村上春樹「今になってみると『それでよかったんだな』と実感します」小説を出すたびに受け流していたこととは?

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2025年04月01日 06:10  TOKYO FM +

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村上春樹「今になってみると『それでよかったんだな』と実感します」小説を出すたびに受け流していたこととは?
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00〜19:55)。3月30日(日)の放送は「村上RADIO〜二人の伝説のギタリスト チェット・アトキンスとデュアン・エディ〜」をオンエア。今回は1950年代後半〜60年代に活躍したアメリカのギタリスト、チェット・アトキンスとデュアン・エディに焦点を当てました。さらになんと、収録時に来日していたイギリスのロックバンド「ポリス」のギタリスト、アンディ・サマーズの飛び入り出演も!

この記事では、「クロージングトーク」と「今日の言葉」について語ったパートを紹介します。


今日のクロージング音楽はチェット・アトキンスの演奏するハインツ・プロヴォスト作曲の「インテルメッツォ(間奏曲)」です。美しい曲ですね。

2人の伝説のギタリスト、いかがでしたか? どちらの演奏も初めて聴いたという方も多くいらっしゃるかもしれません。こういう音楽、今となってはなかなか聴く機会もありませんから。でもいいですよね。スタイルは「古式豊か」みたいなところはありますが、芯があるというか、時代を超えて語りかけてくる何かが感じられます。いずれにせよ、今日はあくまで村上の個人的な趣味に沿ってこのプログラムをお届けしました。楽しんでいただけるとよかったのですが。



さて。今月の言葉は知る人ぞ知る、作家の村上春樹さんの言葉です。

「真の理解とは、多くの誤解の積み重ねのことだ」

僕は長い間、小説を書いて生活してきたわけですが、本を出すたびに、さまざまな意見や批評が寄せられました。好意的なものもあり、批判的なものもありますが、その中にはどうみても事実誤認、誤解としか思えないことも少なからずあって、そういうのってちょっと違うよなとか思いました。でも、こっちもまあ忙しいし、一つひとつ「それは違うよ」とか反論しているわけにもいきませんから、柳に風とサクサク受け流していたのですが、今になってみると「それでよかったんだな」と実感します。というのは誤解も間違いも偏見も、年月が経過するとみんな自然にばらけて、溶けて、まるごとひとつの気分みたいなものになってしまうからです。そしてそのひとつになった気分って、基本的にというか総体的にというか、不思議に「なるほどな」とか思わず腕組みしてしまうんです。

みなさんも他人から誤解され、場合によっては非難されて、腹が立ったり落ち込んだりした経験はおありじゃないかと思います。でもね、あまり気にしないほうがいいです。時間がたてば、すべては溶けて丸まって、落ち着くべきところに落ち着きます。もちろん中にははっきり反論すべき誤解もあるでしょうが、もしそれほど大したことじゃなければ、僕みたいに適当に受け流しているのがいちばんじゃないかな。あとは時間がうまく解決してくれます。時間は偉大です。頑張ってくださいね。

それではまた来月。

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3月30日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 4月7日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO〜二人の伝説のギタリスト チェット・アトキンスとデュアン・エディ〜
放送日時:3月30日(日)19:00〜19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
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