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3月22日、自作キーボードの即売会「キーボードマーケット トーキョー」(略称:キーケット)が東京都立産業貿易センター台東館で開催された。2024年開催の前回に比べ、出展サークル数や協賛企業数、会場の大きさが約2倍に。現場は一時、通路を辛うじて行き来できるような混雑状況だったが、その分出展物も充実し、“キーボードオタク”ではない記者でも思わず目を奪われる製品が並んだ。
●前回から“いろいろ2倍” 2025年のキーケット
キーケットは2024年にスタート。自作キーボード愛好家有志で構成される「キーボードマーケット運営事務局」と、自作キーボード専門ショップ「遊舎工房」の共催で、PFU(HHKB)や東プレ(REALFORCE)、ダイヤテック(FILCO)といった高級キーボードメーカー、PC販売代理店のアスクなどが協賛した。
会場の広さは前回の約2倍。前回は1000枚の入場チケットを用意し完売したが、今回は2000枚を用意し、200枚の先行入場チケットも提供した。運営事務局によれば、実際の来場者数も前回の倍近かったという。混雑は午前10時の開場から少したった午前11時〜正午ごろがピークで、辛うじて通路を行き来できる混み具合だった。当日の気温もあって、比喩でなく会場の熱気が感じられ、上着を着たままだと暑いほどだった。
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●オタクじゃなくても面白かった 注目のブースたち
マニア向け製品ばかりが並ぶのではなく、いわゆる“キーボードオタク”ではない記者でも目を奪われるようなものも。コミックマーケット(コミケ)さながら、昼までにキーボードなどの目玉商品が売り切れてしまうサークルも散見された。
実は打ちやすい、おさかな型分割キーボード
例えば、魚の形をした分割キーボード「おさかなキーボード」がその最たる例だった。キーボード配列「大西配列」を考案した大西拓磨さんによる作品だ。
キーが32個しかないが、親指部分のキーをレイヤー機能に割り当てることで他のキーの役割を切り替えられる。「打ちやすさを探求したら、自然に魚の形になった」(大西さん)といい、独特の見た目に反して手にフィットし、思いのほか打ちやすい点も特徴だ。無線接続にも対応する。
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価格は約4万円。サークルスペースは混雑しており、キーボード本体は正午過ぎには完売したという。
HHKBを直交配列化できるキーキャップも
同じサークルでは、PFUのキーボード「HHKB Professional」「HHKB Studio」を「直交配列化」、つまりキーが真っすぐ格子状に並ぶようカスタムできるキーキャップも、一式1万8000円で提供していた。
製作者は小松亮介さん。3Dプリンタで自作したもので、質感なども可能な限りオリジナルに近づけていた。押下位置と軸の位置がずれる部位では、隣のキーと干渉しないようキーを削ったり、軸に差し込むツメ部分が半分割れても使い続けられるよう設計したりと、見た目だけでない工夫も凝らしたという。
まるでブロックトイ 自分で組み合わせるキーボード
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同じく現地で注目を浴びていたのは、ブロックトイのようにパーツを組み変え、自分好みのキーボードを作れるキット「くっつきー」だ。サークル「esplo.keys」の出展物で、最小で縦1列の4キー、最大で160キーを組み合わせ可能。トラックボールパーツやノブパーツ、傾きを調整する「チルトパーツ」も存在し、それぞれを好きな位置・向きで組み合わせ、自分好みのキーボードを作れる。分割式・一体型キーボードに加え、片手用キーボードやテンキーなど自由自在だ。
当日は66キーにトラックボールパーツやノブパーツを組み合わせたセット(3万円)や、片手用キーボード向けのセット(1万2000円)の提供に加え、パーツのばら売りをしていたが、3万円のセットは昼過ぎには売り切れていた。
思わず出た「マジで?」の声 こだわりがすごいキーキャップ
もう一つ、記者の目を引いたのが、食べ物などをモチーフにしたかわいらしいキーキャップを販売していたサークル「Foodie & Key」だ。鍋に入ったおでんや、チョコレートの入った缶詰、大盛ラーメンを象った精巧なキーキャップを提供していた。ものによっては台座をコンロに見立てたり、文字入れもしたりと、芸も細かい。チョコ缶やおでんのキャップはふたまで閉められるこだわりぶりだ。
実はこれらのキーキャップ、いずれも3Dプリンタで出力した原型を、食品サンプル製造に携わっていたサークル主がペイントした製品という。かわいらしさゆえか、若い女性も多数ブースを見に来ていた。
終売「Libertouch」後継機も
厳密には記者自身ではなく、一緒に行ったキーボードオタクの編集長が食いついていたものだが、富士通傘下のFCLコンポーネントによる展示も面白かった。すでに一度終売したものの、社内の有志メンバーが復活に向けて動いているというキーボード「Libertouch」後継機の開発検討品を展示しており、実際に触ることができた。
担当者の奥谷進ノ輔さん(複合カンパニー 営業統括ディビジョン マーケティングセクション BDスペシャリスト)は、Libertouchのファンだったために同社に入ったにもかかわらず、入社時点で終売してしまったという過去を聞かせてくれた。現在はキーケットなどでフィードバックを得つつ、後継機の製品化を目指しているという。
●初参加のおどろき「キーボード好き、こんなにいるんだ」
他にも、自動車部品メーカー東海理化が、スイッチ部品の製造ノウハウを生かして開発したというゲーミングキーボード「ZENAIM」(ゼンエイム)、トラックパッド付キーボード「Futaba」など、一般的な量販店などではなかなか目に掛かれないキーボードを提供するブースが多数あった。
正直、記者はこれまでキーボードはニッチな趣味と思っていた。しかし、協賛企業の力の入れようや現場の活気はもはや「よくある同人イベント」とはいえないほどで「キーボード好き、こんなにいるんだ、こんなに盛り上がるんだ」と認識を改める結果になった。
運営事務局代表のびあっこ(@Biacco42)さんによれば、キーケットは次回開催も予定しており、2026年3月28日に浜松町で実施予定。今回の盛り上がりについては「(前回に比べ)スケールアップしつつも、いいイベントにできた」と振り返った。
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