第三者委員会の調査結果公表を受け、記者会見するフジテレビの清水賢治社長=31日午後、東京都港区 第三者委員会の調査報告書からは、フジテレビには「ハラスメントに寛容な企業体質」があり、時代の動向への対応が遅れてきた実態が浮かび上がる。元タレント中居正広氏の性的トラブルでは女性に寄り添わず、二次加害を加えたと認定。「性別・年齢・容姿などに着目」してアナウンサーらが呼ばれる取引先との不適切な会合が開かれていた実態も明かされた。
第三者委の調査によると、中居氏は女性に「(フジの社員ら)メンバーも誘っている」「飲食店を探している」などと偽り、断りにくい状況に追い込んだ上で自宅での食事に同意させたという。
港浩一社長(当時)らは、その「同意」を根拠に「プライベートな問題」と捉え、出演番組の放送も続けた。幹部らは中居氏の依頼を受けて入院した女性に見舞金を届けようとしたり、弁護士を紹介したり、中居氏の側に立って行動。女性に孤立感を抱かせ、心理的に追い詰めたと指摘する。
報告書は、2021年に中居氏ともう1人のタレントが参加した会合がホテルの部屋で開かれ、女性アナウンサー2人以外の参加者が退出させられたりした類似の事案が他にも複数件あったと記載。「全社的にハラスメント被害がまん延していた」と厳しく指摘した。
フジテレビは、リアリティー番組の出演者がSNSで中傷にさらされ自殺した問題で、21年に放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会に放送倫理上の問題を指摘された過去がある。また、旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題では、テレビ業界全体が同事務所に忖度(そんたく)してきた姿勢が批判を浴びた。その経験や反省は生かされなかった。
第三者委は、性暴力の人権問題として、旧ジャニーズ事務所が非上場の同族会社であったのに対し、上場企業であるフジ・メディア・ホールディングスの中核企業であるフジの今回の問題は「影響力が大きい」と指摘。「時代の変化に即して経営をアップデートしてこなかった取締役会の経営責任は重い」と断じた。