はいつなの」など、新学期の疑問もお互いに相談できます。特に、住み慣れた土地を離れて一人暮らしを始める人にとって、知り合いが一人でもできればかなり心強いですよね。


 「春から」はサークル探しにも役立ちます。新入生を勧誘したいサークルなどが公式アカウントで「春から」のハッシュタグを使って投稿を行っています。どんなサークルがあるのか、説明会の日はいつなのか、何曜日に活動しているのかなど、詳細な情報がSNSから得られます。先輩たちの投稿からサークルの雰囲気も伝わってきて、学校が発信する情報よりもリアルな様子を知ることができます。


 ──というように、良いことばかりに思えますが、実は「春から」には危険な側面があるのです。


●出会いからネットワークビジネスなどに巻き込まれることも


 「春から」で大学名を記載している人は、友人を欲している人でもあります。そこを狙って、怪しいネットワークビジネスに勧誘されるリスクがあります。なぜなら、「春から」には大学生になりすまして、怪しいビジネスに勧誘しようとする人が入り込んでくるからです。


 ネットワークビジネス(マルチ商法)とは、学校の友人やSNSなどで知り合った友人に誘われ、別の人を誘う連鎖で拡大させていく商法です。特定商取引法で「連鎖販売取引」として規制されているもので、健康食品や化粧品など、さまざまな取引が行われています。知り合いからセミナーに誘われたり、カフェで話をするなどして強引に契約させられ、トラブルに発展することがあります。


 また、アポイントメント商法と呼ばれる商法も問題となっています。相手に呼び出されて契約しないと帰れない状況で、自己啓発講座やネット商材などの購入を契約させられる商法です。こちらもSNSやマッチングアプリなどで知り合った人から誘われることがあります。


 東京都が発表した「若者の消費者被害に関する調査(令和6年度)」によると、18歳以上29歳以下の男女のうち「マルチ商法」の被害経験は、4.6%で、令和2年度(2020年度)の調査よりも0.6%ほど増加しているとのこと。被害金額は「5万円以上10万円未満」が27.0%でもっとも多くなっています。


 「アポイントメント商法」に関しても、被害経験は0.5ポイント増加しており、被害金額はは「1万円以上5万円未満」と「5万円以上10万円未満」がともに26.5%が最も多くなっています。


 また、宗教関連のサークルに意図せず入会させられ、脱退が困難になる学生もいます。一般的なサークル活動やイベントを装って連絡してくるため、見抜くことが難しいケースもあります。


●被害にあったと思ったら早めに相談を


 さて、「春から」ですが、実際にはSNSでつながっても、会話がないままであったり、入学式で声を掛け合う程度であったりと、あまり友人作りには役立たないといわれています。


 「春から〇〇」は10年近く前から活用されており、当時は今よりも盛り上がっていました。しかし、そうした出会いは長期的な付き合いに発展しないと高校入学時に学んだ人も多いため、積極的に使う人は以前よりも減っているようです。


 筆者は「春から」を掲げるLINEのオープンチャットをいくつかのぞいてみましたが、アフィリエイトリンクを投稿する人が多く、たまに学生らしい会話がある程度でした。私も含めて、本当の新入生はどれだけいるのか、疑問を感じました。


 とはいえ、「春から」をきっかけに知り合う人達もいまだにいるため、やはり注意は必要です。2022年4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられました。成年になると、親などの同意がなくても契約を結ぶことができます。大学入学の年齢にあたる18歳以降は、格好の標的になってしまうのです。


 SNS経由で新たに知り合った人には、住所、氏名、連絡先などの個人情報を簡単に明かさないように注意しましょう。そして、勧誘を受けたり、他の人を誘うように言われたら、はっきりと興味がないことを相手に伝えることも重要です。


 もし不安なことがあったら、早めに相談しましょう。ネットワークビジネスに関する相談は、消費者ホットライン「188」や、最寄りの消費生活センター、警察で受け付けています。宗教関連のトラブルは、全国霊感商法対策弁護士連絡会や法テラスで相談できます。


 入学時の不安だけでなく、新生活で孤独を感じている人が「誰かとつながりたい」と思った時も、魔の手が忍び寄ります。ネットで気軽に出会える世の中になりましたが、リアルの出会いを重視して少しずつ人の縁を結んでいく方が、トラブルのない新生活を送ることができそうです。



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